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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
扉を開ける「鍵」
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助っ人の黒歴史と母の愛

ロディが発明した盗聴機は、世間に出回っている既製品の盗聴機カウンターでは滅多に検知されない。

彼の諜報機器類を検知できるのは、彼が造ったカウンターのみ。さすが天才である。

モカがエメルヒの司令室に仕掛けた盗聴機は、電波出力最小限でも感度は良好。つい先日、天才(ロディ)がポテトチップス15袋を原動力に作成した力作だ。

お陰で「地球の部下」とやらに特殊無線で指示を出すエメルヒの声が丸聞こえ。上機嫌な様子まで手に取るように伝わってきた。

『誰もあの子にゃ手出しできねぇよ』。

これは地球連邦政府軍にも、リーベンゾルにも、リュイでさえも手の届かない所へモカを連れ出し監禁する、と言うことだ。

いい「カード」は手の内に隠しておく。自分が都合のいい時使えるように。

禿ネズミ・エメルヒのやり方だ。思惑通りにさせるわけにはいかない、絶対に。


ナムとエーコが着床ポートに着くと、出発を待つトーキョー大学医学部の特殊シャトルの前ではちょっとしたトラブルが起っていた。


「一緒に行く!」

「ダメ!」

「行くったら、行く!!」

「ダメだってば!」

「行~く~の~~~!!!」

「ダメだっつってんだろ!あ、こらコンポン、忍び込もうとすんな!!」


ロディ相手に駄々をこねるシンディと、隙あらばシャトルに乗り込もうとするコンポン、機材チェック中の女性看護師に纏わり付くフェイが、3者3様に騒いでいた。

「お前が一番タチ悪ぃ、こんな時までなにやっとんじゃ!」

ナムは美人看護師を口説いているフェイの襟首掴んでとっ捕まえた。

「お友達になったら乗せてってくれるかな~と思って。」

「くれるワケないだろが!」

シンディが駆け寄り早速ナムに噛みついた。

「ナムさんたら、ずるい!私も行く!!」

「説明しただろシンディ!

お前らが一斉に居なくなったら禿ネズミに作戦バレるって!」

疲れた表情でロディが諭す。

「だからって、ナムさん1人でどうにかなるもんじゃないじゃん。

ここはみんなで力を合わせてピンチ乗り切ろーぜ!

よっしゃ、俺いいこと言った!♪」

ドヤ顔のコンポンはナムのヘッドロックをくらって黙る。

ナムはニンマリ笑って見せた。

「安心しろって、俺1人ってワケじゃねぇよ。

強力な助っ人頼んである。アイツならいつでも()()()()力になってくれるんだ。昔っからすっげぇいい奴なんだよな~。

あ、でもまだ来てないな、何やってんだアイツ?」

モバイル携帯電話を取り出し電話を掛ける。

ワンコールもしないうちに相手は速攻、電話に出た。

何やら喚いている声が漏れ聞こえるが、ナムは気にも留めなかった。


「あ、もしもしー。そろそろ出発だからちょっと急いで来てくんない?

・・・え? まったまたぁ、そんなこと言っちゃって。

お前のことだからここでの生活退屈してんだろ?冒険しようぜ!

万が一バレても受診し損ねたから無理矢理付いて来きちゃいましたっつって、誤魔化かしときゃいいんだって!

ん? だってどうせケンコー診断バックレたんだろ?お前、昔から医者とか注射とか大っ嫌いだもんなー。

そうそう、アレ11歳ン時だっけ?「倉庫で爆泣き事件」!

養護院で予防接種の日に行方不明になったお前が、真夜中に備品倉庫で爆泣きしてたのには驚いたわ~。俺が見つけて、養護院中の人達たたき起こして知らせたんだったっけ。

確か、注射が嫌で倉庫に隠れたら職員さんに入口鍵掛けられちゃったんだよな。どーしても出られなくて、心細くて泣いちゃった、と。いやぁ、お前もまだガキだったねぇ~。

とにかくあの時は大騒ぎで・・・あ、切れた。」


C棟の彼方から、大絶叫が聞こえた。

「おのれ、リグナム・タッカーあぁーーー!!!!」


フェイがロディを見上げてつぶやく。

「『()()()()力になってくれる』って・・・。」

「きっと、だたの 巻 き 添 え ・・・。」

着床ポートの彼方から、砂煙を上げながら疾走するA・Jが見えてきた。

鬼のような形相だ。4人の弟妹達は同情した。


シャトルに乗込もうとしていたエーコは、昇降口で振り向いた。

「助っ人」を迎える歓声(?)に、ただでさえ騒がしかった着床ポートはもっと騒々しくなった。他人がみたらこのシャトルが有名大学の機体だなんて思いもよらないに違いない。

(まったくあの子は、もう・・・。)

昇降口の扉にもたれて軽く弾息をつく。

集団の輪の中で笑っている、息子の顔。あんな笑顔を見るのは久しぶりだ。

最期に見たのはいつだろう?

ナムを養護院へ預けたのが8歳の頃だから、それより前?

・・・いや、もっとずっと前から、ナムは笑っていなかった。

(そうね、随分久しぶりだわ。・・・。)

鈍い痛みが胸を突き、エーコは悲しげに微笑した。


「あの・・・。」

遠慮がちな声が掛かった。

「あら、モカちゃん、だったわね。」

振り向いて慌てて笑顔を作る。

すっかり恐縮しているモカが深々と頭を下げた。

「はい。すみません、こんなことになって・・・。」

「いいのよ。詳しい事情は聞かないけど、何も気にしなくて大丈夫。

謝らなきゃならないのはこっちだわ。うちの子、貴女にも迷惑かけてるんでしょ?」

「いえ、そんな。私、助けてもらってばっかりで。」

はにかんだ様子が微笑ましい。特別に美人というワケではないが、気立ての良さそうな、可愛い感じのいい子である。

エーコはニッコリ微笑んだ。

ほんの小一時間前、エーコの所へ転がり込んできた息子の姿が頭をよぎる。

モカを地球へ送り届ける依頼を受けた途端、ナムがエーコの元へ飛んできたのだ。


『頼む母ちゃん!俺も一緒に連れてってくれ!!!』


必死な様子に度肝を抜かれた。

ナムがエーコに「頼む」のも「すがる」のも、今まで一度もなかったことだ。

理由はすぐにわかった。エーコは目の前の少女の「普通さ」に、もの凄く安堵していた。

(よかった!女の子の好みはマトモみたい!

悪趣味がたたってとんでもない女に引っかかったらどうしようって、凄く心配してたのよ!

この子、お酒飲めるかしら?

近い将来、一緒に飲めたら嬉しいわ。でも、その前に・・・。)

エーコの顔が急に曇る。

そして、シャトルの脇で騒ぐ息子の出で立ちをチラ見する。

(・・・ダメだこりゃ、最悪だわ!!!

あんなのでちゃんと堕とせるのかしら?・・・絶対無理よねぇ・・・。)

「本気でMRIにぶち込んで頭ン中検査してやろうかしら?」

「は?」

懸念が思わず声に出た。

モカが目をパチクリさせて聞き返した時、エーコのモバイル携帯が鳴った。

シャトルの操縦席にいるはずのパイロットからだ。


『大変だタッカー教授!シャトル・ジャックだ!!!』


「えっ?!」

モカがエーコの腕を引っ張った。

一緒に昇降口扉の影に潜り込んで、身を隠す。

外では今まで大騒ぎしていたナム達が、アーミースーツを着た男達に囲まれていた。

全員、ホールドアップである。

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