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(やれやれ…どうしたものか…。)
ゴウグは頭を抱えていた。魔王様から許可を貰い、人間の協力は取り付けたものの。目の前の女王は未だ自分に気を許していない様子である。
「すまない。我々の文化に服というものが無くてな。」
現在、腰巻をつけているのも、メレーナやカシミラからせめて下だけでも隠して欲しいとお願いされたためため仕方なくつけているだけで本来、獣族は服を着るという文化が無く、何かをつけているのは魔王軍の他の種族と交流のある族長くらいのものであった。
「そうだったのか。ならば良い。こちらこそ不躾な事を言った。謝罪しよう。」
トルアーラは目を伏せ、少し頭を下げた。威張るような物言いはあるものの礼自体は欠かず、協力もしている。だからこそ余計に扱いづらかった。
「わかってくれればよいのだ。それで、この建物の玄関なのだが、何を置けば良いのだ?」
「そうだな。小さい棚と靴の泥を取るための小さい敷物でも置いておけば良いのではないか?」
そう。協力はしてくれてはいるものの。気を許していないからか親身になっては協力はしてくれてはいない。どこか適当で表面上だけ協力しているというべきか…。
「玄関は良いのか。では次の部屋に行くぞ。」
トルアーラはゴウグの返答も待たずに建物の奥へと入っていく。
ここは民家になる予定なので本当であれば庶民から話を聞きたかったが、レラの連れてきた人間達にゴウグが協力を仰ぐとトルアーラが周りの臣下の制止を振り切って名乗り出て今に至るのだった。
「石レンガ作りの二階建ての家か…。ゴウグよ。ここはこの街の平民達が住む家となるのか?」
唐突な質問にゴウグは静かに答える。
「ああ。そうだ。ここには君たちロージアの人間が住んでもらうことになっている。」
「国を奪われ、住む場所まで決められるのか。まるで我々人間は魔族の家畜だな。」
このわだかまりを解かないことには真の協力は得られないとゴウグは確信する。彼は6つの獣族を束ねる戦いで勝利した際に何度も直面した問題だ。その経験を活かさねば魔王に申し訳が立たないと考える。
「敗者は勝者に従う。これが自然の摂理であり、お前たち人間もそうしてきたはずだ。ただ、俺達は人間を家畜などとは思ってはいない。住む場所を奪ってしまったことは事実だ。だが、尊厳まで奪うつもりはない。それは理解してくれ。」
ゴウグはトルアーラの目をまっすぐ見つめ答える。するとトルアーラは大きな笑い声を上げた。
「ハハハっ!いや…すまない。お前…いやゴウグの言う通りだ。私も敗れた身、そちらの要求には従うさ。ただ、余りにゴウグが下手にでるものだからな。私だって負けて悔しくないわけではないからな、つい意地悪をしてしまった。お前達は勝者なのだ。もっと堂々とすれば良い。情けは時として侮辱に当たると知れ。」
「そうか。悪かった。俺はお前と対等に話がしたいと思っている。俺の計画に協力してくれ。」
トルアーラはそれに大きく満足そうに笑顔で頷くのだった。




