4 授業
1時間目は現代社会の授業だ。先生の授業自体はわかりやすいのだが、そもそも内容が難しいためなかなか頭に入ってこなかった。2時間目は古典。「古典なんて将来使わない」という愚痴をこぼす人が多いが、僕に言わせれば「将来使わない」のではなく「今も使わない」科目だ。理系に進む身としては、どっちも寝ていたかったが、最初から先生の印象が悪くなるのは困るので起き続けた。
というよりも、僕は3時間目を非常に楽しみにしていた。数Iの授業なのだが、大阪先生はいわゆる「アクティブラーニング方式」という授業形式を採用している先生なのだ。
自分でいうが、僕は数学・英語だけは得意だ。文理が分かれるのは来年からだが、理系に行くことは昔から決めていた。僕は、この授業中に、元アイドルのあの女子と話せることを割と楽しみにしていた。
割と気さくな人柄で話しかけやすいが、見たところ彼氏はいないようだった。少なくとも、噂にはなっていない。元アイドルらしいということも、周りには全く知られていないようだった。
今は数学の授業では「絶対値の外し方」の話を行っている。中身が正ならばそのまま、負ならばマイナスをつけて外す。僕から見ればそこまで難しくはないのだが、割と混乱している人は多いようだった。
先生が教室に入ってきて、号令を行う。30代前半の割と若い先生だが、「もともとは数学の研究をしていたかったが、食べていけないので教師になった」という噂がある先生だ。中学校の頃の先生は、そもそも僕の質問の意図すら理解してくれなかったということがあった。しかし、大阪先生は、的確に質問の趣旨を把握してくれて答えてくれる素晴らしい先生だ。学校が始まってまだ4日目なのに、今までした質問とそれに対する返答で、僕は
そのことに気が付いていた。
アクティブラーニング中、僕は山村とその友達の質問に答えながら、あの女子と話せるタイミングを見計らっていた。
偶然その子の近くを通りかかったとき、彼女は僕に絶対値の外し方の質問をしてくれた。




