ハロウィン月・それぞれの進路
淳一君目線。11月になり俊、悟、も進路をきめたようです。
10月の最後の日曜、昼の休憩を終えた店長が店におりてきた。今度は俺が昼食と休憩を取る番。やり残しの仕事は、飛鳥先輩が任せた。
「淳一君、2階に俊君の名古屋土産があるから、昼のデザートで食べるといい。午後から、華道教室からの注文配達が一件と、ホテルのロビーのディスプレイを頼まれてるから。なるべく早く帰るつもりだけど、午後からは飛鳥ちゃんと二人でよろしくね」
日曜日はまだいい。俺が一日水瀬花屋で働ける。このごろ悟は日曜日は、受験勉強に専念してるし、俊は、花の名前も知らない。
悟は、N大、とH大を受ける。福祉関係の職の資格を取りたいとか。看護師や介護士のような現場ではなく、市役所の福祉課のような所で働きたいそうだ。
どういうボタンを押して、その結論になったか後でじっくり聞いてみないとな。
階段を登りながら、効率のいい尋問...じゃねぇ、質問の仕方を考えた。
後ろから足音がする。振り返ると俊だった。
「俊兄さん、名古屋のお土産、ありがとうございます。」
「やだな、僕なんか”俊”で、呼び捨てでいいのに。それに土産といっても、名古屋土産定番の”ういろう”だし、珍しくもないもんで悪いけど」
彼が両親の墓参りに、休暇を利用して名古屋へ行ったのは、金魚草の精霊のお喋りでわかってる。っていうか皆知ってるが、彼は敦神父と店長にだけ知ってると思ってるらしいけど。世間話好きの花の精霊がいるかぎり、この店では秘密を持つのは無理だな。
俊と二人で昼をとることになった。今日のメニューは悟の母さんの差し入れで”おでん”。か~!渋いよな。俺としては、鳥のから揚げとかガッツリ食べたいだけどな。
「淳一君は、来年の4月からは札幌の専門学校に行くんだろ?悟も大学受験。そうしたらこの店は、人手が足りなくなるんじゃないかな?」
俺もちょっと心配なんだよな。プロの華道家になると決めたのは、ここでバイトしてたおかげだ。この店はつぶれずにいてほしいけどな。この店が俺のスタート地点というか原点なんだ。出て行く俺が言うのもなんだけど。
「正直、店長はキツイだろうと思う。多分、これ以上は規模を拡大しないで、注文販売を中心にいけば、経理の飛鳥先輩のバイト代くらいは出る。悟も大学合格すれば、朝の仕入れと午前中の仕事が、店長一人でなんとかなるだろう」
「僕、ここに就職したほうがいいのかな?」
金銭的には無理だと思う。飛鳥ちゃんも悟も俺もバイトだ。俊には”安定した会社での正社員”を、敦神父は望むだろう。今までのリストラのトラウマがあるから余計に。
「俊兄さんのやりたい事をするといいと思う。ただ、花屋の仕事は見た目よりも、ずっと専門知識が必要で、花束作りでは、美的な才能がないと難しい。飛鳥先輩、そこで苦労してるんだけどな」
苦笑いな顔になってるだろう。先輩の活け花は、美というより野生の美なんだよな。まるで近くに狐の子でも隠れてそうな雰囲気だ。店の花束やアレンジは、精霊の主張にまけてしまうので、統一感がないって感じかな。
「そっか、じゃあ、敦神父さんに相談してみようかな。僕は出来るなら、大特とかの免許もとりたいので、少し休暇が欲しい処なんだ。」
ちょっとホっとしたような顔で、俊にいは、俺のぶんまでご飯をよそおってくれた。
「こうやって、話しながら食べるのも、いい。でもいつかはここを出て自活していかないといけないのかな~」
「どっちでもいいんじゃね...いえ、いいんじゃないんですか?自活するならここには実家に帰る事になるし、実家なら家から仕事に通ってもいいわけだから」
一瞬の間があいたあと、俊にいは大笑いした。”ああそうかそうだよね”なんて、自己完結してる。そして、ごちそうさまというと、すぐ上機嫌で下に降りて行った。
そういえば、さっきも階段のとこで機嫌がいいというか、スマホ見てにやついてた。ふふ、これは深く原因を調べねば。
更新、超遅れ申し訳ないです。




