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「レミーエに貰ったハンカチーフの紋章……あれを見て、すぐにアルトリアのドランジュ公爵家のものだと気付いたさ」
決まっているだろう?とエリオットは肩をすくめた。
「それから、レミーエを探すために公爵家の事を調べた。そこの……アンジェがアルトリアから国外追放された罪人だったことがわかったのはオマケみたいなモンだな」
エリオットがちらりとアンジェに視線をやると、彼女はあからさまにビクリと震えた。
この怯えよう……
エリオットはアンジェに一体何をしたのか。
「アンジェ。お前、何を平気な顔してレミーエの近くにいる?彼女をあんな目に合わせておいて、いけしゃあしゃあと……」
アンジェを憎々しげに睨みつけながら近寄ったエリオットは、彼女の腕を掴んで部屋の外に出そうとする。
「宿の女将は何をしているんだ。ここに止めおくようには言ったがレミーエに近付けさせるなんて!」
「待って。やめて、エリオット!」
私はエリオットに縋りつくようにして彼を止めると、アンジェを庇うように自分の背に隠した。
アンジェの震える手が私の服をキュッと掴むのを感じ、私は腕を回して彼女の手を握った。
「レミーエ……何故庇うんだ。その女は危険だ。またお前に危害を加えようとするかもしれない」
エリオットが腕を伸ばして私を引き寄せようとするのにあがらうと、ズキリと足に痛みが走る。
「痛っ……」
「レミーエ様!」
「あっ……すまない。大丈夫か?」
痛みに顔をしかめた私を、アンジェとエリオットが支えようと腕を伸ばしたが、私は手を出してそれを制した。
エリオットの顔がますます険しくなっている。
……こんな傷、痛くなんかない。
大丈夫……
顔に無理矢理笑みを貼り付けて、私は口を開いた。
「ごめんなさい、大丈夫よ。……エリオット。彼女はこれまでの自分を反省し、生き直そうと努力しているのよ。女将もそれを受け入れて彼女がここで働くことを許してくれたの」
「だが……」
信用できない、とありありとエリオットの顔に書いてある。
私はキッと彼に強い視線をむけた。
「罪には罰が必要だけれど、罪を悔いて更生しようとする人間にはその機会が与えられるべきだわ。心配ならばあなたが監視すればいいことじゃない」
ここはあなたの宿なんだし、と言いながら私は表情を崩してエリオットにウインクした。
エリオットはあっけに取られたような顔をした後、声を上げて笑った。
「っはは!レミーエには敵わないな!被害に遭ったお前がそう言うなら俺にはもうなにも言えやしない。まあ、監視下にはおかせてもらうが、この宿で働くことを許そう」
「エリオット!ありがとう!」
嬉しくなってエリオットに抱きつくと、背後からすすり泣く声が聞こえた。
「レミーエ……様……私……ありがとう、ごめんなさい」
アンジェは手で顔を覆うようにして泣いていた。
ありがとう、ありがとう、とか細い声で繰り返している。
「アンジェ、謝ることなんてないわ。あなたが良くやってくれていた事を私は知っているもの。これから、新しく人生を始めるのよ」
ね?と首を傾げてアンジェの顔を覗き込むと、彼女は顔をくしゃくしゃにして笑った。




