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Page 40

大海原を二つの影が横断していた。


一つは大きなクジラに乗り、風にその長い髪をなびかせるナーガの女王メレーナ。

もう一つはその横で寝転びながら水面を滑るワダツミであった。


「ワダツミさん。ごめんなさいね。使い走りみたいなことさせちゃって。」


「いいのいいの。俺も今の作業に飽きてきたところだったし。」


二人が向かうのはこの世界に残った最後の魔王軍の手がつけられていない島であった。


「やっぱり戦うことになりそうだよね。」


ワダツミは面倒くさそうにつぶやく。

これから二人が行うことはその島を無くすことであるが、一つ問題があった。


「そうですね〜。すんなり島を明け渡してくれればいいんですけど。そうはいきませんよね。」


「シュガール達もいたら楽なんだろうけど、あっちはあっちで仕事あるからねぇ。」


はぁ〜。と二人はため息をつく。その理由はその島の主にあった。彼は五皇臣と同等の力を持ちながら魔王に下らなかった魔人が住む島だったからだ。


「魔王様が出張ってくれればいいんだけど。あの人、魔王様相手にすると島ごと消えちゃうからなぁ。」


ワダツミの話はそのままこの世界の一つの神話につながる。


北の端にある一つの大きな島。そこには一人の魔人が住んでいる。彼はこの世界の王になろうとしたが、魔王と戦い、敗れ、命からがら島に逃げ帰った。それ以来、その魔人は島に引きこもり、二度と人前にその姿を現すことはなかったが、島に近づく者がいたら船を壊し、沈没させるという海の伝説があった。


「あの人も魔王様に仕えれば良かったのに。」


メレーナは理解できないというような言い草である。


「仕方ないよ。アレはなかなかプライドが高いし。それに中途半端に力があるからいつか倒せると思ってるようなヤツだからね。だけど…それは無理な話だ。」


ワダツミもやれやれと言った顔で答える。


島の主は魔王が近くを通るだけで島ごと姿を消してしまい、五皇臣でなければ会うことも叶わない厄介な相手であった。かといって無視して島をそのまま残すと計画上、問題が起きる可能性もある。


「時と場合によってはあの人を倒さないといけないってことですね。」


「そういうことになるね。だから邪魔になる部下を置いてきたんだろ?」


「邪魔だなんてことありませんよ?ただ戦うとなると巻き込んでしまうかもしれませんので。」


「同じことじゃん。…さあそろそろ見えてきたよ。幻島だ。」


ワダツミが見つめる先、薄っすらと霧がかかった島が見えたのだった。

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