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ハルト、犬猫ウェイトレスに仕事を教わる

 食堂にある男女別の更衣室を出て、


「おっ、ミュリエルはウェイトレス姿も似合うね」

「そうかなあ……」


 ミュリエルは紺色の上着とスカートに真っ白なフリル付きのエプロンをまとい、はちみつ色の髪にフリル・カチューヤをつけ、スカートをつまんでクルリと一回りした。


 いい……とてもいい。

 白い道服の魔法使い姿のミュリエルもいいけど、紺色のドレスに真っ白なエプロン姿のミュリエルも可愛い。

 さすがに都会の服のセンスはうなるものがある。


「ハルトくんのウェイター姿もかっこいいの」


「えっ、ぼくはいいよ……」


 ぼくは白いシャツに紺色のチョッキとズボン、ネクタイをつけた。

 こういう服ははじめて着るので、新鮮だけど照れくさい。


「ウェイトスやウェイターの仕事は、お客様をテーブルへ案内して、注文オーダーを取り、料理や飲み物の説明をして、食事の配膳をし、食後のテーブルの後片付けをするのよ」


「はい!!」


「新人だから会計はまだ無理だけど、閉店後にはホールの掃除や、厨房での皿洗いなども手伝ってもらうよ。コミュニケーション能力や、臨機応変な対応力も必要だけど、とにかく体力がいる仕事さ」


 マルデルの涙亭の女将であるビヴァリーさんが料理屋の心得を指導した。


「はい、コミュニケーション能力とか自信がありませんが、体力には自信があります!!」


「コミュ力も体力もまだまだだけど、がんばります!!」


「おうおう、二人ともがんばれよ!!」


「フィヤ!!」


 エリーゼとウィリアムは店の仕事を手伝えないけど、応援してくれている。


「あとはラシュリーとアーシュに教えてもらいな」


「はい!!」


「そう固くならないで、仕事がはじまるまで、気楽にやっていこうよ」


「は、はい!!」


 先輩従業員で、昼に給仕してくれた犬獣人族のラシュリー・ライバーさんが気だるげな声で、優しい言葉をかけてくれる。

 茶色のボブカットの髪で犬耳と尻尾がある。あい変らず無表情で何を考えているか、よく分からないところがあるけど。


「ラシュリーは甘いにゃ!! きみたち、給仕の仕事は甘くないから覚悟するにゃ!!」


「はい!!」


『ふたりとも、返事だけは元気があっていいにゃ」


 もう一人の先輩従業員はウェイトレスのアーシュ・ルグウィンさんという。


 アーシュさんは銀髪の髪に猫耳があり、スカートから長い尻尾が出ている、小柄な猫獣人族の女性だ。

 長身のラシュリーさんより頭ひとつ小さくて、ふたりが並ぶと凸凹コンビに見える。


 こちらは喜怒哀楽が激しく、せっかちで強気な性格に見えるなあ。


「いいかにゃ、ウェイターやウェイトレスは料理のボリュームや、使っている食材を聞かれる事もあるのにゃ。今は新人だから、にゃー達、先輩が代わりに教えるけれど、メニューについて少しずつ覚えるのにゃ」


「はい!!」


「お客の中にはアレルギー持ちの方もいるので、卵は使わないで下さいとか、ネギは使わないで下さいというお客さまもいるから、ちゃんとメモして厨房へ伝えるのにゃ!!」


「はい!!」


「空いているお皿に気付いたら下げたり、お飲み者がなくなっていたら、『何かお飲みになりますか?』と丁寧にお声がけするのにゃ!!」


「はい!!」


「お客さまがフォークやスプーンを落したら、新しい物を用意るのにゃ。それから、それから……」 


 うわあぁぁ……ウェイターの仕事って、けっこうやることが多いんだなあ。ぼくに勤まるかなあ……


「大丈夫だよおぉ……あーしでもできるんだからさぁ。習うより慣れろだよ。大丈夫、ジョブ、ジョブ!!」


 犬獣人のウェイトレスがぼくの肩に手をおいて励ましてくれた。


「ラシュリーさん……そうですよね。がんばります!!」


「ハルトくん、マジエグい!」


「え? マジエグい?」


「その意気込み凄いよ、って意味」


「ああ、なるほど……」


 いや、初めて聞いたよ。

 彼女はときどき不思議な言葉を話すけど、犬獣人族の方言か、ベルヌの若者言葉なのかな?


「ミュリエルたんはきゃぱいから看板娘になれるのよぉ」


 ラシュリーさんがミュリエルの頭をなでた。


「えっ? きゃぱいってどういう意味なの、ラシュリーさん?」


「可愛すぎてキャパ(容量)オーバーって意味なのぉ」


「ええ……そんなぁ……」


 ミュリエルが真っ赤になって恥ずかしがる。

 それも可愛い。

 うんうん、たしかにキャパオーバーな可愛さだ。


「ラシュリーは普通にしゃべるのにゃ!!」


 アーシュさんがプンプンと怒っている。ふだんから二人は、こんな感じで仕事をしているのかな?



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