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【講談】湯屋の桃源郷【二席目】

 えー……、というわけで、平賀源内の一席でございます。


 田沼屋敷で事件が起きたと聞きつけた源内先生、さっそく知人の八兵衛と一緒に屋敷に向かいましたところ、正体不明の人影に襲われ、あわや一命を落としかける窮地に陥りました。


 そこへ現れましたる良いピンク。アンリによって危ないところを助けられ、九死に一生を得ることができまして。


 これにユスタとベルサとマザランも合流し、役者が揃ったのが前回までのお話でございました。


 何故、江戸の世にユスタたちが現れたのか。平賀源内を襲った者の正体とは。


 さあここから物語は奇想天外、波乱万丈、いよいよ面白くなってくるわけでございますが。


 あいやしばらく、謎が解き明かされるその前に、ちょいとばかりのサービス回でございます。


 襲われた源内先生はさすがに田沼屋敷へ参るのを取りやめて、命を救って呉れたユスタたちにお礼がしたいと、自分の屋敷に招くことにいたしました。


 しかし一同、雨に打たれてずぶ濡れになっておりましたので、まず源内先生馴染みの湯屋へと案内したのです。湯屋というのは、つまるところ銭湯でございますな。ここを貸し切りにして、ユスタたちにゆるりと湯浴みしてもらおうと取り計らってくれたわけでございます。


 このお言葉に甘えたユスタたち四人が湯殿に入るところから今回のお話が始まるわけでございますが……。


 「わーい、すっごい広いお風呂だね!」


 かぽーん、とどこからしたやら桶の音。


 一番乗りで入ったベルサが両手を広げて浴場を見渡します。


 「あら、たしかに広いわね。でも私たちの宮殿のお風呂ほどじゃないわ」


 「はい、宮殿のお風呂って、太平洋より広いですからね」


 「どうして太平洋より広い風呂が宮殿の中に入るんだよ」


 口々に喋りながら、ユスタとアンリとマザランも浴場に入って参りました。


 えー、そしてここが肝心なわけですが。


 風呂に入るとなったら、誰しも当然に裸んぼうバンザイなわけでございます。


 すなわち、アンリもマザランも一糸まとわぬ姿で、その抜群のプロポーションを惜しげもなく晒している状態。


 白雪のように美しい肌は湯気でしっとりと潤い、これ以上ないほどに艶を放ち。


 豊満なバストと、キュッと吊り上がったヒップは、歩くごとにプルンと揺れ。


 反面、ウエストや四肢は細く引き締まって、無駄な肉など些少も付いていない。


 二人とも(黙っていれば)最高のスタイルを持つ美人なわけで、両者の裸体が並び立つ様は、まさしく桃源郷のごとき絶景でございました。


 マザランが前屈姿勢になって、高くお尻を掲げた煽情的なポーズで湯加減を確かめます。


 「少しお湯が熱いようですね。江戸っ子好みにしてあるのでしょうか」


 アンリが頭の後ろで手を組んで、重力に逆らうほど張りのあるバストをたゆんと揺らします。


 「ああ、普段は鎧で圧迫されているので、開放感が気持ちいいです」


 どちらも完璧すぎる悩殺ボディで、幻想的とさえ言える美しさでございました。ちなみに大事なところは絶妙に湯気で隠れているのでご安心くださいませ。


 それと一応、ユスタとベルサも裸なのですが、こちらの二人を緻密に描写いたしますのは児ポ的にやべぇ気がしますので、自重させていただきたく存じます。


 ともあれ四人は揃って湯船に浸かり、ほうという溜息と共に旅の疲れを吐き出したのでした。


 「まったく参ったわね……」


 ポツリとユスタがつぶやきました。


 「咄嗟にタイムスリップしたとはいえ、まさか江戸時代に行き着くとは思わなかったわ」


 はてさて、どうしてユスタたちがこの江戸時代に来てしまったのかという理由でございますが。


 これは単純にキトラの人為的過誤、ヒューマンエラー、うっかりミスによるものでございました。


 ニューヨークで衆目から逃れるために、慌ててタイムマシンを起動したキトラは、設定を誤ってまったく違う時代へとタイムスリップしてしまったわけなのでございます。


 そうしてこの江戸時代の日本へと辿り着いたのですが、タイムマシンが現れた場所ってぇのがまた悪かった。


 事もあろうに時の老中、田沼意次の屋敷の上空に出現したタイムマシンは、そのまま落下し屋敷の蔵を圧し潰してしまったのです。田沼意次といえばこの時代に権勢を振るい、幕府の中枢に座したる為政者でございましたから、この屋敷の蔵を破壊するなんざ幕府に対するテロ行為も同然でございます。


 当然、屋敷に詰めていた家来たちは、刀を抜いてユスタたちを取り囲みました。大逆人として縄を打たれれば幸運な方で、ともすりゃその場で斬り捨て御免、あわや胴体真っ二つ、ズボンの中のオナラのように右と左で泣き別れです。


 しかしここで進み出でたるは、天下無敵のサイコピンク、アンリ元帥でございました。己の主君を守るため、自慢の大剣を抜き放ち、天に向かって大上段に振りかぶる、天下無双活殺の構えだ。


 アンリが人類の限界を超越した身体能力で大剣を振り回しますと、神の御業か、天魔の所業か、巨大竜巻が発生し、屋敷の庭を蔵ごと吹き飛ばしちまったってんだから、びっくりしたやの広徳寺、大したもんだよカエルのションベン、見上げたもんだよ屋根屋のフンドシってなもんでございます。


 ところがです。


 アンリのおかげで田沼屋敷の御家来衆を撃退したまでは良かったが、発生した竜巻のせいで、タイムマシンまでどこか遠くへ吹き飛んでしまったんですな。しかも中に乗っていたキトラごと。


 これじゃ未来へ帰れないってんで、ユスタら慌てて田沼屋敷から脱出いたしまして、飛んでったタイムマシンを探して江戸をさまよっておりましたところ、何者かに襲われていた平賀源内に出くわしたと、こういう事情だったのでございました。


 お湯に浸かったユスタは、こうした経緯に思いを馳せつつ、深い溜息を吐きました。


 「早いとこタイムマシンを見つけ出して、未来へ帰らないと」


 「ええ、まったくです。これ以上あなた方に付き合わされては身が持ちません」


 ユスタの言葉に頷きつつ、マザランはばしゃりと湯から上がりました。


 「とはいえ、せっかくよいお風呂をいただいたのですから、その前に体の汚れと疲れを綺麗さっぱり落としてしまいたいところですね」


 マザランは体を洗おうと、浴場の中を見渡しました。しかし洗い場のような所は見当たりません。まあそれも当然でございまして、江戸時代の風呂場に、スポンジやらボディブラシやら、あるいはボディソープなんてものが置いてあるわけがないのでした。


 これにはアンリも困り顔です。


 「これでは私たちも体を洗うことができませんね」


 そこでベルサが閃いたようにポンと手を打ちました。


 「じゃあさ、アンリとマザランがお互いの体をスポンジ代わりにして、洗いっこすればいいんじゃないかな」


 「まぁ、それはいいアイディアですね。さすがはベルサ王です」


 にっこりと笑い、アンリも湯船から上がりました。そしてマザランに近づいていきます。


 「というわけで枢機卿殿、ここは普段のいさかいも忘れて、仲良く洗いっこいたしましょう」


 「嫌に決まってるだろ、気色悪い」


 まぁまぁお気になさらず、なんて言いつつアンリがマザランに詰め寄ります。


 そして自分の肉体をマザランの体にぎゅむっと押し付けました。


 「おい、やめっ……うわっ!」


 バランスを崩したマザランが浴場の床に倒れ込み、その上にアンリがのしかかりました。そのまま体を前後に揺れ動かします。密着した肉体が動くたびに、たわわに実った互いの果実が水風船のようにタプタプと形を歪めました。


 「んっ、んっ、どうですか枢機卿殿。こうすれば綺麗に洗えますよ」


 体を動かすにつれて、だんだんとアンリの息が荒くなっていきます。


 「お、おい、やめろってば……んっ」


 マザランの両脚の間に、アンリがするりと自分の太ももを滑り込ませました。


 「んっ、ほらっ、枢機卿殿、下半身も綺麗に洗わないと」


 「あっ、バカ、そこはっ……!」


 アンリとマザランの長い脚が絡み合い、すべすべの肌が激しく擦り合わされます。押し付け合った胸部の双丘もグニグニと圧し潰されては反発し、上下左右に忙しく揺れ続けています。そうしている内に二人の全身は桜色に染まり、吐息にも熱気が混じり始めました。


 「枢機卿殿ぉ……」


 「くっ……んっ……あっ……」


 地肌に張り付いた湯気が、光の粒のような水滴となって流れ落ちていきます。


 気付けばマザランも背筋を仰け反らせて、揺れるアンリの肉体を迎えるように下側から腰を動かしていました。


 熱い吐息がお互いの顔にかかり、瞳はトロンと潤いを帯び、絡み合う二人の動きはだんだんと激しさを増していきます。


 体の芯から沸き立ってくるような疼きが抑えきれず、夢中で息を荒げながら、アンリとマザランは、ついに。


 …………………………………おっと。


 こんなふうにアンリとマザランが体を洗っている描写を長々とお伝えしたところで、賢明かつ清廉な読者の皆様には、まったく興味のないお話でしたよね。物語の本筋に関係のない文章を書き連ねてしまい、誠に申し訳ございませんでした。


 冒頭ページにも書いてあります通り、この作品は解説小説です。教育的価値が高い内容を知識欲豊富な読者様に提供することで社会的利益に寄与する一助となれば幸いであると考えておりますので、この本懐に従って、その後のアンリとマザランの行為については割愛させていただきます。


 さて閑話休題、一方ユスタとベルサは湯船に浸かったまま会話を続けておりました。


 「それにしても驚いたわ。まさかあの平賀源内に会えるだなんて」


 「さっきのおじさんのこと?」


 「ええ、そうよ。彼こそは日本が誇る、紛う方なき偉人だわ」


 「へー、どんな人だったの?」


 「そうね……それじゃせっかくだから、平賀源内について教えてあげるわ」


 こう切り出して、ユスタは平賀源内の解説を始めたのでした。

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