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わたしがイメージしていた情報収集の為の人、それは前世で言う探偵さん。諸経費と成功報酬を支払えば、情報は集まると思っていた。でも、話はそんな簡単なことではなかった。


「リアは侯爵家にいたし、婚約者がやんごとなき立場の人だからそんな風に思ったのかもしれないけど…、そういうことをしている人は表で店を構えたりしていない。みんなどこかの家に雇われて、普段は街の中に紛れている。もしくは本格的な組織の一員かな。だから簡単には雇えない」


わたしの思い付きは世間知らずの侯爵令嬢を露呈するだけだった。仮に、看板を掲げて諜報業をしようがものなら、何かを探る前に、そこで働く人が誰かに消されてしまう。


「でも、リアが本気なら伝手がないこともない」

「それはクライブが危ない目にあう?」

「僕が危ない目というよりは、僕達がとある人の前で己の姿勢を見せる必要が…」

クライブの説明は何かの組織に入る為の忠誠を問われるかのよう。


前世を思い出し、馬鹿げた婚約から逃げようと遠くまで留学にやって来たけれど、話は一筋縄ではいかない。侯爵家や王家はどうでもいいけど、この国の人には迷惑を掛けたくないもの、だから今の状況は知っておいた方がいいに決まっている。


それに、クライブがわたしに危険な話を持ってくるはずはない。そこは信じている。


「とある人の名を聞いたら、もう後戻りは出来ないってこと?」

「残念ながら会うまで名前は告げられない。でも、悪い人ではないよ、そこは信じて。ただね、その人はリアを結構気に入っているんだ、困ったことに」

「ええっと、わたしにはクライブだけ、なのは分かってくれているでしょ?」

「ああ、ごめん、ごめん。そういう意味ではなくて、リアの商売センスに興味を持っている。もしも、女性としてリアに興味を持っているならば、最初からその人のことは話さないよ」


ああ、いつもそう。肝心な言葉を伝え合えないわたし達は、こうして互いが一番傍にいて欲しい相手だと示すしかない。

でも、一番伝えたい言葉を言う為にも、わたしはクライブの伝手に会うことを決めた。そしてその当日、後悔したのだった。



「第三王子殿下におかれましては…」

「いいよ、いいよ、畏まらなくて。クライブの友人のクリスティアンだから、今は」

「ですが」

「クライブへ僕が予てからお願いしていた友人のアイメリア嬢をここに連れてきてもらっただけだよ。君と友達になりたいんだ」

「光栄なことでございます」

「君は友達が出来る度に、そう言っているの『光栄なことでございます』って」


クライブが言った己の姿勢を見せるとは…


「ごめんなさい。そんなことはないわ。クリスティアン、あなたのことは何と呼べばいい?」

「じゃあ、アイメリア嬢は僕と友達になるってことだね。それだったらクリスと呼んでくれ」

「わたしのことはアイメリアと。リアはクライブだけなの」

「分かったよ、アイメリア。ちょっと残念な気がするけど、友達の頼みは聞かないといけないからね」


まさかのクライブの伝手。第三王子が持つ諜報部員だったら素晴らしいに違いない。でも、この場合報酬はどうすればいいのだろう。

不安になってクライブを見遣れば、笑顔が返ってきたのだった。大丈夫と言ってくれているような。

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