5 真実
僕は滑舌が悪く、聞き返されることが多い。あと基本的にコミュ障のため、話している途中に口ごもってしまうことが多々ある。しかし、彼女の質問に答えるときは、僕はそれなりにちゃんと教えることができた。彼女は「ありがとう」と言ってくれた。僕は、少しだけ幸せな気持ちになった。
4時間目、物理。5時間目、体育、6時間目、世界史。僕は運動と英語以外の文系科目が大の苦手のため、はっきりいって午後は割と苦行だ。世界史の授業中横に目を向けてみると、その彼女は寝ていた。授業終わった後話しかけてみると、彼女も理系に行くつもりで、世界史の授業は退屈だと思っているようだった。
帰りのホームルームが終わると、僕は上履きからローファーに履き替え、山村と一緒に下校した。「寒いな」とか言う話の後、僕はテレビアニメとして一部の人が知っているラストラベンダーのことについて、彼に少し話した。
原作は漫画らしい。アニメは原作ほど好評ではないらしい。そんなことを僕は山村に伝えた。「1話だけ見てみ」といって、僕はYouTubeに無料公開されている第1話のリンクを彼のラインに送った。
そのアイドルの名前を確認できるのはエンディングだ。公開されている動画では、OP・EDはカットされている。だから、よほどのことがなければ気づかれないだろう。そう思って、僕は山村と別れて家へと帰っていった。
4月の空は青く、どこまでも澄みわたっている。僕は家に帰り、LINEであの女子に「ラストラベンダーの1件」について聞いてみた。すると、すぐに既読が付き、彼女から小刻みにメッセージが帰ってきた。
「正直、バレることは想定外だった。あまり有名なグループじゃないし、まだ誰も知らないと思う。誰にも言わないでね」
「実は、私、中学時代は四国のローカルアイドルのメンバーだったんだよ、それが、知ってると思うけど『ラストラベンダー』のエンディングを務めたあのユニットなんだよね」
「なんで今横浜の学校に通ってるかっていうと、私の親って転勤族なのね、だから親の仕事の関係でここ来てるの」
僕は、思い違いじゃなかったことを知ってかなり驚いた。クラスに元アイドルがいるってあまり聞く話ではない。彼女のことがさらに気になった。僕は、そのアイドルグループが「ラストラベンダー」のエンディングを務めることになった理由について彼女に聞いてみた。