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47 北の国へ 9.5

苦労性のズィルバー。今日もミャアコのお世話(??)

 ・・・・・ズィルバー


 全く,宿屋が一杯だなんて。

 ついてない。どうしたもんかな・・・ロート?

「・・・でも・・・・とにかく夕飯だね。

 夕飯だけでも大丈夫ですか?」

「いいよ。私もどうにかしてやりたいけどねぇ。あいにく全部ふさがってるからねえ。」

 女将さんが申し訳なさそうに言っている。

 そうだな。飯だけでも食わなきゃな。


 うまそうな料理を前に俺たちは相談する。ミャアコやヴァイスはもう,うまそうにぱくぱく食ってるけどな。

「テントをどっかに張らせてもらうか?」

「いざとなったらそれしかないかな。

 あんまり雨の中,テントを張りたくないけどね。」

ロートがため息混じりに言ってるが,本当に雨の中のテント張りはきついからなぁ。


とりあえず食べようと言うことで食べ始めたんだが・・・おいおいミャアコ,ヴァイス・・それ何回目のおかわりだ?


 給仕のお姉さんとなにやら仲良く話しているな。俺たちも食うか。

うん。うまいな。

・・・


「4人とも,私の家にお泊まりなさいな。」

 突然そのお姉さんが俺たちの方を向いて行ってきたのには驚いた。

「え?いいんですか?」

 ロートも驚いている。

「こんなにかわいい小獣こども達が泊まるところがないなんて,かわいそうですよ。」

・・・かわいい? 

 俺は思わずつぶやいた。

ミャアコがなにやらぶつぶつ言ってるな。知らん。


 お姉さんが片付けをしたら連れて行ってくれるというので,しばらく待つことになった。


 そのうちにミャアコとヴァイスの奴寝てしまったぜ。

 しかし・・・こいつら,寝ているとかわいいよなぁ。

 じっと見ていて気が付いた。おや。ミャアコはこういうところだと,しっぽをしゃぶらなくても眠れるのか?こいつ。

 あれあれ・・・手が何か探してるみたいに動くぜ。ここでしっぽしゃぶりを始めたらちょっと・・・どうだろ。


 はらはら見ていたら,お姉さんが片付けを終えて戻ってきたぜ。女将さんも一緒だ。

「あらあら寝ちまったのかい。」

女将さんはにこにこしながら,言ってきた。

山嵐型獣人(このこ)があんた達を泊めてくれるって言ってくれたんで,あたしもほっとしたよ。こんなにかわいい小獣こども達を雨の中に追い出すのは忍びなかったからねえ。」

お姉さんは

「私のことはグーテと呼んでね。家にはちょっと病人がいるけど,うつる病気じゃないから大丈夫よ。」

何でもいいよ。泊めてもらえさえすれば・・・

ロートが二人を起こしている。

ん?ミャアコが何か言ってる。何だ?


「だれ?あたしの肩をたたくのは。いいとこにゃんだから。

・・・ズィルバーもロートもかっこいいんだからね。」


「ははは。かわいいじゃないか。あんた達のことが一番なんだねえ。」

女将さんが笑って厨房に帰っていく。


何言ってんだこいつ。恥ずかしくなっちまうだろ。

「かっこいいのは分かってるから起きろ。」


まだムニャムニャ言ってるぜ。


「起きて,ミャアコちゃん,ヴァイスちゃん。終わったから行くわよ。」

「ミャアコ,ヴァイス,起きなさい。もう行くよ。」


「・・・え? 山嵐型獣人(あくやくは?

 ここはどこ?」

また訳の分からんことを・・・

「何寝ぼけてんだ。そろそろグーテさんの家に行くぞ。」

「グーテサン?」


ようやく二人とも目がはっきり覚めたらしい。脳天気な奴らだぜ。




グーテさんの家に入ると,奥で誰かがかなり咳をしているのが聞こえる。本当にうつる病気じゃないよな?


 とにかく泊まる部屋へ案内してもらうことになった。歩き始めようとしたとき・・

 おや。誰か戸をたたいている。

グーテさんが戸を開けると,びしょ濡れの大きな荷物を持った・・ 山嵐型獣人(ひとだ。誰だ?


「にいさん,びしょ濡れじゃないの。・・・ずっと帰ってこないで。いったいどこに行ってたの?」

山嵐型獣人(にいさんだったのか。すげえびしょ濡れだ。


「早く濡れた物を脱いで,風邪引いちゃうわ。」

ミャアコが何かつぶやいてるぞ。

「乾いてる・・・」

「え・・・」

「もしかして。みなさんのどなたかですか?ありがとうございます。」


「ミャアコ!」

小声でつつく。まあ。いいことだがな。


「すみません。騒がしくして。すぐお部屋にご案内しますね。」

「ついでにこの荷物も乾かしてくれないかなあ?」

グーテさんの声と 山嵐型獣人(おにいさんの声がかぶっている。

ミャアコがロートを見たぞ。

「これが濡れたままだと,靴の材料が駄目になっちゃうんだ。」

「「「靴?」」」「クツ?・・・」

「あぁうちはね,本当は靴屋なんですよ。」

グーテさんが言ったぜ。へえ。渡りに船なんじゃねえか・・・

「本当はじゃなくて本当にだろ。」

「今までどっかに行っちゃってたくせに。」


・・・


ミャアコは急いで靴の材料だって言う荷物にも何か呪文を唱えていた。

気のせいかな。けわかって聞こえるんだが・・・乾燥の呪文ってこんなに簡単だったか?杖も使ってねえし・・

 前,誰かが唱えてるのを聞いたときは,もっと長々詠唱していたような気がするんだが。・・・まあ。ミャアコのすることだからな。

山嵐型獣人(おにいさんは荷物をなでてにこにこしてるし。いいか。


「いったいどこに行ってたの,お父さんが怪我してからずっと具合が悪くて大変だったんだからね。」

「なにぃ,親父が怪我だって?はは。殺しても死なねえようなやつが具合が悪いだって?ふん。」


その頃にはお父さんが騒ぎを聞きつけて出てきていたぜ。

ゲホゲホ・・。

「ゲホ・・こ・・この馬鹿息子が!!ゲホゲホ・・・」

「なにおぉ」


そのまま言い争いになりそうだったので,

「とにかく座ってお話を聞かせていただけませんか。

・・・実は,我々は,このまちで靴を新調する予定でしたので。」

ロートがソフトに言っているぜ。この辺り上手だよな。俺も見習わなきゃなんねえとこだぜ。



「靴を新調!!」

山嵐型獣人(おにいさんの目が輝いてるぜ。


話を聞くと, 山嵐型獣人(おにいさんは,5年前に修行するって家を出て行ったそうだ。それっきり連絡もないし,お父さんが去年病気で倒れてから,ずっとグーテお姉さんが宿屋の手伝いをして暮らしていた?!って・・・どういう息子だ。

山嵐型獣人(おにいさん,音信不通はよくにゃいにゃ。」

・・・ミャアコがどや顔して言ってる・・・全くこいつは。


ヒューゲさんというその 山嵐型獣人(おにいさんは,蜥蜴型獣人(とかげ)のまちにある靴屋で修行していたそうだ。

ふうん。ようやく一人前だって言われたので,餞別にもらった靴の材料の皮を持って帰ってきたのか。


「この店は俺に任せて親父は湯治にでも行ってきな。」

何でも最後に作った靴のできがたいそう良かったそうで,お金持ちの獣人が高いお金を出してくれたといってるぜ・・へぇ。お抱えの靴屋にとまで言ってくれたそうだけど。お店が心配だからって帰ってきたんだそうだが・・・


「お抱えってにゃんだ?」

「専属だよ。」

「え?専属?もっと分からにゃい。え?」

「後で説明するよ。」

ミャアコが五月蠅い。


「これだけあれば,グーテと一緒でも,温泉に1ヶ月はいられるだろ。」

「でも兄さん。」

「俺はこれからこの獣人(ひと)達の靴を作るから一緒に行けねえな。おまえがついて行ってやれよ。」

「ゲホゲホ・・・ヒューゲ・・ゲホゲホ・・・」


何かミャアコがロートに言ってるぞ。おや。お父さんの背中をなでていいか聞いたのか・・・なでているな・・・・あれ?


いつの間にかお父さんの咳が止まっているぜ。ミャアコか。こいつとんでもないことばかりするよな。治癒魔法も使えるのかよ。



ふうん。この 山嵐型獣人(おにいさんいいとこあるじゃねえか。苦労掛けた妹も一緒に親子で湯治か。いいねぇ。

え?ここからだと蛇型獣人のまちが近いだろ。

・・そこにするって?

あのまちはいいとこだぜ。飯もうまいし。



一晩眠って起きたら快晴だった。やっぱり晴れてるのは気分がいいぜ。

 朝からヒューゲさんは張り切って俺たちみんなの達の足形を取った。

 グーテさんは宿屋に仕事に行くというので,ロートも一緒に行って,今夜から泊まれるか確認してくることになった。いつまでもここにいちゃ迷惑だろうからな。


 さて俺たちは・・ガッチャ~ン・・・

・・・うわっ


「店の掃除とかあたしとヴァイスが手伝う~」

 そう言ってミャアコ達が掃除を始めたのはいいが・・・やべぇ

・・・すげぇ高額そうな花瓶を割っちまった。

ヒューゲさんが顔を引きつらせているぜ。そうだろうなあ。


「もういいから遊んでおいで」

「え~まだ終わってにゃいよ~」

「マダテツダウ~」

「いやいや,もう沢山手伝ってもらったからね。」


ヒューゲさんすまん。


・・・・・


「何していればいいのかにゃあ。」

うろうろし始めやがるから,

「おまえ達は何もするな!じっとしてろ!!」

俺は花瓶を片付けながら思わず怒鳴った。

「にゃぜ~?」

「ナゼ~」

頭痛がしてくるぜ。


 片付け終わった頃,ミャアコが

「今日はあたしの誕生日だって。」

とにこにこしながら言い出した。

「タンジョウビッテ?」

「生まれた日だよ~」

「ボクハ?」

「温泉に卵つけた日が誕生日だよ~」


のほほんとしている。そうか誕生日か。

どうやって知ったんだ?え?いつも聞こえる声が教えてくれたって?へぇ

・・・・面白い話だな。誕生日ねぇ・・・何かしてやらないとな。


・・・そういや花瓶。ミャアコに直させれば良かった。絶対元に戻ったろう・・・ちっ




ミャアコ。9歳。とうとう10歳ににゃりました。

プレゼントはねぇあの虹色の玉がまた欲しいにゃあ・・・ズィルバーくれにゃいかにゃあ・・・

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