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【完結】陰陽師のお仕事 〜医術師〜  作者: カズモリ
赤の文書
32/43

32. AI技術

 青は大学の屋上で白い雲を眺めながら、白衣のポケットに片手を突っ込み、もう片方でジュースを飲んでいた。


 キナリの討伐については、鴇と碧から聞いていたし、バイオテクノロジーを使う予定だと聞いていた。

 けれど、以前のようにゲノムを組み込むより、もっと簡便な方法はないか、と考えると、やっぱり最新技術が良いと思っていた。


 キナリにしてみればバイオテクノロジーなんてものは知識もなかっただろうから、前回はうまくいった。けれど、また同じ手を使うのは流石に知識も得ているだろうから、また同じ手を使うのを青は反対だった。


 とは言っても、何にも思いつかないんだけど。

「どうしたもんかなあ」


 青は雲を目で追いながら、深く息をついた。


「なーに、悩んじゃってんの?」

 背後から声をかけられ、青はどキリとして後ろを振り返る。

「英先生」


 ニコニコと英透から笑顔を向けられ、青は持っていたジュースを口から離した。


「大学に少し用事があってね。で、何悩んでんの?」

「まあ、プライベートなことですよ」

「そっか。うちの娘は関係ある話?」

「………そんなわけないですよ? なぜですか?」

「きみたち昔から仲が良いよね。従兄弟の割には」

「そんなもんですよ」


 青はヘラヘラと笑い「それでは」と言って、適当にやり過ごそうとする。

 ペコリと頭を軽く下げると、碧の父の透の前から離れた。


 去り行く背中を見ながら、透はくすりと笑った。

「老婆心が過ぎたかな」


 透には懸念があった。

 ある日突然、妻が死んだ。とても元気だったのに、事故にあったと。

 納得できるはずもない。

 

 妻の実家には言葉で言えないような禍々しい何かがあって、それをみんなで黙っていた。ひっそりと活動していて、それを指摘したこともない。


 そしたら、妻が冷たくなって、二度と戻ってこなかったのだから、娘を関わらせたくないと思うのは普通じゃないか。


 関わらなければ、別に文句なんてない。



 青はため息をつきながら、階段を降りていると、同級生がキャッキャして、話しかけてきた。


「3Dプリンタが導入されたみたいでさ、見に行かない?」

「え? 気前いいな、検証実験すんの?」

「そーそー、動物実験で検証すんだと」

「ふーん」


 同級生に言われるがまま3Dプリンタを見に行くと、仕様書を組み、そのままボタンを押せば翌日には複雑な模型ができるらしい。


「ずいぶんと便利なんだね」

「音声系のAIと組み合わせれば、喋るマネキンくらいにはなりますよ」


 研究室に来ていたベンダーに話しかける。

「AIってそこまで進歩しているの?」

「画像系だと録画した画像を使ってパターンや癖を解析できますよ。リハビリに使用できますね」

「行動パターンか……」


 青は何かを掴んだのか、ニコリと笑って研究室を後にした。


 人間には誰しも癖や行動パターンがあるし、それを直そうとしない限り直さない。仮に人に指摘されたからとて、簡単に直るような代物ではない。

 それが何百年ともなれば、尚のこと不可能だ。


 身体は変わっても、癖は抜けない。


 キナリとの過去の対戦については、ハクがビデオのように録画している。これをAI画像解析に回して癖や攻撃パターンを探れば、勝率は上がるはずだ。


 彼は何百年もの間、頂点に君臨しているのだから、当然誰かに指摘されたり、技術を研鑽する機会なんてものはほとんどない。

 だから、油断や驕りが出るはず。そこに、キナリのウィークポイントを的確につめていく。


 俺の戦い方は勝率を上げるやり方だ。それこそが俺が参画する上での最大の長所だ。


 透さん、あなたから二度と家族を奪う気はないですよ。そのためにできることを全て行います。


 青は廊下を闊歩しながら、先ほど透に言えなかった言葉を心の中でつぶやいた。

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