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失った思い出  作者: ういもと
第2章 奈穂の物語
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2話 出発

お父さんの病室から逃げ、真実から逃げ、コンクリートの建物をいくつも通り過ぎ、たどり着いたのは公園だった。


そこはとても小さな公園で遊具はブランコとベンチしかない。


建物ばかりの街の中、そこだけぽっかり空いていた。


私はボロボロのベンチに座り考える。


何も考えずに感情に任せて逃げてしまった。


もう家なんて帰れない。


病院も行くことができない。


今後、お母さんにどんな顔をすれば良いのか分からなかった。


そんな私の手には1枚の紙があった。


――神崎 真輝 △県×市□区2の29の3 ○アパート102号室


その紙に記された住所は同じ市内だった。


行こうと思えば行けない距離でもない。


病院にも家にも帰れない私は行こうと決意した。


しかし財布はカバンの中だった。


幸いスマホはいつもポケットに入れていたため持っていた。


そのため早速記された住所を検索して見る。


その結果今いる公園から大体2時間程度歩くらしいが迷いはなかった。


今の時間は14時なので夕方には着くだろう。そんな安易な考えで私は歩き出した。


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