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エリラとお掃除

 時系列としては、ガラムから鍛冶屋をもらった直後です。


 中古物件&放置物件でしたので同然汚いです。

 皆はガラムが作ってくれた鍛冶場を覚えているだろうか? レンガ造りの二階建てで、一階に店と鍛冶場が存在している。その鍛冶場の2階だが、前の人も使っていなかったのか埃まみれになっていた。俺も使う予定は今の所ないのだが、このまま放置しているのも嫌なので、お掃除をすることとなった。


「……汚いわね」


 鍛冶場の2階に足を踏み入れたエリラはそう嘆いた。


「まあ、前の住民も使っていなかったらしいからな」


「で、私は何をすればいいの?」


「んー、取りあえず部屋に残っている家具の運び出しと床の清掃かな。埃とかが無くなれば最後は俺が魔法で仕上げることが出来るから、そこまで手伝ってもらいという訳だ」


「魔法で……どうやって?」


「簡単だよ。水を一定方向に向けて流して、ごみを一か所に集める。途中汚れが酷い所は水圧を上げて汚れを取り除いて行けば大丈夫なはずだ。あとは一か所に集めたごみを捨てて終了さ。あと、床は木製だから染み込まないように気を付けることぐらいかな」


「か、簡単に言うわね……」


「簡単じゃね?」


「簡単じゃないわよ! そもそも平面な床に対して水を一か所に集めるように制御すること自体が大変なのに、そこに水圧調整と床に染み込ませないようにとか……そんな途方もない魔法制御出来る訳ないじゃない!」


「簡単じゃん」


「……ああ……うん、そうね……簡単ね……」


 そのうちエリラは考えるのをやめる事にした。自分の現ご主人であるクロウと言う人物は、もはや常識どころか自然の法則すらも平然と無視してしまう人物であることはバルケノ火山で嫌と言うほど見て来たからだ。


「それじゃあ、早速始めるとしますか」




==========

「ほら次だ、行くぞ」


「ちょ、ちょっと待って……少し休憩しない?」


 肩で大きく息をしながらエリラはクロウに待ったをかける。作業開始から三十分後の事だ。既に汗だくになっているエリラと、呼吸すら乱れていないクロウを見ればどちらが疲れているかは一目瞭然だった。


「休憩って……まだタンス6台運び出しただけじゃないか?」


「その6台とも中身満載だったじゃない……いくら私……いや、普通の冒険者でも身が持たないわよ! ……ねぇ、提案なんだけどさ」


「何?」


「《倉庫《ストレージ》》に入れて降ろさない?」


「……別に構わねぇけど、この中身満載のタンスの中身を出すのにどれくらい時間がかかるんだ?」


 タンスの中には前の前の人の物なのか古着やガラクタが満載になっている。お金と違いタンスはタンスで1種類となり、中身は別にカウントされてしまう。エリラの《倉庫》のレベルは現在「3」つまり、種類にして4種類までしか《倉庫》に入れる事が出来ないことになる。確かに楽かもしれないが、代わりに途方もない時間がかかることになるだろう。


「そ、それじゃせめて中身を出して順番に運ばない?」


「うーん……じゃあ、いいよ。後は俺がどうにかするから」


 そういうとクロウは持ち方を変えた。タンスを斜めにすると、唯一そのタンスが地面と接している角周辺を支えるようにしてひょいと持ち上げてしまった。


「……へっ?」


 唖然とするエリラ。自分があんなに頑張って持ち運んでいたタンスを、クロウはたった一人で軽々と持ち上げてしまったのだ。


「あー、やっぱり前が見えないな……」


そういうと、クロウは持ち上げていたタンスを再びゆっくりと地面に降ろす。


「ちょっと、どういう事!?」


 エリラはクロウが持ち上げていたタンスに近づくと、クロウと同じようにして持ち上げようとする。しかし、タンスはピクリともしない。もともと疲れていたのも重なり数秒でエリラはギブアップして、地面へとへたり込んでしまった。


「はぁ……はぁ……な、なんで……?」


「うーん、いいトレーニングになると思ったんだけどな。やっぱりエリラのステータスじゃ厳しかったかな?」


「ち、ちょっと……クロのステータスの筋力いくら?」


「秘密」


「教えてもいいじゃない!」


「別に構わないけど、たぶんエリラぶっ倒れると思うよ?」


 クロウのステータスは殆どの値が十万を超えている。それに対してエリラのステータスは全体的に見てもまだ千程度しかない。これでも十分高いのだが、それでもクロウからしてみれば自身の1割もないことになる。


「……やっぱり今の無しで」


 それを察したのかエリラも深追いをすることは無かった。


「じゃあ残りは全部《倉庫》で運ぶか」


 そういうと、クロウはタンスを次々と《倉庫》に片付けてしまう。


「……はぁ?」


「やっぱり、最初からこうすれば良かったかな?」


「……」


 ついに彼女の理解を超えてしまったのか、エリラはバタンと音と共にその場に倒れ込んでしまった。彼女が次に目が覚めたのは宿屋のベッドの上で時刻は夕暮れ時となっていた。                 

どうやら丸一日気絶していたようだ。


「……クロって一体……」


 エリラがクロウの事を理解出来るようになるのは、まだまだ先のようだ。


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