43 北の国へ 7
北の国へ 7
目が覚めたら,ロートだけがいた。雨はますます強く降っている。
「あれぇ?ズィルバーとヴァイスは?」
いいにゃがら目をこする。しっぽのよだれをきれいにするのも忘れずに。「れなにいれき」
「先に次のまちに飛んで行かせたよ。」
「あたしたちはどうするの?」
「ヴァイスが戻ってきて,順番に運んでくれることになってるよ。」
ふうん。あたしはリュックからビーネを2つ出して,1つをロートに渡した。
かじると甘い汁が垂れる。甘い匂いも辺りに満ちる・・・しばらく車の中はしゃくしゃくという食べる音だけににゃる。外の雨の音と一緒ににゃるとちょっと五月蠅いかにゃ。
「しっ」
「え?」
「きたっ」
ヴァイスが戻ってきた?
違った。
ジャカル・・・これが?いきなり現れたジャカルの群れは,10匹はいただろうにゃ。
一斉に車に襲いかかってきたよ。でも,この車は堅いよ。爪を立ててはぎゃっと言う声を出して滑り落ちるよ。
ドスンドスンと体当たりするやつもいるよ。
凄い顔だよ。うわっよだれ。窓がべちゃべちゃだぁ・・・
ぐえっ・・牙凄い・・・ひいっ怖い・・・
・・・口の中真っ赤だよぉ・・・・うわっ・・
あきらめてさっさとどっかに行けばいいのに・・・そう思ったとたん・・不意にジャカルがみんにゃ消えたよ。・・・あ。またやっちゃった。・・
どこに行ったんだろう。武器みたいに突然出てきたら困るから,あたしはジャカルの行方を考えにゃいことにしたよ。
「ミャアコちゃんの魔法を信じて,今回,結界を張ってなかったんだけど。すごいな。」
いやいやいやいや・・・張っといてください。怖いから。
そうこうしているうちに,ヴァイスが戻ってきたよ。小獣姿ににゃって車に入ってくると,お腹空いたぁ・・・と倒れ込むから,またリュックからビーネとアプを出して渡したよ。そしたら,たちまち食べて,もっともっとっていうんだ。結局残ってたビーネとアプを全部食べちゃった。あ~あ。
それから,ロートと二人でヴァイスに乗ることににゃったんだけど・・・
「まず,この車を消して。」
え~消しちゃうのぉ・・・
「通行の邪魔になる」
はい。ごもっとも・・・
車は消えた。あたしのピンクのトイレも一緒に。ご主人様・・・久しぶりに思い出しちゃった。どうしているかにゃあ。少しは心配してくれたかにゃあ・・・
ヴァイスに乗るときが大変だった。
ロートは今まで乗ったことがにゃかったうえに,雨でヴァイスがつるつる滑るもんだから。 乗ろうとしてはつるりと滑り・・・つるつるつるつる・・・ にゃんか楽しそう・・・
思わず参加しちゃう。
ヴァイスも楽しそうだし・・・
「こらっ 私は遊んでいるんじゃないぞ。」
ぐふっ。いつも結構冷静なロートが焦ってるよ。
「ミャアコチャン ナントカナラナイノ ユウハンタベタイヨ」
辺りはもう薄暗くなり始めているよ。
たしかにこれじゃいつになっても夕飯にありつけにゃいにゃ。
・・・縛っておいたらどうかにゃあ・・・
「うわっミャアコちゃん!!!何してくれるの!!!」
あ・・・しっかりロートは荷物ごとうつぶせにヴァイスに縛り付けられていた。
「マア イイジャナイ サッサト イッテ ユウハンダヨ」
あたしは縛り付けられているロートの後ろに飛び乗った。
「いいよ。しゅぱ~つ」
「私は良くない!!!」
ロートのうめき声は無視だよ。
山を下り,まちの手前の大きな木の下で,雨宿りしていたズィルバーと合流したよ。
ズィルバーは,ロートの姿を見て馬鹿笑いしていたよ。ロートの恨めしそうな顔。ロートってあんな顔も出来るんだね。いつも落ち着いてるとこしか見たことにゃいから,新鮮だよ。そう言ったら,複雑そうな顔をしていたね。ほめたのににゃ。あたしは慌ててるロートも大好きだよ。そう付け足したらますます変にゃ顔ににゃったよ。
ロートをヴァイスから下ろして,ヴァイスが小獣姿ににゃるころには,もう真っ暗だったよ。急いで門にみんにゃで走る。門はまさしく鍵を掛けようとしているところだったよ。危にゃかった。もう少しで雨の中で夜を過ごすところだったよ。もうジャカルも,へロストフントもたくさんだよ。
今度はどんな獣人のまちにかにゃあ?
ゴハンゴハン・・・