第二話 人類誕生
「そして、ポニーテール惑星に、人類が誕生します」 Rが言った。
おい、と叫びそうになって、Mは慌てて自分の口をふさいだ。
(いかん、思わず突っ込みを入れそうになってしまった。俺はまだ、Rが地球を破壊したことを、許してはないのだから、軽々に口など聞くべきではないのだ)
Mはぷいっと横を向いて。再びRの心の中で、寝転がった。
「Mさん……。私、女神になってからだと思うんだけど、Mさんの内緒の心の声、全部聞こえちゃってるよ?」
「なん……、だと?」 Mは赤面した。
「興味あるんだったら、一緒に創ろうよ。私だけじゃ無理かもしれないから。それに、すねるなんてMさんらしくないよ?」
「う……、うるさい」
だが、Mは起き上がって言った。
「じゃあまず言わせてくれ。ポニーテール惑星って何だ!! センスなさすぎだろ!! それにまだバクテリアしか生まれてないのに、もう人類だと? どうやって!?」
「え? こうやって……」
Rは湖の近くのお城の広間に王座を置き、王様を座らせた。人類の誕生だ!!
「おい!!」
まるでおもちゃの人形のような、4等身で目がまんまるの王を見て、Mが再び突っ込みを入れた。人形のような姿の王は、左右にくる、くる、と首を振ったあと、再び正面を向いた。王の眉毛が、哀しそうな「ハ」の字になった。王は言った。
「どうしてワシは、こんな所に。ついさっきまで……、ついさっきまで……、あれ? 何をしていたんだっけ?」
王は立ち上がり、膝を曲げずにカクカクと歩き出した。
「おおい! 誰かいないか! 家来どもはどうした!」
「あ、動いちゃだめ!」
Rが右手を上げると、王は椅子にワープした。再び王は、左右をきょろきょろと見回した。今度は王は何も言わず、立ち上がりもしなかった。王はただじっと、椅子に座っていた。
「まるでRPGのノンプレイヤーキャラだな」
「うん、そういう世界を創ってるんだよ」
「何?!」
Rはさらに、おもちゃのような兵隊を10人ほど部屋に置いた。台所の流しの前には、粗末な服にエプロンとメイドカチューシャを付けた女性を立たせた。女性は、「ああ忙しい、ああ忙しい」、とつぶやいているが何もしていない。
「R……、立ちっぱなしはかわいそうだろう」
「大丈夫だよ、この世界のモブキャラは、疲れを知らないっていう設定だから」
「設定?!」
「うん。私が設定を決めたら、それがこの世界の法則になるんだよ。これでも女神だからね!」
なぜ……、なぜこんな天然娘が女神に……、とMは再び絶望した。それは置いておき、とにかく、Rが創造したポニーテール惑星に、人類が誕生したのだ。