06. まずは、住むところから
数日後。
ギルドの宿泊室で、月はふと目を覚ました。
隣のベッドでは帝が寝息を立てており、さらにその隣ではカノンがベッドから落ちたまま眠っている。
その姿を見て、月はクスッと笑った。
「相変わらずの寝相ですね」
しばらくカノンを眺めていた月の脳裏に、ふと教会で出会った子どもたちの姿が浮かぶ。
「……あの子たち元気かな?」
孤児になった理由は様々だった。
家を追い出された子。
戦火に巻き込まれた子。
迫害から逃げてきた子。
子どもたちは笑顔で過ごしていたが、その裏にはおそらく色々な不安があるのだろう。
大人には相談できない、子どもなりの事情もある。
「……なにか力になれないかな?」
その日の午前営業を終えた昼過ぎ。
月たちは食堂スペースで昼ご飯を食べていた。
厨房で料理をしている月へ、帝が思い出したように声をかける。
「お姉ちゃん」
「なぁに?」
「オレたちはいつまでギルドの宿泊スペースで寝泊まりするのだ?」
帝の言葉を聞き、カノンも続く。
「うん……布団が少し硬くてちょっと寝づらいし、毎日身体が痛い」
「お前のそれは寝相のせいではないのか?」
「そんなことない」
月は料理をしていた手を止め、帝とカノンを見る。
そこでようやく、ひとつのことに気付いた。
「………そういえば……わたしたち家がないね」
「お姉ちゃん……」
「もしかして忘れてた?」
「………うん。ごめんね」
そんな3人のところへ、マスターがやって来る。
「どったの~?」
「オレたちの家がないことに今気づいたのだ」
「いつまでも宿泊スペースってわけにはね~」
「ふむふむ……そっかぁ。そうだよね~……」
月はマスターへ顔を向けた。
「どこか土地をお借りできますか?」
「この街の土地?どこでも自由なところ使いなよ。空いてるところならどこに建ててもいいよ~……迷惑をかけなければ」
「それでいいのだ?」
「マスターの管轄だからね!全部はマスターの采配次第。まぁ、ダメなところは何もできないようにしてるから安心だよ!」
話を聞き終えた月は、帝とカノンを見る。
「じゃぁ、お昼ご飯を食べたら探しに行こうか」
「わかったのだ」
「は~い」
昼食を終えた3人は、そのまま街へ出た。
暮らすための土地を探しながら、いくつかの場所を見て回っていく。
最初に足を止めた場所で、月が辺りを見渡した。
「う~んここは……」
「ちょっと騒がしいのだ」
「人の思念が多くて気持ち悪い……」
普段は制御しているとはいえ、ふとした拍子に流れてくる思念。
カノンは気持ち悪そうに口元を押さえる。
そこを候補から外し、3人は次の場所へ移動した。
しばらく歩いた先で、今度は帝が足を止める。
「ここがいいのだ」
「その心は?」
「ちょっとした電圧システムがあるのだ」
「はい次行こう」
カノンはすぐさま帝を引っ張った。
「のだぁぁああああああ!!!!!!」
帝はそのままカノンに引きずられながら、その場を離れていく。
そうしていくつかの候補を見て回った末、最後にやって来たのはギルドから少し離れた静かな丘の上だった。
月は足を止め、周囲を見渡す。
「………いいね」
カノンも辺りを見回しながら頷く。
「人も少ないし、眺めもいいし……音もうるさくないし……ボクここがいい」
「……のだぁ……」
2人の反応を見た月が口を開く。
「じゃぁつくりますか」
そう言って、月は家を作りはじめた。
土地を選定してから3日。
持てる魔力と技術を駆使し、ついに家を完成させる。
出来上がった家を前に、月は帝とカノンへ声をかけた。
「さ、わたしたちの家だよ」
「技術の無駄遣いなのだ……」
「姉さん………すごいね」
月は小さく笑う。
「うん。……これでようやくわたしたちの拠点ができたね」
3人は手をつなぎ、新たな拠点へ足を踏み入れた。




