セラと前世の文化
幼年時代(修行時代)の話です。
とある晩のことだ。俺はいつものように親が爆睡している間にこっそりと家を抜け出し見渡しの良い場所へと来ていた。
「お待ちしていましたよ」
そこには最近、ほぼ毎日顔を合わせるようになっていたセラがいた。一見、これだけ聞くと駆け落ちや禁断の恋愛を匂わせてしまいそうになるが断じて違うことだけは最初に言っておこう。
「そう言えば、今日は聞きたいことがあるのでした」
「文化のことですね」
俺は事故で死んだ直後にこの世界で転生をした。その転生をさせたのが他でもない彼女なのだが、彼女は俺の世界の事を全く知らないとのこと。
「と言ってもどこから話せばいいのやら……まず、俺が生きていた時代は平和でしたね。と言っても数十年前までは戦争をしていたようですけどね」
「そうなのですね。やはりどこの世界にも戦争はあるのですかね……」
「まあ、無い方を探す方が大変では?」
「そうですね。ところで、あなたが以前お話していた「げぇむ」や「まんが」と言うのはどいうものなのですか?
「一種の娯楽文化ですね。俺の時代の遊びと考えて下さい。小さい機器を使って皆と対戦したり、冒険したり、お店を経営したり、恋愛したりと様々なことが疑似的に体験できるものですかね」
「疑似的にですか?」
「はい、例えば先ほど戦争の話が出ましたが、例えばその戦争の指揮官に自らがなって自軍を勝利に導くというゲームがあるのですが、実際に戦争をしている訳では無く、先ほど言いました機器の中で計算を行いその結果を出しているだけなのです。ですから実際に人が死ぬわけではありません」
「???」
セラは今にも頭に?マークが浮かびそうな顔をしていた。まぁ、そうなると思っていたよ。実際の物がないとどうもゲームと言う遊びは説明をしにくい。ゲームと言ってもカジノ、チェスみたいなのもゲームと言えばゲームであるし、俺が想像するゲームはP○PやP○3もゲームだ。それらを一括りに説明しようとしたのでは、いくら時間があっても足りないだろう。
「さ、先にマンガを説明しましょうか?」
「そ、そうですね。お願いします」
「マンガと言うのは様々な仮想の物語を絵で表現した本のことです」
「絵本ですか?」
「そうですね。ただ、小さい子供が見るような本はマンガとは言われませんでしたね。そのマンガも読む年齢層や性別などでジャンルが変わりますけどね。例えば俺が読んでいたマンガは『少年マンガ』ってよく言われ主に十代、二十代の男性が好んで見るような本でしたね。
「へぇ、では女性が見るまんがもあったのですか?」
「ありましたよ」
「それはどんなお話が多かったのですか?」
「うーん、俺はあんまり見たことが無いので説明しにくいのですが、恋愛系は多かったみたいですよ」
「恋愛ですか……いいですね。憧れます」
「そんな相手はいませんか?」
「そうですねぇ……私の周りはイマイチですね。顔がよくても性格は微妙な方とか逆の方もいますし……中々私がこれっていう人はいませんね」
ドンマイ、セラさんの周りの男たち。
「そうですね……クロウが大人になった時に期待しましょうか」
「俺とセラさんじゃあ恋愛とか無理じゃないですか? 物理的に」
「そうじゃなくてもクロウと可愛い子が夜の営みをすれば私も見ることが……あっ、すいません今のは無しでお願いします」
なんだろう。今聞いては行けないことを聞いてしまった気がするのだが。
「うーん、やっぱり説明は難しいですね。聞くよりか見てもらった方が早いですが」
「そうですね。クロウがいた世界は是非一度見てみたいものです」
「まあ、機会があれば映像ぐらいは見せることが出来るかもしれませんが」
スキル《描写》とかあれば便利そうだけどな。
「そう言えば少年まんがと言う言葉があるなら大人が見るまんがもあるのですか?」
「ええありますよ。その辺りになると子供には見せてはいけないものとかが増えてきますけど」
「そ、それは(ピー)や(ピー)なことが描かれているのですか?」
「ストップ! それ以上は行けない!」
「つまり、(ピー)している描写も存在するということですね?」
「いや、そうですけど。ってセラさん鼻から血が出ていますよ⁉」
何を想像したのか、セラさんの鼻からつーと血が流れていた。てか、その体ここでは幽体みたいなものなんだよね? 何で血が出るの?
「それは是非一度見てみたいものですね」
セラさんはそう言いながら鼻を拭いた。
「え、えーと……そうですか」
なんというか……セラさんって清楚なイメージだったのに……。
結局、この日は特訓をせずに俺は家に帰る事にした。
「……人って見かけによらないよな」
俺は改めてそう感じた夜の出来事であった。




