31 温泉が出た 7
美味しい夕食の時,これからのことを聞かされた。
明日には風呂も出来るので,できあがったら,ズィルバーだけヴァイスに乗って魚型獣人のまちにいったん帰る。それから,議長さんや議員さんなどを連れて,明後日戻ってくると言う。え?あたしとロートは留守番にゃの?
誰かがいて,温泉管理をした方がいいんだって。
でも,この前のえっと・・縞々温泉だよ。ミャアコちゃん・・・ありがとう・・では,温泉にずっとついていにゃかったよね?!
え?海だから,波とか,他にもにゃにがあるか分かんにゃいから?にゃるほど。
ほっと・すぷりんぐ・にゃあにゃあにとって,海の中の温泉は初めてらしい。
海は穏やかで,波の音も・・・あれ。昨日までと違う音だよ。昨日は時々あたし達のいる岩のザバ~ンって当たっていたけど,その音がもっと賑やかににゃったよ。
ロートに聞いたら,岩場がのびたせいだって。
「岩に当たる波が増えたってことだね。」
にゃるほど。
たくさんの波の音を子守歌にあたしは眠った。もちろんしっぼをしゃぶりにゃがら。
翌朝,3人で岩場の外れまで行く。昨日作ったという湯船が2つ出来ていた。これから,海の中からお湯を引っ張ってくる場を作るらしい。
「繊細な作業だからね。」
ここは,あたしのでたらめ呪文は出番がなさそうだ。
ロートは,ズィルバーに,湯船の仕上げをするように言った。あたし?あたしはズィルバーの助手だって。
二人でギャーギャー言いながら湯船を完成させようと仕事を始める。
ロートは海を見つめて,何事かつぶやいている。
ヴァイスは,なぜか岩場に上がってきたカニを追いかけているよ。カニにゃんてどっからきたのかにゃ。
ああでもにゃいこうでもにゃいとズィルバーと二人で温泉の中を考える。ご主人様のお家みたいに,シャワーとか蛇口とかあったらいいのににゃ。椅子も欲しいよね。・・・いや。また考えたら出来ちゃったなんてことはよくにゃいにゃ。
「こら,ミャアコ! 何を考えていたんだ!」
げっ・・岩の椅子がいくつもにょきにょき生えてきたよ。おまけに洗面台まで・・・。
椅子の一つにズィルバーが座った。
「おっこれ座りやすい。この椅子何に使うつもりなんだよ?」
「ここに座って体を洗うんだよ。」
「なるほど。この台は?」
「石けんとか,シャンプーとかを置くんだよ。」
「石けんは分かるけどよ・・・シャンプーって何だよ。」
「髪の毛を洗うんだよ。」
「どんなもんだ?」
「んっとねえ・・・」
あたしは一生懸命思い出して説明したよ。
「・・・なるほどな。」
「ただね。蛇口がね・・・」
「蛇口?」
「ひねったり押したり上げたりすると水とかお湯が出てくるの。」
「これか?」
「うん」
岩で出来ている蛇口は,押しても引いてもひねっても動かにゃいし,何も出てこにゃい。中身がどうにゃってるか知らにゃいもんねぇ。 あたしの「物を作る魔法」は知ってる物しかできにゃいみたい。便利じゃにゃいにゃぁ。知らにゃくても出来ちゃえばいいのににゃぁ。
そこで,ズィルバーが考えてくれたのは,この洗面台の上に溝を作ってお湯を流せばいいじゃないかってこと。おっナイスズィルバー。
早速ズィルバーが小さい魔法を発動させて溝を掘る。
「ちょっとこっちとそっち幅が違うよ。」
「うるせえ」
ズィルバーは,細かいことは苦手らしい。
でも,ズィルバーはちゃんと高低も付けて,洗面台の上にお湯を流すことが出来る溝を作ったよ。
じっと見ていて口を出していたら,最後は怒り出したので,もう一つに湯船の方に行って,椅子と洗面台を作ったよ。ちゃんと溝を作ることが出来るように,洗面台は繋がっているし,椅子はゆったり座れるように一つ一つ離れている。
向こうのに溝を作り終えたズィルバーがやってきて,こっちにも溝を作ってくれた。
「おまえが作るとき,溝も一緒に作れば簡単なんじゃねえ?」
言われてごもっとも・・気が付かにゃかった。
こちらの作業があらかた終わった頃,ロートが戻ってきた。
「わぁ。すごいね。二人とも。これは何?へぇ椅子?
へぇこの溝にお湯を流すのか。ふんふん・・へぇ。」
ロートがたくさん褒めてくれたよ。
お湯を引き込むことには成功したとかで,後でズィルバーにもう一つ熱いお湯を溜めておくところを作って欲しいと言う。お湯を冷まさにゃいといけにゃいらしい。
そうだよねぇ。ここのお湯すっごくあついよ。
熱いお湯・・・あっ
「温泉卵」
「温泉卵?」
「この前食い損ねたやつか?」
「うん」
あたしは盛大に頷く。
「ここのお湯熱いから,温泉卵には最適だよ。」
「おおっ」
ズィルバーの喜び方と来たら・・・
お昼の後,ズィルバーは速攻もう一つのお湯を溜めておくところを掘った。速っ
そして,たまごたまご・・・・とつぶやきにゃがら,ヴァイスに乗ってさっさと魚型獣人のまちに飛び立っていった。
お昼にはカニが入っていた・・・はず。