07. 満たされぬものを探して
新居に腰を落ち着けて、数日が経った。
ある日、月はギルドの軒先で、湯気の立つ湯のみを手に外を眺めていた。
(家ができて、生活が安定した。でも……)
目に映る風景は静かで穏やかだったが、心のどこかにわずかな空白が残っていた。
何かが欠けている。そんな感覚が拭えなかった。
(……まだ何かが足りない気がする)
思索のまま、足は自然と教会のほうへ向いていた。
再び訪れた教会では、子どもたちが元気に駆け回っていた。
だが、よく見るとその動きには活気がなく、笑顔の裏に疲れがにじんでいる。
シスターとの会話の中で、最近は食べ盛りの子が多く、食材が足りていないという現状が明かされた。
月は目を細め、教会内を見渡す。
調理場の棚は空に近く、あるのは数種類の保存食だけ。
(住む場所はある。でも、食べるものが足りないんだ)
月は小さくつぶやいた。
「畑を作るのもいいけど……ダンジョンを作って、そこで食べ物が取れるようにすればいいじゃない!」
ぽろりと出たその言葉に、自分でも少し笑ってしまう。
「……だったら、供給源を作ればいい」
視線は、ギルド裏の空き地へ向かっていた。
「次に作るのは……そう。ダンジョンだね」
その声には、静かな覚悟がにじんでいた。




