実技の時間
中将の位は、全八千万人存在する勇者の中で、僅か百名しかその位を持っていない
「これから、トーナメント形式で勝負してもらう」
「はぁ!?」
秀村の発言に驚いたBクラスの生徒が飛び上がって反応をしめした。
落ち着きがない・・・・・・
「なんで、いきなり戦わされるんですか?」
「それが、この時間の授業内容だからだ」
「京香ちゃん、この先生どうにかしてくれよ」
生徒が教師を下の名で呼ぶ。
その異常な行動に、Aクラスの生徒は驚きを隠せない様子だ。
だが、山田は目を開けているが、寝ている為反応しない。
「京香ちゃん、京香ちゃん!!」
その声量は、次第に大きくなっていったが、山田はピクリとも反応を示さない。
「なんでだよ・・・・・・」
生徒は立ち尽くしたまま、その視線を秀村に移した。その目は、秀村に反逆者を連想させた。
この場で、山田は寝ているから、静かにしてやれと言えば、Bクラスの生徒は納得するだろうが、自我自尊の塊だ。つまらないと感じれば、授業を放棄しかねない。彼らは山田と出会って三ヶ月の月日が流れていた
為、その思いが連鎖する可能性が大きかった。その為、口調を強めて答えた。
「この時間帯は、俺の担当だ。この時間だけは、俺がAクラス、Bクラスの担任教師だ。教師の課した
授業内容を全うするのは、生徒の役目だ。分ったらさっさと座れ」
秀村の圧力を感じ取った男子生徒は、渋々座った。
「では、出席を取る」
そう告げ、出席名簿を手に生徒の名を呼んだ。
「アーウェル・クリス」
「はい」
その名を呼ぶと、知っている声で返事が返ってきた。先程の男子生徒だ。
秀村はその名を頭に深く刻み込むと、手際よく出席確認を済ませた。
「では、これより班対抗トーナメント戦を開始する」
と、告げた後、秀村はしばらく沈黙し、再び報告を告げた
「やはり、トーナメントではこの時間で終わりそうにない」
「じゃあ、どうしますか?」
野村が無表情で尋ねる。
きっと、こいつは俺告げることが分ってて、わざと聞いたのだろう。
目を閉じ、もう一度自分の考えた授業内容を振り返り、再び目を開いた。
「教員対生徒にしよう」
と同時に、生徒の表情が凍り付いた。
野村はそれを鋭い目つきで反応する。生徒全員の表情を見渡すと、ごく少数ではあったが、野村と同様の
反応を示すを生徒もいた。
「じゃあ、かかってこい」
「えっ!?」
攻撃を仕掛けてこない生徒に対し、
「どうした、先手を譲ってやると言ったんだ」
と、再確認するように尋ねた。
その言葉ですでに始まっている事に気付いた生徒は、秀村に襲いかかった。
最初に飛び出してきたのはAクラスのデンシだった。
デンシはアリの家系に生まれた「アンテリ」だ。
アリの遺伝子を継いでいるデンシだが、特にアリの能力は継いでいなかった。つまり、ただの人間だ。
ただ違いのは、高難度魔法「デンジャー」を扱えることだ。
デンジャーは瞬発力を上げる魔法で、奇襲に向いている。その弱点は、自身で完全に制御することが
出来ないことだった。それでも、秀村への奇襲攻撃には十分だった。
ほぼ直線上陣取っていたデンシにとって、魔法を制御する必要は無かった。ただ、前進すれば事足りる
からだ。
当然、その事を警戒していた秀村は、デンシが行動を開始する音を感知し、デンシが奇襲攻撃を仕掛ける前にクラッキングし魔法を発動した。
デンシの攻撃ははずれ、デンシの体は地面に叩きつけられる。
だが、移動した先では、すでにヘンズの魔法を発動され、秀村に襲いかかっていた。
クリュウの能力は「グッシベリン」
グッシベリンは変換魔法の一種で、ある一定空間の重力を変化させることが可能だ。
通常の五倍の重力を与えられ、動きが鈍くなった秀村を来示が襲いかかる。
来示の能力は「ラーデリオン」
ラーデリオンは、遠距離魔法の一種で、物質であればなんでも矢に形態変化し、攻撃することが可能だ。
この時来示は、砂、砂利を形態変化し、矢を生成していた。
秀村は再度クラッキングし、瞬間移動することで窮地を脱すると、校庭の中央へその身を転送させた。
第二校庭の面積は、四千平方メートルある。
生徒達が集合していた場所は、中心地点から西の方角にいた。
秀村と生徒の間には、遠い距離が生まれた。
右ポケットに手を入れ、音声拡大機を取り出すと、それを通じて告げた。
「さあ、授業が終わるまでに、俺を倒すんだ」
「グッシベリン!」
デントは再び魔法を発動し、秀村をめがけて突っ込んだ。
その発動を事前に察知した秀村は、自身から三十度の校庭に目を付け、クラッキングをならした。
クラッキングと同時に、デントが突っ込む。
それを、白野は右手でデントの背をたたき、地面に落とした。
瞬間、校庭にいた生徒に戦慄が走る。
「おい!」
と、その時、開始地点に留まっていた同級生に、野村が声を掛けた。
「俺達と一緒に来る奴はいるか?」
野村の側には、ミスト、来示、クリュウの三人が立ち上がっていた。三人とも、Aクラスの生徒だ。
三人は、Aクラスで唯一存在しているグループだ
しばらくしても、誰も声を上げないのを確認すると、三人に表情で合図を送り、秀村をめがけて駆けだした
三人が自身まで後十メートルほどの範囲まで近づいたのを確認すると、クラッキングし、
魔法を発動した。
瞬間、秀村を見ていた生徒全員の視界から秀村の姿が消えた。
どこへ消えたのかと四方を見渡していると、背後から秀村の声が聞こえてきた
「おまえ達、授業受ける気あるのか?」
振り向くと、秀村が両の手をズボンに入れてたっていた。
「うわぁぁ!?」
突如出現した秀村の登場に、Bクラスの生徒が尻餅をつきながら後ろへ後退する。
Aクラスの生徒は無反応だった。それは、日常茶飯事の光景だったから。
生徒に向かって尋ねる
「おまえ達、授業を受けてるんだよな?この時間帯は実践形式の実技を行う時間だ。分ったら、さっさと
仕掛けて来い」
秀村は未だに行動を開始しない生徒を鼓舞すると、再びクラッキングし、再び中央地点へ移動した。
「ど、どうすんのよ」
Bクラスの生徒数名が、これからの行動をどうするのか、友達同士で話し始めた。
その様子から、クラスをまとめるリーダー的存在がいないことが分る。
だがそれは、Aクラスも同様だ。
実力至上主義者である者達は、者達でグループを結成しているが、そうでない者は皆孤独だ
「うおぉぉぉぉ」
三人は連携して秀村を責め立てる
クリュウが重力を操作し、仲間にかかる重力を減少させ、体を身軽にし、対する秀村には重力を増加させ動きを鈍らせる。そこを来示が遠距離から攻撃、ミストが近距離からの攻撃を繰り出している。
戦法としては悪くないが、やはり、後い二、三手足りない。
クラス全員が連携して責め立てれば、十分に勝機があるのだが・・・・・・
そう思いつつ、未だ動きがない生徒が行動を開始することを願い、魔法を発動し、三人の攻撃を回避し
続けた
「レッテンド!!」
秀村って実は、勇者なんです。しかも、魔王を支える最高幹部の四将と、実力は同等と呼ばれる程の勇者