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みんなで幸せに!

これで完結となります。お読みいただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。

シンデレラが王宮に住むようになってから半年後、アデラとバーサは彼女にお茶に招かれた。3人が顔をあわせるのは久しぶりだ。シンデレラはお妃教育に、アデラは結婚の準備と家の立て直しに、バーサはアデラの手伝いと新たな出発の準備にと、それぞれが忙しかったのである。


「う、う、緊張する」


王宮へ向かう馬車のなかでバーサはうめいた。もちろん今日は御者台ではなく、ベティも連れていない。髪もきちんと整えて、瞳と同じ色のドレスを着ていた。


「そんなに緊張しないで大丈夫よ、今日はシンデレラと3人だけだから」


向かいに座るアデラがなぐさめる。そう言う彼女も、場所が王宮なので少し緊張していた。


「それにもう、姉妹でゆっくり話せる機会は来ないかもよ」


寂しさをにじませながらアデラが続ける。つい先日のこと、シンデレラがローレンス王子の婚約者として発表されることが決まった。結婚式は半年後の予定だ。姉妹とは言え、これからは気軽に会うことは難しいだろう。


「あなたも家からいなくなるしね」


アデラはバーサを見る。彼女はなんと、ディランの推薦で王宮の「呪術研究所」に入ることになったのだ。しばらくは見習いの立場だが、家を出て研究所の寮に住むことになっていた。


バーサが家を出るなんて大丈夫なのかと、初めはアデラもセバスたちも心配した。だが、バーサは研究所行きが決まると顔を隠していた前髪を切り、服装も整えてまともに生活するようになったのである。


「アデラお姉さまだって、結婚したらもっと忙しくなるよね」


アルバートとの結婚を来月に控えたアデラは頬を染める。だが結婚後に伯爵となるし、領地経営もしないとならないので、そうそう浮かれていられないのも確かだ。


「だから今日は、3人でのおしゃべりを楽しみましょうね」


「うん!」


バーサは元気よくうなずく。馬車はしばらく走ったのち、王宮の門へと滑り込む。ふたりを出迎えたのはディランだ。


「お待ちしておりました、アスター男爵。と・・・?」


アデラに続いて馬車から降りた女性が誰なのか、ディランはすぐに分からなかった。数秒考えて、バーサだと気づく。


「これは、バーサ嬢!」


「お久しぶりです、デキールさま」


まだぎこちなくはあるが、淑女の礼であいさつするバーサに、ディランは目を見張る。変わり者と思っていた令嬢が、知的で愛らしい女性へと変貌していたのだ。


こっ、こっ、これは、なかなか可愛いではないか!!


ディランは心のなかでそう叫び、そう思ってしまった自分に驚愕する。


いや、違う!これはそう、第一印象とあまりにギャップがあるから、びっくりしただけだ。


「デキールさま?」


なぜか狼狽しているらしいディランにアデラが呼びかける。彼は冷静さを取り戻し、メガネをくいっとあげると言った。


「いや、失礼。シンデレさまはこちらです」


耳をうっすら赤く染めたディランを先頭に、3人は黙って中庭を歩いていく。中庭は植物が勢いよく生い茂り、なぜか今が季節ではない花まで咲いていた。


あら、中庭ってこんなだったかしら?


歩きながらアデラは首をかしげた。舞踏会の日にイイデンナ伯爵に案内してもらった庭は、こんなに植物がたくさんあって元気だったろうか?


そう、これはシンデレラのせいだ。


彼女が王宮に住み始めてからと言うもの、王宮の緑はモリモリと育ちはじめた。木々は森のように生い茂り、花が咲いて実が実り、しばらく前からはリスや野兎などの小動物まで住み始めていた。それを見て、国王もシンデレラの聖女の力を認めたのだ。


「素晴らしい!これはぜひ、王家に迎え入れねば」


妃教育が順調に進んでいることもあって、国王はシンデレラを王子の妃とすることを決めた。ローレンスが飛び上がって喜んだのは言うまでもない。


「あちらです」


大きな東屋のそばまで来ると、ディランは一礼して去る。姉妹の水入らずの茶会を邪魔しないように気を使ったのである。


「お姉さま!」


シンデレラがふたりに駆け寄った。王妃がいたら「王族らしくない」と叱られるところだが、今日は気にしていられない。3人は抱き合って久しぶりの再会を喜びあった。男爵家にいた時のようにシンデレラが手ずからお茶を淹れると、それぞれの新しい生活について話が弾む。


「そう言えば、イイデンナ伯爵夫人はお元気ですか?」


しばらくして会話が落ち着くと、シンデレラが少し気まずそうにきりだした。今後王家に関わらせないため、間違っても「母」とは呼ぶなと言われているのである。サンドラはもう、完全な他人の扱いなのだ。


「ああ、うん。けっこう田舎が気に入って楽しく暮らしているみたいよ」


アデラは目を伏せながら答える。


実際には、彼女からの手紙は愚痴と不満がいっぱいで、「迎えにこい」だの「金を送れ」だのと書いて送られて来ていた。だが、アデラが()()()()のことをチラつかせて返事を書いたら、おとなしくなった。さすがにあれを王子に見られたら、ただでは済まないと分かったらしい。


「それなら良かったですわ」


シンデレラはホッとして笑顔を見せた。すべてを知らされていない彼女は、サンドラが伯爵領で不自由なく暮らしているのだと思っている。アデラはそれで良いと、この先も母親からシンデレラを守る決心をした。そして、長女らしく妹たちを励ます。


「ねえ、私たちは頑張って来たんだもの、必ず幸せになれるわ!」


この言葉どおり、アデラとシンデレラは想い人とともに幸せな人生を送ることになる。バーサが幸せを見つけるまでにはまだ少し時間がかかるが、それはまた別の機会に語られることになりそうだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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