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第四話 魅力的な異世界には生産要素と神要素は欠かせないっ

 その後Rは、農地で育てるための作物の設定や、毛皮や食肉のとれる獣の設定、いい家具が作れる木材が取れる植物の設定、いろんな個性的な味覚を持つ魚の設定、などを行った。ちまちまとした作業は、Rの苦手とする所であったが、「設定する」と言っても頭で考えるだけなので、そんなに手間はかからなかった。


「うーん……、どうしても、以前地球にあったようなものになっちゃうね」


「まあね。人間の発想というのは自然の模倣でしかない、という説もあるからね。つまりそれは、以前に見たものしか発想できないということだね。でも俺は、発想というのは既存のもの以外からも生み出せるものだと思ってるけどね」


「うん、そうだよね……」


Rはしばらく考えていたが、やはり既存のものからの貧困な発想しか浮かばない。設定された作物は、トマト、ナス、ダイコン、キュウリ、お米、麦、イモなど……、獣は、ウシ、ウマ、シカ、ウサギ、オオカミ、テン、イタチ、キツネ、タヌキなど……、植物は、ヒノキ、スギ、オーク、チーク、桜、かえでなど……、魚は、クジラ、マグロ、ブリハマチ、フグ、カレイ、ヒラメ、イカ、タコ、エビ、カニ、ウツボ、タチウオ、タイ、など……、であった。


「個性的な、オリジナルなものを創ろうと思ったら、気象や大気、物理現象などにオリジナリティーを持たせるといいかもしれない。地球と同じ星なら、地球と同じ生物が繁殖するのが自然だからね」


「なるほどーー。じゃあ、魔法的なものとか、スピリチュアル的なものを生む何かを設定してみようかな?」


「スピリチュアルか……、いいかもしれない。そもそもこの新しい惑星には、感情っぽいものがなさ過ぎる。宗教的な要素も入れた方がいいかもしれないな」


「宗教……。どんな宗教がいい?」


「まあRにとっては、民による信仰がエネルギーの源泉になるはずだから、女神崇拝、みたいな宗教が無難だな。あとはその反対勢力としての、悪魔崇拝とか……」


「悪魔は駄目だよ、これは癒し系惑星、『ポニーテール』だからね」


「うん……、なあR、その名前、なんとかならないかな?」


「だが断る!」


「ああ……、わかった」


「魔法と、スピリチュアルと、宗教。スピリチュアルと宗教って、同じかもしれないけど、わけて設定してみるね」


 Rは考える。魔法と、宗教と、スピリチュアル。そのそれぞれに、特徴とか、パワースポットとかがあるはずだ。魔法は、マジックストーンというものがうまっている、鉱山にしようかな。宗教は、もちろん教会とか、お寺とか神社だ。スピリチュアルは……、よくわからないけど、やっぱり神社かなあ……。あとは占い師が集まる館とか建物とか、ジプシーのテントとか?


「そうだな、そんな感じで、後はそれぞれのスポットを護る、守護獣しゅごじゅうとか守護神、みたいなものを設定するといいかもしれない」


「守護神は……。鉱山は技術の神、教会は天使、神社は女神アマテラス、占い師の館は妖しい謎の男、ジプシーのテントは、炎と踊りの女神……、とかどうかな」


 Mは少し不安を覚えた。人間には神あるいは女神が必要。そして何を信じるかは、その立場によって異なる。地球においても、神は女神アマテラスだけではなく、地球規模で見れば7柱の「神」がいた。完全なる一神教など存在せず、人々の宗教を具現化しようとすれば、それは何人もの神に分化されてしまうのだ。Rが創造しつつあるこの世界でも、そうなりつつあった。さらにMが懸念したのは、Rが自分への信仰というものを、全く考慮してないことだ。Mはその懸念を、Rに率直に伝えることにした。


「R、俺は女神アマテラスと古くからのライバルだったから、アマテラスを考えに入れてくれるのはうれしいんだが、Rはそれよりも、自分が女神として信仰を得ることを考えるべきだ。なぜかというと、女神というのは民による信仰をそのパワーとしてるっぽいからだ。アマテラスからRへ、女神の交代が起こってしまったのも、日本国民による、アマテラスへの信仰心が、薄れてしまったため……。Rにもそんなことには、なって欲しくはないんだ」


「そうだね……、うーーーん……。じゃあ、神社の守護神は私がなろうかな?」


「まあ……、さっき言った全部の守護神に、Rが就いてもいいとは思うけどね」


「うん、じゃあ、そうしておくね」


こうしてRは、鉱山、教会、神社、占い師の館、ジプシーのテントの、すべてを護る守護神となることにした。


「あとは守護獣だね。鉱山は……、うーん、むずかしいね」


「守護獣は、さっきの5人としてもいいかもしれない。技術の神、天使、アマテラス、謎の男、炎と踊りの女神、だな。獣扱いすると、アマテラスに殺されそうだが」 Mは苦笑した。


「そうだね、面白いね! そうするね」


 Rはさらに考え、鉱山には硬い皮膚を持つ甲殻類が住み、教会の近くには聖なる力と高い知能を持った獣たちが住み、アマテラスの近くには八百万の神的な、妖怪的な何かが住み、謎の男の近くには機械や化学、数学によって生み出された、人工の生物が住み、炎と踊りの女神の近くには、エレメンタル的な能力と、芸術的な能力を持つ何かが住む、ということにしようと決めた


「うん……、結構個性的な動植物が生まれそうだな」


「えへへ、ありがとう、Mさんのアドバイスのおかげだね」


 御世辞ではなく、Rは本気でそう思っていた。簡単に考えていたけど、世界を創るって、難しい。悔しいけどMさんがいないと無理だった、ぐぬぬう……。


 それはそれとして、世界は結構個性的で、魅力的なものに近づいている。生産のための素材と、宗教が完成した瞬間であった。

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