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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
激闘!バケモノVS化け物
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ネーミングセンスにもの申す

ロディは瓦礫の隙間から顔半分覗かせて、辺りの様子を伺った。

砂塵とカレー煙幕が混じり合う視界は徐々にクリアになってきている。

建屋が1棟倒壊したというのに誰も集まって来ていない。おそらく他の棟にいる基地の者達も、全員武装兵集団に拘束されているのだろう。


「カルメンさん、怪我はないッスか?」

傍らでうずくまっている姉貴分に声を掛ける。カルメンが恐る恐る頭を上げた。

「ロディ、お前、これって・・・?」

「名付けて『どっかんクッション1号爆弾』ッス!」

ネーミングセンスに突っ込む余裕はない。

カルメンは起き上がり、覆い被さっている物体を瓦礫と一緒に押しのけた。

コレのお陰で崩れ落ちる鉄筋コンクリートや特殊合金製の支柱から身を守れた。

しかしはっきり言って気色悪い。ブヨブヨ、モニョモニョしていてさわり心地がよろしくない。

「説明しましょう!」

ドヤ顔のロディが元気に声を張り上げた。

「『どっかんクッション1号爆弾』とは、超高圧縮でカプセルに仕込んだ特製衝撃吸収材を爆発させることで瞬時に、しかも広範囲に広げて爆発や衝突の衝撃を和らげる、夢のよーな衝撃緩衝マットなんッス!

しかも環境に優しい素材でできていて、無味無臭にしてリサイクル可能・・・。」

「いや、ロディ後にして・・・。」

建屋倒壊のショックから立ち直れないカルメンは、力無くロディの説明を遮った。


あちこちの瓦礫から下敷きになった人々がモゾモゾ這い出してきた。

感触は最悪でも「どっかんクッション」はいい仕事をしたようだ。大きな怪我をした者は見当たらない。

しかし、カルメンが何かに気付いて息を飲む。

「カウンター裏!ルーキー達は!!?」

得意げだったロディの顔が青くなる。

「どっかんクッション」の数には限りがあった。ルーキー達が身を隠したカウンター裏には投入できていなかった!

「シンディ!フェイ、コンポン!!!」

カルメンが慌てて立ち上がる。

瓦礫に埋もれたロビー中央、カウンターがあった場所まで走り出そうとした時だった。


ゴゴゴゴゴ・・・スガァアァアン!!!!


突然、カウンターがあった辺りが吹っ飛んだ!

再び倒壊が起こったかのような轟音に、生還者達から悲鳴が上がる!

カルメンとロディも互いに抱き合い、声を嗄らして絶叫した!

瓦礫を蹴散らし砂塵を巻き上げ、ゆっくりと身を起こしたのは、「鉄巨人」。

右肩にフェイ・シンディを担ぎ、左脇にはスレヴィ・マルギーを抱え、両手にA・J・コンポンの首根っこを掴んでぶら下げた、壮絶極まる仁王立ち!!!

「・・・はぁ~い♡」

その足下でビオラが引きつった笑顔で手を振った。

他の連中も怪我は無いようだ。約1名の例外を除き、恐怖で硬直しているが。

「スゲーよおばちゃん!♪ マジでスゲー!!!」

「・・・司令副官、だ。」

例外・コンポンの賞賛に、シャーロットの険しい顔が少しだけ和らいだ。

カルメンとロディは抱き合ったままお互いの顔を見合わせ、脱力してへたり込んだ。


「今の、一体何だったの?」

「わからない。キメラ獣の雄叫びのようだったけど・・・。」

乱れた髪に手ぐしを入れるビオラの疑問に、渋面のカルメンが首を振る。

改めて辺りを見回してみても、負傷者と瓦礫の山しか見当たらない。凄まじい咆哮の正体らしきものは何もなく、いつの間にかサムソン達武装兵達の姿も消えていた。

不安げな2人をよそに、ロディ達は互いの無事を喜び合っている。全員、死にかけたショックからもう立ち直りつつあるようだ。

「敵さん、居らんくなってもたがな。何やっちゅーねん。」

「あ~あ、A棟ぐっちゃぐちゃ。よくみんな生きてたね~。」

「俺の『どっかんクッション1号爆弾』のお陰ッスね!!」

「やっぱりロディさんのネーミングセンス、変だ・・・。」

「そんなの、今はどーでもいいでしょ?!え~ん、怖かったよ~!」

「はいはい、もう大丈夫よ♡・・・たぶん。」

半べそかいてるシンディをビオラが優しく慰める。

ビオラの腕にはめているブレスレット型通信機が鳴ったのは、その手をシンディの肩に置きそっと抱き寄せた時だった。


『・・・おい!誰か聞こえるか!?』


ビオラの通信機だけじゃない。

カルメンの、ロディの、ルーキー達の通信機から、切羽詰まった男の声がまったく同時に聞こえてきた。

「えぇ!?」

カルメンが思わず自分の通信機型ピアスへ手を当てる。

この通信機はロディが造った特別製で、部隊メンバー間でしか通話できない。声の主は部外者だった。通信してくる事自体あり得ない。

しかもこっちが応答する前にいきなり話しかけてきた。強制開線だ。これができるのは、局長命令を伝達するモカの通信機だけのはずなのに?!

『聞こえたら応答しろ!おい、誰か!!!』

そんな特別な通信機を使い、声の主はカルメン達に呼びかける。

驚きを隠せない。本来ならば直接口を聞く事すら滅多に無いはずの男である。


「まさか、エメルヒ!?・・・統括指令。」


思わず呼び捨て、役職名は取って付けたように言い足した。

最高司令官に対する礼儀は驚きのあまり、一時的に吹っ飛んでしまっていた。


『おぉカルメン、お前無事か!?他の連中は!?』

カルメンの無礼を気にする余裕もないようだ。エメルヒがたたみ掛けるように聞いてきた。

「ここに居ます。シャーロット副官も。みんな無事です!・・・どうしてこの回線を?」

『モカちゃんの帽子だ。司令室に忘れてったんだ、お陰でこっちも助かった。

冗談じゃねぇぞあの野郎、司令室メチャクチャにしやがって!PCも電話もぶっ壊されてどことも連絡取れやしねぇ!』

「・・・あの野郎?」

聞き返すカルメンの声に被さるようにしてビオラが通信に割り込んだ。

自分のブレスレット型通信機に向かって怒鳴る勢いで問いかける。

「そんなことよりA棟が倒壊したわ!いったい何が起きたんです!?」

『いや、なんつーか・・・。

俺も今、混乱しちまってんだ。頭がおかしくなりそうだぜ!』

エメルヒの声に動揺が走る。

彼は半ばやけくそ気味に、その信じがたい事実を告げた!


『お前ら、聞いて驚くなよ!

俺の司令室をぶっ壊してして、お前らがいるA棟を瓦礫の山にしやがったのはなぁ!

 リーベンゾル・ターク だ!!!』


「・・・何ゆーてんねん、このおっさん。」

スレヴィが呆然とつぶやいた。

ロディが造った通信機は性能がすこぶるいい。カルメン達の側に居るスレヴィの、小声でつぶやく独り言でもちゃんと拾って相手に送る。

「そんなヤツがこの基地に居るわけないやん。

何をふざけてそんな大物の名前、出してきよるねんな?」

『来たんだよ!その大物が!!!』

エメルヒはさらに大声でがなり立てた。


『あの野郎、あの頭のイカれたバカ娘がラジオでほざいた暴露話を聞いてやがった!

「7日間の粛正」の時、リュイがモカちゃんを助けて連れて帰った事も知っていたぞ!?

わかるか、えぇおい!? ヤツの狙いはガチで モカちゃん なんだよ!!!

シャーロットよぃ、お前、モカちゃんにリグナム付けてメイン司令塔地下のシェルターにでも隠れてろっつって通気口の場所教えたろ!?

そこへ向かってたんだろうな、あの2人が逃げてくのをタークの野郎が見つけやがったんだ!

そしたら狂ったように暴れ出して・・・、ここ地上8階だぞ!?

特殊強化ガラスの壁たたき割って、飛び降りて行きやがったんだ!!!』


全員、A棟隣にそびえ立つメイン司令塔を一斉に振り仰いだ。

8階部分が無残に破壊されている。ガラス壁が吹き飛んでできた大きな穴から、こっちを見下ろしているエメルヒが見えた。

彼はモカのキャスケットをしっかり握りしめていた。


カルメンはゾッとした。

あのキメラ獣のような雄叫びは、リーベンゾル・タークがモカを見つけて放った歓喜の声だった?モカを捕らえるために、司令室から飛び降りA棟を倒壊させた?!信じられない!!!

ブルッと首を横に振り、恐怖でマヒする心を奮い立たせる。今は放心している場合じゃない。

「もしそれが本当なら、何故ヤツはモカを知ってるんです?

見かけた途端暴れたと言うのならあの子の姿を知っていた事になる!」

『そりゃ俺にもわからん、さっぱりだ!

だが間違いなくモカちゃんを見てヤツは豹変した!顔を見知っていたとしか思えねぇ!』

エメルヒの回答に血の気が引いた。

今の話が真実ならば、そのリーベンゾル・タークはどこへ行った?!

モカが危ない!彼女と一緒にいるはずのナムも!!!


「・・・きゃあぁーーーっっっ!!!」


突然悲鳴が上がった。

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