42 北の国へ 6
次の日,思いがけなく余計に過ごしてしまったここの温泉とさよならしたよ。
朝から温泉でしっかり温まったあたしとヴァイスは元気いっぱい。ロートとズィルバー・・・は,少し疲れてるみたいだにゃあ。にゃぜかにゃあ?
お天気はいいし,紅葉はきれいだし,時々ヴァイスが山の中に入っていってマロの実や,きのこやビーネ,アプなどもとってくるよ。う~ん。ビーネ美味しい。
疲れていたようだったロートもズィルバーも,ビーネのうまさに少し元気が出たようだった。ヴァイス,ナイスだよね。
すぐに食べられないマロの実や,キノコはそのままあたしのリュックの中に。
いつも思うんだけど,このリュック,いくら入れてもあんまり重く感じにゃいんだよねえ。もう入らにゃいと思っていても入るしねぇ。不思議だねぇ。
ビーネの後に,アプの実をかじっていたら,
「昼飯が食えなくなるぞ」
ってズィルバーが言うんだ。そうだった。お昼は宿屋のお弁当だった。あたしとヴァイスはいったん食べるのをやめた。
結構歩いた頃,雨がぽつぽつ降り出した。
「まずいな。」
ロートがつぶやく。
「まさか・・・またヘレロスフントの群れが?」
あたしの声はちょっとおびえて聞こえたみたい。
「いや。あれは平原で出る群れだ。」
よかった。追いかけられるのはやだもん。
「山で雨の時出るのは,」
えっ山でも出るモノが?
「ジャカル。」
ジャカル?
「ヘレロスフントのようなもんだ。こいつらも群れて襲ってくるからな。」
「えぇ~早く山を下りようよ。」
「トンデ イコウヨ」
雨はますます激しくにゃるし・・・
「飛ぶとしても,一度に全員は無理だろう。」
えぇ
「ミャアコお得意の何か出せ。」
お得意の何かってにゃんだあ!!!あたしは軽くパニックになっていたに違いないよ。
『どん』
え?
これは・・・ご主人様達が乗っていたワゴン車ってやつ。
「な・・・なんだ?これ?」
「イエ?」
おそるおそる近づく。ちゃんと覚えている通りの車だよ。
タイヤもあるし,ドアもある。おそるおそるいつも乗ってた後ろのドアを・・・開いた。ソファーも覚えてるとおりだよ。でも・・・前の方はソファーがあるだけだ。ご主人様達は前には行かせてくれにゃかったもん。わかんにゃいんだ。
でも,偶に見えてたハンドルってのはくっついていたよ。でも,回しても動かにゃかった。蛇口と同じで,仕組みが分かってにゃいとやっぱり駄目にゃんだね。
とにかく,雨宿りできそうにゃので,みんにゃで入ったよ。
みんにゃ一斉にしっぽをふるうからお互いさらにびしょ濡れだよ。
え~い・・・杖を出して「けわか」
みんにゃさっぱり乾いちゃった。便利ぃ。
車の後ろにちゃんとあたしのピンクの猫用トイレも置いてあったよ。今のあたしのサイズに合わせて大きくにゃってるみたいだよ。トイレの砂も覚えているとおりだし。周りにある猫用のおもちゃも覚えているとおりだね。
「ミャアコちゃん,これは何?」
「んっとねえ。車だよ。」
「・・・プフェー車みてえに車が付いてたな。動くのか?これ。」
・・・う~ん
「これはね,ご主人様達が乗っていたのと同じ車だけど・・・あたし,動かし方しらにゃいし,仕組みも知らにゃいから,動かにゃいんじゃにゃいかにゃあ。」
「使えねえ・・」
とりあえず,雨宿りしながらこれからどうするか考えることにしたよ。
「とにかく,お昼にしようか。」
やったぁご飯だご飯だ。
ご飯を食べた後,あたしはいつのまにか眠っちゃったから,これからどうするって話は聞いてにゃい。
あたしの魔法は便利にゃようで便利じゃない。
分からにゃい物は見たことがあって作れても動かせにゃい。
だってもとは猫だもん。人間だったらもっと分かるのかにゃあ。
もしかしたらあたしの魔法は,魔法のようでいて魔法じゃにゃいのかも・・・ちょっと不安な今日この頃・・・