第36話
中間考査も無事に終了し、今日はその結果が発表される日だ。
星光学園では、中間考査の結果が廊下に貼り出される。
と言っても、貼り出されるのは成績上位者十五名分だけだ。
「颯斗、佳奈。中間考査の結果が貼り出されたって。見に行こうよ」
赤田がワクワクした表情で、俺と白蓮に声をかける。
正直、俺は返却された解答用紙で点数を確認すればいいと思っているため、わざわざ廊下まで見に行く気はなかった。
しかし、今回の中間考査でかなり手応えを感じていた赤田は、昨日の夕飯のときから三人で見に行くことを楽しみにしていた。仕方なく、俺も一緒に見に行くことにした。
「うん。行こうか」
俺が席を立って白蓮の方を見ると、白蓮も俺の方を見て小さくため息をついた。
白蓮はあまり人混みが好きではない。それに、おそらく俺と同じで、解答用紙を確認すれば十分だと思っているのだろう。
白蓮はゆっくりと重い腰を上げ、小さな声で「分かった」と返事をする。
ウキウキしながら先を行く赤田の後ろに続いて、俺と白蓮は教室を出た。
「緑、貼り出されるのって十五位までだけど」
「うん、知ってるよ」
「そんなに自信があるの? 今までずっと平均ぐらいの成績だったのに」
白蓮が言いたいことはよく分かる。
いくら手応えがあるとはいっても、今まで真ん中ぐらいの成績だった子が、いきなり十五位以内に入れるかと言われれば、かなり難しいだろう。
「そりゃあ自信あるよ。テストの問題をいつもよりスラスラ解けたってのもあるけど、あんなに一生懸命、颯斗と佳奈に教えてもらったんだもん」
赤田は恥ずかしげもなく、笑顔で答えた。
白蓮はそれを聞いて少し照れているようで、俯いて何かボソボソと言っている。
確かに、こうも面と向かって言われると、俺も少し恥ずかしくなってきた。
「ねえ」
俺が赤田に声をかけようと思ったそのとき、突然、横から声をかけられた。
声の主は知らない女の子だった。
「あんたが神崎颯斗?」
「そうだけど」
俺に声をかけてきた女の子の表情は険しく、俺のことを好意的に思っていないことだけはすぐに分かった。
「あんた、最近転校してきたんだよね?」
「それがどうかした?」
「中間考査、あんた不正したでしょ」
「は?」
女の子は険しい表情で俺を睨みつけながら、理解できない質問をしてきた。
女の子がそれなりに大きな声で話しかけてきたせいで、貼り出された結果を見に来ていたほかの生徒たちの注目も集まり始める。
「岩下さん、何言ってるの?」
赤田が俺を睨みつけてくる女の子に尋ねる。
「中間考査でこの転校生が成績一位だったの。しかも全教科満点で。有り得ないでしょ? 転校したばかりの転校生が、満点なんて取れるわけないでしょ」
岩下さん曰く、俺は全教科満点で成績一位らしい。
だから何なのかと言いたいが、それは彼女の神経を逆撫でするだけなので、ここはぐっと堪えよう。
「別にあり得ると思うけど。そんなに難しいテストではなかったし」
「それは、喧嘩売ってるの?」
「何が?」
「授業を聞いてなくても解けるレベルの問題を解けないのかって言いたいんでしょ?」
彼女は中間考査で一位になれなかったら、命でも取られるのだろうか。
今の岩下さんには何を言っても無駄だ。かといって、無視をすると「逃げるな」と言われるに違いない。
「実際、授業を聞いていれば解ける問題しか出題されてないんだから、解けてないならそういうことでしょ」
俺を睨みつける岩下さんを睨み返しながら、白蓮が言い返す。
言い返してくれるのはありがたいが、言葉はもう少し選んでほしい。
「あなたも転校生より下なのよ? 思うところがないわけじゃないでしょ?」
「神崎に実力があることは知ってる。だから、こういう結果になったことに特別思うことはない」
冷静に返された白蓮の言葉は、怒りで燃え上がる岩下さんにとって、火に油を注ぐようなものだった。




