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第三話 生産施設を設置しよう

 宇宙と星々と、惑星とそのフィールドマップが出来、お城とその主要キャラが完成した。Rはこの世界の人間と同じ大きさまで縮小して、王座の片すみで体育座りをし、お城の人間たちの様子を眺めていた。Rの身体から抜け出したMも、Rの横に立ち、腕組みをして険しい顔をしていた。


「Rよ、これがお前の望んだ世界かな? まるで子供の作ったおもちゃの王国だが……、お前はこんなものを作るために、地球を破壊したのか?」


「違うよ、まだまだこれからだよ」


(でも、どうすればいのかわからないの……)


 Mに、Rの心の声が聞こえた。それはそうだ。例えこのような、コンピューターゲームの真似事をしようとしたとしてもだ。Rはそういったゲームはやったことはないし、中世ヨーロッパの知識も皆無。すこし助け舟を出してやろうか、とも思うが、俺がそうしてやる義理もない。むしろRがこの世界の構築に早々に飽きて、元の地球を復活させてくれるのが俺の望みだ。だが、ホントにそんなこと出来るのだろうか、いくら女神とは言え……。


「Mさん?」気弱なRの声。


「ん?」思わず返事をしてしまうM。


「Mさんだったらこの後どうするか、聞いてみてあげてもいいのよ?」


「ふん……」


 幼い頃がら小説家をめざして見聞けんぶんを広め、多くを学び、多くの体験をしたMのとっては簡単なことだった。だが今のMにとってRは、地球復活を望むMにとっては、いわば敵対するプレイヤー。簡単に情報を渡すわけにはいかない。


「ひとつ条件がある。いいかな?」


「うん、言ってみて」


「100年だ!」


「え?」


「この世界を100年楽しんだ後は、この世界を消し去って、元の宇宙と地球に戻してくれないか。もしOKだったら、俺はよろこんでアドバイスするよ」


「えーー? 100年で私が楽しめなかったら?」


「その時は……、まあ、俺の責任でもあるだろうから、もう一回かな」


「やったーーー!! いいよ、その条件で!」


ちっ、とMは心の中で舌打ちをする。どうして俺はこうもRに甘いのだろう。だがしょうがない。あまり機嫌を損ねると、このは何をしでかすかわからないからな。


「すまないがもう一つ質問いいかな? ほんとにお前は、元の世界を復元できるのか?」


「うん、たぶんね。やったことないけどね」


「そうか……、じゃあ問題ないな」


 MはRに、今後の方針をレクチャーした。まず第一に考えるべきことは、生産施設を設置すること。生産、と一口に言ってもそれは多種多様で、それは人間の生活をまかなうほとんどのものをカバーする施設と言っていい。生活は「衣食住いしょくじゅう」。住む場所はRが提供するとしたら不用になるけれど、着る物と食べる物くらいは自給自足させるべきだろう、と。


「ということは?」


「うん、そういう生産のための場所を、設置するといいんじゃないかな? 宿屋、家具職人、裁縫屋、農家、漁師、狩人。八百屋・肉屋・魚屋・パン屋、酒場・食堂、くらいを用意すれば、なんとか生活できる施設は整うんじゃないかな? 大工とか家屋建設のための部材の製造まで考えたら、とんでもないことになるからそれは当面は、あきらめた方がいいな」


「Mさん、一杯ありすぎて面倒臭いよ!!」


「そう、人間の営みというのは、そういうものなんだよ。それが嫌なら時間の進みを速めて、人間が生まれるのを待った方がいいな」


「うーん……、ぐぬぬーー、だが断る!」


Rは、Mがさっき言った職業を、指折り数えながら確認して、それをフィールドマップに設置していった。その作業の手が、ぴた、と止まった。


「Mさん?」


「うん?」


「全部のお城や町や村に、さっきの全部の職業を置かないといけないの?」


「いや、その必要はないよ。それぞれのコミュニティー(居住地域)の近くに、そういう職人がいるのがベストだけど、すべてのコミュニティーに設置する必要はないな。むしろコミュニティーごとに、住んでいる職人の種類に特色を持たせると面白いし、コミュニティーの間の行き来も活発になるから、文化や情報などの共有も活発になって、人間の進化も速まるかもしれないね」


「なるほどー」


 Rは再び空に戻って巨大化し、全体マップを見ながら悩み始めた。


「ここは広い海の近くだから、港町にして漁師を置こうかな。逆に、この山の近くの村には、狩人とかハンターとかを置いて……。あ、Mさん、作曲家とか、小説家はいらないの?」:


「作曲家とか小説家か。そういうのは次のステップで設置だな。まずは衣食住の確保が先決だ。ちなみに、中世の世界では、作曲家とか小説家は、吟遊詩人ぎんゆうしじん一括ひとくくりにしてもいいかもね」


「ふーん、わかったよ」


 時間をいったん停止させ、大規模な農場から個人農場、大規模な船着き場から浜辺の小さな港町、毛皮を取る狩人とそれを加工する裁縫師。木材を加工して家具を創る家具職人。そういった職人が創った製品を流通させることが仕事の商人と、製品を商品として販売するお店、家具屋・八百屋・肉屋・魚屋・パン屋など、それに加えて、サービス業である宿屋・酒場・食堂を設置したRは、時間を再び動かした。


「わあ!!」Rが感嘆の声を上げた。


 ちょっとぎこちないながらも、設置した人物たちがそれぞれの役割を理解し動き始めた。山では狩人が……、って……、あれ?


「駄目だよ、狩人が何も狩れなくて、お腹を空かせて死にそう」


「農場も駄目だな。種がないから植えられない。漁師は魚がいないから何も獲れない。商人たちは商品がないから動けない」


「うーーーん……、人間の暮らしって、むずかしいんだね……」


おそらく、獲物や植物さえ設定してやれば、この世界はうまく回り始めるだろう。こうして、ポニーテール惑星に、生産のための施設が整った。民たちが自立して生活し始めるまで、もう少しの辛抱だ。


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