↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒雷の復讐者  作者: Lilith
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/31

第1話

 桜の花も散り、緑の葉が目立つようになってきた。


 俺は教室の自分の席から窓の外をぼんやり眺めながら、春から夏へと移り変わっていく季節を感じていた。


 5月上旬にしては気温が高いせいか、窓の外に見える生徒たちのほとんどは、すでに夏服へと衣替えしている。


 時刻は8時15分を少し過ぎた頃。


 俺の教室にも登校してくる生徒が増えてきた。


 友達に朝の挨拶を交わしながら鞄を机に置き、そのまま他愛のない会話に花を咲かせている。


 そんな教室の様子をぼんやり眺めていると――


「おはよう、神崎」


「ああ、おはよう」


「またぼーっとしてたの? 相変わらずだね」


 突然声をかけられ、そちらに目を向ける。


 今登校してきたばかりの女の子が、隣の席で鞄を開け、教科書を取り出していた。


 ショートカットの黒髪がよく似合う彼女の名前は、金村明美。


 頭は特別良いわけではないらしいが、その代わり運動神経はずば抜けている。


 入学して早々に行われた体力テストでもその実力を見せつけ、あらゆる運動部から勧誘を受けるほどだった。


 明るい性格で、男女を問わず誰とでも仲良くなれるタイプ。


 俺とは隣の席ということもあり、こうしてよく話をする関係になっている。


「別にいいだろ。何もすることないんだし」


「誰もダメとは言ってないでしょ?」


 金村と、毎朝のように繰り返されるいつもと変わらない言葉を交わす。


 そうしてホームルームが始まるまでの時間を潰す。


 それが、いつの間にか俺の当たり前の日常になりつつあった。


 そして俺は、この日常をそれなりに気に入っていた。


「そういえば、今朝のニュース見た?」


「見たけど、どうした?」


「駅の駐輪場で死体が見つかったってやつだよ。身体の一部が欠損してたってやつ」


「ああ、見たよ。確か、ところどころ燃えてたって話だったよな」


 死体が見つかったのは昨夜のことで、発見したのは仕事帰りのサラリーマンだった。


 自分の自転車の近くで何かが燃えていることに気付き、急いで近づいてみると、人のようなものが燃えているのを発見した。


 最初はマネキンが燃えているのかと思っていたらしい。


 ところが、到着した警察が燃えていたものを調べたところ、それはマネキンではなく人間だった。


「そうそう。しかも、お腹から太ももにかけてなくなってたんでしょ? 血痕とかはなかったみたいだけど」


「ああ。死体が燃えていたのに、死体以外には燃えていたものがなかったみたいだし、変だよな」


「先月のと合わせて五件目だよ? 早く犯人捕まらないかなー」


 今回と同様の事件は先月にも四件起きており、どの事件も未だに解決していない。


 現場や欠損していた部位は事件ごとに異なるものの、それ以外の状況はほぼ一致している。


 そのため、もし犯人がいるのだとすれば、同一人物による犯行だろうと考えられている。


 だが、状況が状況なだけに、何らかの事故なのではないかという意見も多いらしい。


「犯人? 事故じゃないのか?」


「五件目だよ? 事故にしては起きすぎだよ。絶対、誰かが何らかの方法で殺してるんだと思う」


「何らかの方法って?」


「炎をまとった拳で相手を殴るとか?」


「ごめん。どういうこと?」


「だから、炎を自在に操ることができる人がいて、拳に炎をまとって殴ったらできそうじゃない」


「言いたいことは分かるけど、まず、炎を自在に操れるやつなんてこの世にいないだろ」


「まあ、そうだよね」


 実際、金村と同じように考えている人も少なくない。


 事故にしては、同様の事件が起こりすぎている。


 それに、身体の一部を欠損させるほどの威力で燃えている何かを直撃させるなんてこと、普通ならできるはずがない。


 けれど、拳に炎をまとわせて殴りつけるなんて、漫画やアニメの中だけの話だ。


 そんなことができる人間が、現実にいるわけがない。


 ――このときの俺は、そう思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。