8話 母
久美子さんに早速バレた私は久美子さんの部屋に呼ばれた。
「で、直子さんの娘であってるよね?」
私は逃げられないと思い頷いた。
「やっぱりそうだよね」
直子さんは怒らず笑っていた。
それが怖くて私は部屋の真ん中に突っ立っていた。
「座って」
それに気づいた久美子さんがイスを勧める。
私はそこに縮こまるように座った。
「そこまで警戒しなくていいよ」
久美子さんはやはり笑っていて何を考えているのか分からなかった。
「ねえ、ここに来たってことは全てを知ったんだよね」
私は小さく頷いた。
「誰に聞いたの?」
お父さん、と答えると久美子さんは頭を抱えた。
私は謝るしかなかった。
「大丈夫、大丈夫、気にしなくていいよ」
その姿は本当に気にしている様子はなかった。
と思ったら急に表情が真剣になった。
それより真輝はまだこのことを知らないんだよね、だから真輝にはまだ秘密にしといてくれるかな」
その真剣な表情に私は、わかりましたと、答えるしかなかった。
「で、このことは直子さんは知ってるの?」
「知りません、まだ気持ちの整理が……」
私はまた泣き出しそうになり堪える。
「じゃあ、このことにいつ知ったの?」
「今日です」
そのことを聞いて久美子さんは状況をすべて理解したようで、なるほど、と言葉を漏らした。
「今日、お父さんに教えてもらってそのまま確かめに来たということかな」
少し違ったが大体合っていたため私は肯定した。
「一応、直子さんには連絡しといたほうがいいと思うけど良いかな?」
口調は穏やかで反対しようと思えば反対できたが私は連絡をお願いした。
それを聞いた久美子さんはすぐにリビングに行き連絡を取りに行った。それから数分間電話の前から離れなかった。
私はその間、怖くてリビングから聞こえる電話している音を塞ぎたくなった。




