10話 父の元へ
「あ、待って、肝心なこと言い忘れていた」
話が終わり、リビングに行こうとした私を久美子さんは止めた。
「一回、お父さんのところに一緒に行かない?」
逃げ出したお父さんのところに久美子さんは誘った。
「え、でも……」
「真輝なら14時くらいに帰ってくるから問題ないよ」
そう言うことを言いたい訳ではなかった。
「こういうのは早い内に終わらせた方が良いんだよ」
そう言った久美子さんの雰囲気はどこか自嘲気味だった。
それは久美子さんにも言えることだったからかもしれない。
真輝に妹であるわたしがいることを教えることを先延ばしにして過去を真輝に知られたくなかったからというのは考えすぎでもない気がした。
「ねえ、行かない?」
久美子さんがもう一度尋ねた。
私はお父さんのことをまだ許せていなかった。
しかし何故そうなったのか本人に聞いて見る気にはなった。
そのため私はお父さんに病室に行くことを決めた。
「なら、一回風呂入ったら」
「そーですね、分かりました」
確かに長い時間ここにくるために歩いてきたため身体を洗いたかった。
私はお言葉に甘えて風呂に入った。
「悪いけど着替えは真輝との買い物で買ってくれる」
「分かりました」
そう言ったため風呂上がりは同じ服を着た。




