5話 出会い
私の心臓は焦りと困惑と混乱などで乱れていた。
目的地まであと少し。
そんなところでスマホの充電が20パーセントを切っていた。
これがなくなったら頼りになるのは手元の紙一つ。
泣きそうになるほどの寂しさが私を襲った。
周りの雰囲気は賑やかな駅から何駅も離れたため、さほど賑わっていなかった。
それどころか閑散としていていて人通りが少なく道路も狭く入り組んでいた。
「直線120メートル先目的地周辺」
スマホの画面にはそのように文字が出ていた。
ようやく着く。
嬉しさで足が急に軽くなった。
スキップするかのように私は進んだ。
しかし目的地周辺にはアパートがいくつか存在していた。
その看板を一つ一つ確認するが錆付いていて読みにくい。
一つ一つ確認していくが同じような名前のアパートすら一つもない
もしかして本当はもう着いていてどんどん離れているのではという考えが私を不安にさせる。
さらに夏の暑さも私を苦しめていた。
どうしてこうなったんだろう
ポツリ考える。
しかしいくら考えても泣きたくなるだけだった。
今、どこにいるかスマホの電源をつけようと試みるがつかなくなった。
どうしよう。
とてつもない孤独が私を支配する。
日はほとんど沈み夕方を過ぎていた。
私は彷徨った。
どこにいるのか全く分からない。
さらに誰にも会わないことがさらに不安にさせる。
もう心はぼろぼろだった。
しかし私はここだと信じて探すしかなかった。
そして見つけた。
ーー△県×市□区2の29の3 ○アパート102号室 神崎
名前も間違いなかった。
ようやく見つけたがどうしたらよいのか分からない。
ベルを押してそのあとはどうすれば良いのか考えていなかった。
外は暗くなり夏の暑さは消え、寒くもなってきた。
もし、私が妹です、と言い、現れたらお兄ちゃんはどんな顔をするのだろう。
久美子さんも驚くことは間違いなかった。
そもそも久美子さんは私のことを知っているのだろうか
私の頭の中ではありとあらゆる策が巡っていた。
ふと、記憶喪失なら誤魔化せるのではないかと考えた。
それなら妹だと明かさなくても良いし、お兄ちゃんを傷つけずにしばらくの間、側にいれる。
私はそう決めた。
その瞬間、思わぬ人物が現れた。
病室に度々現れる久美子さんがアパートに近づいていた。
相手もそれに気づき、急ぎ足で近づいてきた
突然足の速度を上げた久美子に私は何もできなかった。
「ねえ、あなた大丈夫?」
久美子さんは私に近くなり尋ねてきた。
もしかして私のことを知らないのでは?
頭にそんなことがよぎる。
そんな考えをしてるとは思わない久美子さんは私の腕をとった。
「とりあえず中に入って」
久美子さんに引かれるがままに部屋の中に入る。
緊張で動きがおかしくなる。
「すみません、お邪魔します」
そう言い軽く私は会釈した。
久美子さんはそんな私にソファに座ることを勧めてくれた。
どうやら私が誰なのか久美子さんは本当に気づいてないようだった。
そして隣にいる少年も気づいてないようだった。
なぜか分からないがそれが分かった途端、私は急に眠くなりそのままソファで寝てしまった。




