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異世界における武力衝突  作者: キロール
第三章、大戦前夜
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「幕間」

 ここが何処かは定かではないが、広い部屋に数多のモニターが並び、何かを映している。

 モニターを一望できる場所に椅子が置かれ、そこに座る男はモニターを見ずに、物憂げに沈思している。


 その男は、憂鬱と倦怠に包まれている。

 数多の世界を見つめ、人の成長を見守る様を、神の如きと称する者がいる。

 数多の世界に介入し、多くの実験を行う様を、悪魔の如きと称する者がいる。

 だが、男はある世界の人の胎より生まれた存在である。

 父を知り、母を知る。

 祖父を知り、祖母を知る。

 そして、多くの善と多くの悪をこの目で確かめてきた。

 その結果、己は神や悪魔ではない事は明白である。

 

 男は思う。

 今も宇宙は膨張を続けている。

 神は今を以ってしても、創世の最中である。

 神とは、ありとあらゆる『有』を祝福し、ありとあらゆる『無』を厭う者なのだろう。

 そして、自身もまた『有』に属する以上は、神の庇護下にある矮小な存在に過ぎない。

 同じ矮小な存在の人類に比べれば、少々力を持って居るに過ぎない。


 だからと言って、悪魔でもない。

 悪魔とは多くの神話において神の敵対者とされるものである。

 男の思い描く神は、ありとあらゆる物を是とする神である。

 であるならば、悪魔とは『無』であらねばならない。

 膨張する宇宙の外側に広がる、何もない虚無の空間が悪魔と呼ばれる存在であろう。


 嘗ては、外宇宙では『有』と『有』がぶつかり合い、打ち勝った宇宙が広がり続けているのかとも考えた。

 だが、ぶつかり合う以上は何らかの乱れが生じる筈だ。

 それすらなく、宇宙は膨張を続けている。

 ならば、やはり外宇宙には無が広がっているのだろう。



 数多のモニターを前に、その男は椅子に座り物憂げに沈思していた。

 男の役割とは、人類の前に立ちはだかり、人類と言う存在を、その格を引き上げる為だけの試金石なのだろうと、超常の力をもつ男は、もう何度目になるのか分からない程至った結論に、また辿り着いた。

 

 ふと、思考を止めて視線を一つのモニターに転じた。

 愛弟子が……赤い竜が粛清を行っている。

 取るに足らぬ命を刈り取り、次の作戦へと移行しようと言うのだろう。

 そろそろ大陸間同士の争いが起こるはずである。

 彼の世界を牛耳る愛弟子のルーベル・ドラコが相手にするのは確か……。


「神土少佐、だったか。」


 近年、珍しく覚えた他者の名前を小さく呟く。

 意識をそのモニターに向ける。

 粛清された魔術師とエルフの女が何事か呟いて、こと切れたのが見えた。


「……良かろう、但し一度だけだ。」


 男がその願いをかなえようと、小さく呟けば、モニターの向こうでは落雷が起こりこと切れた二人の哀れな骸を直撃した。

 途端、その二つの骸は跳ね起きて、のたうち泡を吹いて、暴れた挙句に、どろどろと崩れ落ちて何かに変容していく。

 肉の塊が隆起し、人のような、獣のような、歪で捻じ曲がった、それで居ながら生命を感じさせる双眸を与えられた二つの何かは、互いを見やり、絶叫とも言えない、奇怪な音を響かせ空気を震わせながら逃げ惑う。

 逃げ惑って居たがうまく動けないのか、汚らしい肉の塊はぶつかりあい、一つとなった。

 そして、一層奇怪な存在になり果てっていた。


 復活を願い、復讐を願った者にチャンスは与えた。

 偶々目についただけの相手でも、気が向けば力を注いでやる事はできる。

 望みを叶えられるかまでは興味はないが、しかし、彼がどう動くかは少しだけ興味があった。


「何者かになりつつある君よ、私からのささやかな贈り物だ。見事超えてみたまえ。」


 愛弟子との戦いの前の、最後の試験。

 どの様に超えるのか、楽しみが出来たと少しだけ可笑しげに、黄金の双眸を細めると、咆哮を上げた奇怪な存在に興味を無くして、別のモニターに視線を移した。


 モニターに映るのは数多の世界で数多の運命に立ち向かう戦士たち。

 彼らを見ていると、憂鬱と倦怠がわずかに和らぐ。

 人類は無理でも、彼らは自分の同じ位置まで登って来てくれるだろうと、微かな期待を込めて、男は何十と言うモニターを見つめていた。

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