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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
ハルモニアの暴露
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ここであったが100年目!!!

B棟の前には着床ポートに隣接した広いグラウンドが整備されている。

今度の騒ぎはそこで起った。

「痛ぁ~い、足くじいちゃったぁ!」

人工芝を敷き詰めたグラウンドの真ん中で、少女が右足首を押さえてへたり込んでいる。

「痛いよぅ、痛くて立てない。どうしよう・・・♡」

助けてもらいたいらしい。少女が泣きそうな顔で両手を差し伸べる方には、1人の少年が突っ立っていた。

サラサラと人工風になびく髪は透けるようなシルバーブロンド。切れ長の目は深いブルー。やや細身だがよく鍛えられ引き締まった体つき。

中性的な魅力をもつその少年は、少女の手をチラリと見ただけで、こう言った。


「面倒くせ-・・・。」


その場の空気が、一気に氷点下へと落ち込んだ。

どうやら拳闘の訓練中だったらしい。少年少女達が2人一組になって拳を付き合わせ熱い汗を流していたのだが、全員が冷え冷えと固まっている。

そこに、彼らとはまったく関係ない者が乱入した。

この通りすがりの部外者は、凍り付く彼らとは真逆にやたらめったら熱かった。

「ちょっとアンタ!それが女の子に言う言葉!?手を貸すくらいやったげなさいよ!!」

ワンピースの裾をたくし上げて駆けつけたシンディが、ダン!と芝生を踏みしめた。

鬼の形相で銀髪の少年をガン睨む。その後ろでコンポンが大げさに一つため息をついた。


おぉ!と周囲から声が上がる。

「あの娘だれ?」

「うわ、可愛い~、気ぃ強そうだけどメッチャ可愛いぞ?!」

「ついでに胸もデカい!」

「13支局隊?」

「美人しか入れないって有名な?」

「う~む、納得」

周囲の少年達がざわめいた。お年頃な彼らにとって新参の女の子は興味深い。

その中にあって、美少女(?)に怒鳴られた当の相手だけが至って平静で、無関心だった。

「お前、何?」

冷めた声で、銀髪の少年が言った。

人を見下すような態度がシンディの怒りに油を注ぐ。

シンディは髪を振り乱してくってかかった。

「何じゃないわよ!アタシ見てたのよ!

アンタが怪我させたんじゃない!拳闘訓練だからって、少しは悪いと思わないの!?」

「・・・別に。」

「な!?信じらんないしあり得ないんだけど!?」

「・・・うるさい。」

「何ですってぇー!!?」

緑のグラウンドの真ん中で喚くシンディと面倒くさそうにあしらう銀髪の少年。端から見たら掛け合い漫才にもみえる騒動に、野次馬が集まり始めた。


「おぉ、オモロい事になっとるやないか!」

スレヴィが面白そうに歓声を上げた。

一緒に駆けつけたフェイが頭を抱えて項垂れる。

「うわぁ、騒いでんの、シンディじゃん!またよけーな事に顔突っ込んで~。」

思わず漏れたつぶやきを聞きつけたコンポンが、振り向いた。

「フェイ!お前どこに居たんだよ?モカさんは?」

「さっきまで一緒だったけど、今は病気の発作が心配だから人がいっぱいいる所にはいられないって・・・。」

「そっかぁ。」

ひょいっとスレヴィの後ろから、マルギーが顔を出した。

「栗色の髪の子?A棟の方へ行ったよ。」

「げ!さっきの変態!!」

「変態じゃない、変質者!

好みと性格がおかしいだけで、精神構造までヤバイわけじゃないから。」

「意味分かんねぇよ・・・。」

「それよりさぁ、いいね彼女!

可愛いし巨乳だから目立つ目立つ。自称・アイドルがおカンムリだよ!」

マルギーが意地悪くニヤリ、と笑う。

「ホンマや、周りからガン無視やで。

あいつ、自分が注目されとらんとオモロないって性格やからな。キッツいやろなぁ!」

スレヴィも面白そうに同意した。

1~3支局隊はエベルナ統括司令部に駐在しているから、2人は旧知の仲のようだ。

「自称・アイドル?なんだそりゃ?」

「ねぇ、何のこと?」

フェイとコンポンが同時に聞いた。

スレヴィがグラウンドの真ん中を指してクツクツ笑う。

「あそこに座ってほったらかされてる第2支局隊の見習い諜報員の事や。

ハルモニア・ピアーズとか言うたかな。『スパイ・アイドル』なんやて!」

「スパイ・アイドルぅ???」

ますます意味がわからない。

フェイとコンポンは首を傾げた。


今度はマルギーが説明してくれた。

「あいつさ、地球連邦政府のお偉いさんの娘なんだけど、芸能界デビューしたれっきとしたアイドルなんだって。だたし、頭に『売れない』って付くけどね。

売れないまま歳喰ってきて焦ったらしいよ。変った付加価値付けたら売れるかもってんで、アイドルだけどスパイもやってます~、ってトチ狂っちゃったワケ。

で、エメルヒの禿ネズミがお偉いさんのご機嫌取りで『ウチが教育します~』ってエベルナに連れてきちゃったのよ。」

スレヴィも説明に加わった。

「ええメーワクやで。1日2,3回はああやって気に入った男の前で騒ぎおこすねん。

しかもアホやで~、A・J相手に毎回無駄にからんじゃぁ、毎回ケンモホロロにあしらわれとるのに。」

「A・Jって、あのダルそーな白髪の人?」

「そうよ。あいつ変っててさ、他人にまったく興味ない奴なんだよね。」

「冷めとるっつーか、感情がないっつーか、やる気が無いっつーか。

イケメンやからあのアイドルっ子も狙うんやろけどな、ぜんっぜんダメや。

ワイもここに来て結構経つけど、あいつが笑たり怒ったりするの、見た事無いわ。」

「へ~・・・」

コンポンとフェイがグラウンドに目を向け、銀髪の少年、A・Jを見た。

この世の何もかも心の底からどうでもいい。そんな顔だ。ギャンギャン喚いているシンディが滑稽なくらい空回っている。

それでも諦めずに罵詈雑言をまくし立てるシンディも、ある意味感心できるのだが。


シンディの猛攻は続く。

「アンタ何様!さっきから人の事見下してエラそーに!!

人の話聞いてる!?頭イカれてんじゃないの!?」

「・・・マジ、うるさい。」

「はあぁ!?信じらんない!!!」

息を切らせていきり立つシンディが思わず拳を握りしめた時だった。


「まぁ、許してやれってシンディ。こいつ見た目より悪い奴じゃないからさ♪」


「・・・え???」

スレた態度でシンディを見下ろすA・Jの後ろから、陽気で呑気な声がした。

A・Jのスカした顔が固まった。ポン!と肩に掛けられた手を血相を変えて振り払う。

体をよじる勢いで振り向く彼は、今までとはまったく別人のようだった。


「よ、エーちゃん、元気そうだな!

こいつ俺の手下なんだ、何したか知んないけど勘弁してやってくれよ♪」


あいつが笑ったり怒ったりするの見た事無い。

今し方、スレヴィがそう言ったA・Jの顔が、一気に真っ赤に染まっていった。

シンディの罵倒にも眉一つ動かさなかった彼の表情が激変する。

目はつり上がり、唇がワナワナ震え、眉間には深い縦皺が現れた!


「・・・貴様、リグナム・タッカーぁぁぁーーー!!!!」


エベルナの空に、A・Jの絶叫がこだました。

スレヴィとマルギーの顎が、「カックン」と落ちた。

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