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現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人
第三章 覚悟ある冒険者

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 初恋のあとさき


「嫌ですか?」


 涙目でそう訴えてくる小鳥遊に、これが演技なら大したものだと少し感心した。


 そこで雨木は、小鳥遊には自分がダンジョンへ潜る理由を話していなかったことに思い至る。


「別に、小鳥遊さんが嫌って意味じゃないです。

年齢差は確かに気になりますけど……


何というか、冒険者をやってるうちは、特定の恋人は作らないでおこうと思ってるんですよ」


 そして雨木は、自分の考えを包み隠さず話した。


 ダンジョンへ潜る目的は、金を稼ぐこと。

 ある程度稼いだら、勝ち逃げするつもりでいること。


 そのために、今は十階層の単独攻略を目標にしていること。

 それも名声のためではなく、成果を独り占めできるからだということ。


 冒険者として栄達したい訳でも、有名になりたい訳でもないこと。


「そんな訳ですんで……


担当者としての出世とか、手柄とかに利用したいなら、他を当たってください」


 とはいえ、もともと雨木は警戒心が強い。


 十歳も年下の見た目の良い女性に告白されたからといって、舞い上がるような性格でもない。


 むしろ話しているうちに、自分でも気づかないまま、


(……お前に利用されるのは御免だ)


 そんな本音が滲むような言い方になっていた。


「何でそんなこと言うんですか?

別に担当になりたくて告白した訳じゃないです」


 小鳥遊が眉を寄せ、少し身を乗り出す。

その目には、はっきりとした不満が浮かんでいた。


「では、担当は変わらなくても良いと?

勿論、俺にそれを交代させる、なんて権限はないんですが」


 雨木は苦笑しながら肩をすくめる。


 出来る出来ないで言えば、雨木には十分可能な頼みごとだ。

おそらく美濃原に一言頼めば、やってくれるだろう。


 だが、そんなことを頼もうとも思わないし、変わる意味も感じなかった。


「担当は熊澤さんでいいです。

勿論、良くはないんですけど。……ないんですけど。


それよりは、ちゃんと雨木先輩とお付き合いしたいです」


 言い切った小鳥遊は、雨木の目を真っすぐ見つめていた。


「……それが俺には突然過ぎて、理解できなくて、

……疑ってる訳なんですが」


 雨木は頭を掻きながら、小さく息を吐く。


「もう少し、出来たら本音で喋ってくれませんか?


俺も、一応……今後のプランとか、考えてることを……笑われる覚悟で伝えたんで」


「……笑われるんですか?」


 きょとんとした顔で、小鳥遊が首を傾げる。


「……ですね。明確に笑われたことはないんですけど。


単独突破なんて無理だ。橘維心でも目指してるのかって、言われるんで。


それが、橘維心には出来るけど、お前には無理だ。

って言われてるように聞こえて、微妙に腹が立つ……感じですね」


 そこで雨木は、自嘲するように笑った。


「なんで多少ムキになってる部分はあるんですが……


そんなことをやっている。

……やろうとしている自分を、少し醒めた目で見ている自分もいて。


そんな無茶をしているのに、恋人を作るのはなんか申し訳ないじゃないですか」


「……申し訳ないから、なんですか?」


 小鳥遊は首を傾げたまま、雨木の続きを待った。


 雨木は頬を掻き、視線を少しだけ逸らす。


「金の為とは言え、我ながら馬鹿なことをしてるとは思ってるんですよ。


百パー集中しないと死ぬんです。

確率とか、そういう問題じゃない。


全力でやって、何の見落としもなくやり切って。

それでやっと達成できる。

……成果を独占出来る、そんな割に合わない話なんですよ」


 一度言葉を切り、小さく息を吐く。


「なのに、何よりも。

そんなことを……やりたがってる自分が、確かにここにいて」


 自嘲するように笑ってから、ゆっくりと視線を戻した。


「だから今は、それに集中したいんです。


軽い付き合いくらいなら出来るし、そりゃあ俺もしたいですけど……


……って、何言ってるんだか、俺は」


 苦笑しながら頭を掻く。


「上手く言えなかったんですけど……

最後のは、忘れてください」


 小鳥遊は雨木をじっと見つめたまま、小さく首を振る。


「私は、雨木先輩なら……出来ると思います。


だから、諦めません。

恋人になることも、担当になることも」


そう言ってグラスを口元へ運び、一口だけ喉を潤す。

テーブルへ戻すと、悪戯っぽく口角を上げた。


「今のお話を聞いたら、なおさらですよ。

雨木先輩が本音で話せって言うから、言いますけどもう他の冒険者の相手したくないですもん。

どうでも良い連中、相手にしたくないです。

私が担当になって、先輩のサポートをしたいです。


だって先輩……

何もしなかったら、いなくなっちゃうってことでしょ?」


 真っすぐ向けられたその言葉を、雨木は少しだけ嬉しく思った。


 自分ではやれると思っている。

だが、同じように言ってくれた人間は、美濃原以来二人目だ。


 そして、少しだけ気恥ずかしくもあった。


「別にまだ……もうしばらくは先の話ですよ。


回復手段とか、色々揃えなきゃいけないものもあるし」


 照れ隠しのように頬を掻きながら答えると、小鳥遊は「だったら」と言いたげに身を乗り出した。


「そーゆうのも、相談してくださいよ。


なので、当面は都合の良い女でいいです。


役に立ってみせますから。


そうしたら、まずは彼女に。

その次に、担当に。


いっぱい稼いだら、冒険者なんて辞めて。

その時は、役に立つヒナをお嫁さんにして、二人で別の仕事をするんです。


……っていうのはどうですか?」


 冗談めかして笑ってはいるが、その瞳だけは真剣だった。


「なるほど……」


 雨木は苦笑しながら息を漏らす。


「そういう本音を聞ければ、……都合の良いうんぬんは置いとくとしても。

……協力くらいなら、ありかもね」


 その言葉に、小鳥遊の表情がぱっと明るくなる。


「もう~。そこは打算じゃないって信じてくださいよ。

最後の試合があぁだったから、再会したときはちょっとだけ怖かったですけど」


 小鳥遊は照れくさそうに笑いながら、グラスを指先でくるりと回した。

そのまま視線を酒へ落とし、小さく息を吐く。


「ヒナの初恋は、小学生の頃。

相手は年上の空手家――黒騎士雨木楓真だったんですから」


 一度だけ言葉を切る。


 少し赤くなった頬を隠すようにグラスへ口を付け、一口だけ飲んだ。

それから照れ笑いを浮かべたまま、雨木を見上げる。


「……それを思い出したら、頑張りたくなるくらい、いいじゃないですか」


 雨木は返す言葉を失った。


 今まで何度も疑ってきた。

打算があって、担当になりたいだけじゃないかと。


 だが、その言葉だけは。


 嘘ではないように思えた。


※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助的に利用しています。


集英社のコンテストに参加している関係もあり、締切前に前倒しで更新しました。

変則的な投稿となりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。


また、活動報告でもお知らせしましたが、引っ越しの予定が入ってきたため、落ち着くまで更新をお休みする予定です。


執筆自体は続けていきますので、私生活がひと段落したタイミングで更新を再開させていただきます。


再開後は、再び週末更新を目標に進めていく予定です。

更新が難しい週もあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。


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