解散
「ウワワワワワワワワーーーーッ!!!」部屋で琴子は悲鳴を上げた。
推しが!推しが!突然引退してVtuberチームを離脱すると発表したのだ。中学から推して4年。CD買ってライブ行って部屋の中はグッズだらけだ。
大学生になったが、なんらサークル活動せず推し仲間とひたすらライブやグッズ集めやカラオケ歌い、生誕祭ばっかりしていた。
生活の全てだったのだ。
仲間達とネットで悲しみを慰め合ったが心に空いた穴は埋まらない。
皆はチームの弟分として企業が推すチームに移行していったが、琴子は変われなかった。
琴子が推しに感じてたモノが後輩チームには無いのだ。足りないのだ。
歌が上手いとか声が良いとかじゃなくて、冷めた目線だ。
どれだけ俯瞰で自分達を見れるか?
面白いエンタメを提供するかを念頭に置いて動けてるかなのだ。
演者であり且つプロデューサーなのだ。
引退した推しは、裏方に回るそうだ。新しい配信会社を作るそうで新人配信者を募集していた。
推し仲間の内2人は、自分が配信者やってみるとオーディションを受けると行ってた。
琴子は、それもピンと来ない。
後輩チームも推せないし、推しの会社入って自分が配信者なるのも違う。
琴子は自分が輝きたいとか全く思わない。
なんなら山羊座の隠匿本能で壁か家電にでも化けて、ただひたすら愛でて眺めて居たいのだ。
学科のとある男子が、推しが解散してからずっと気になってた…
まず声が大きくて良く通る。聴き取りやすい。
その上で内容がひねくれているのだ。人と被らない視点を持ってて思わず学科で話してると聞き耳を立ててしまう。
皆が部活に入ってるのに彼も部活してないようだ。
大学近くのカフェバーでいつもバイトしてる。
忙しそうなので、そんなに話してるのじっくり聞いたことはない。仕方ないのでカフェでひたすらお茶して彼の声に耳を傾けていた。
「あのさ、ストーカーするのやめてくれない?」ある日とうとう言われてしまった。
「ごめん!あの実はオーディションがあって…受けてほしいの?」携帯で配信者オーディションを見せる。
「あ〜ッ、このアクスタの奴だろ?引退したんだよな?配信会社起こしたのか?へ〜っ、知らなかった。」
琴子が、カバンに付けてるアクスタやぬいぐるみに反応してる。
彼も知ってるようだ。もしかして興味があるのかも?
「推し活してた仲間は、オーディション受けて1人受かってるの。でも私は見たいの聞きたいの!自分が見られたり聞かれるのは苦手で。で、受けてくれない?」
琴子が手を合わせてお願いする。
「へっ?俺が?なんで?」学科の男子はキョトンとしてる。
「もうさ、推しに解散で裏切られるの嫌なの!
もう推しを作る事にしたの。アナタが配信者なってくれたら推せる!なって!」琴子は拝む!
「俺、そんな話面白くないと思うけど…なんなら不快じゃないか?ゲームもそんなに上手くないし。」学科の男の子は困っている。
「それに俺奨学生なんだ。大学も自分の金で通ってるし。時間ないわ〜」とテーブルを去ろうとする。
ギャルソンエプロンをガシッと掴む。
「知ってる?このオーディション受かると週3の配信ノルマ守るだけで月30万が保証されるの。その上でスパチャは自分のものなの。」琴子がささやく。
彼の目が不穏に輝く。
「ほう…それで企業は良いのか?儲からないだろう?」と質問する。
「私の推しをナメないで。あなたのキャラの版権は彼にあるの。つまりグッズの収入は推しに全て入るのよ。」琴子の推しは配信者が嫌になった訳ではない。自分と言うキャラに飽きてしまったのだ。
そこで配信会社を興して新しいキャラをコレクションする事にしたのだ。おかげでオーディション受かるとまず本人のキャラにあったモデリング作りから始まる。色んな作家さんに頼みながら、その中から社長が選ぶのだ。
「…なんかちょっと気持ち悪くない?人形ごっこみたい…」学科の男子は、やはり面白い。本質突いてくる。
「そう!これは生の人間使ったコレクション作りなの。そういうキモいのが彼の売りなの!」琴子がキラキラと語るが、やはりキモい。
「まあガワは何でも気にしないなあ〜俺は。実は人間以外が良いんだよな。小さい時に犬飼ってたから犬とか成りたい!」彼なりの成りたいモノがあるようだ。
「え〜っ、私は耳は生えても良いけどイケメンキャラが良い!片目のオオカミとか?どう?」琴子は彼に一匹狼的なイメージを持っていた。
我が道を行くタイプだ。推しとそこが似てるのだ。
だが推しはプロデューサー寄りだが、彼は主人公タイプなのだ。群れない。
つまり推しからキモさを除いた感じだ。
推しが株式上場したので株も買ってる。学科の男子がそこから配信者なってくれれば、箱ごと会社ごと推せるのだ!
推しは自分のコレクションを作り、琴子はそのコレクションBOXを愛でる推し丸ごと愛でるのだ。
…そう、琴子は観察者なのだ。見て聞いて楽しむのが人生で1番好きなのだ。
祖母も活弁士の祖父のファンだったし、私も主人の同人誌の作品に感動して推してたらプロになった…推し活が人生タイプです、代々。
まあ推し婚の結末はいつも悲劇でしたが。
そんな祖母も後年は推し活にのめり込み過ぎてファンクラブの役員までなってましたが。
アイドル女性と結婚するなりファンクラブ役員辞めてましたが…
仕方ないから、物語の中で推し育成ゲームしょ。
祖父や主人みたいに、うまく育つかな?
発想が…ヲタクと言うかキモいなあ。




