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6話 奈穂の涙
目が醒めると知らない家にいた。
いや、私は意識してここに来ていた。
徐々に昨日のことを思い出し、理解する。
「おはよう」
お兄ちゃんが笑顔で話しかけて来てくれた。
そのことで私は完全に理解した。
父のこと
久美子さんのこと
ここまで必死に来たこと。
そして目の前にいるのが兄であること。
目の前にいるのが兄であるのは直感で間違いないと思った。
言葉では表せないが兄だとわかるのだ。
そして昨日の辛いことが蘇り、涙が自然と溢れた。
その涙は止めようとすればするほど溢れてきた。
あまりの恥ずかしさにタオルケットで私は顔を隠してしまった。
ちゃんと私は来ることが出来たんだ。
お兄ちゃんに会えたんだ。




