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社畜が転生したら竜種の王になっていた  作者: 社畜大根
竜王奇譚
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光、満ちて尚道を形取る 君を追って

ぬぅ…敵の技をくらい瀕死…悔しいが助からなそうであるな


お前に出会ったのも修行で重傷を負った時か


「お前…なにやってんだ?」


最初は獣人とすら認識できなかった、それくらい気配を消すことに長けていた


「あー、修行中に崖から落ちて、これじゃ骨何本か逝ってるな」


ただ…妙にうるさい声がすると、ただそれだけだった


「ぬ…ぅ……我…は」


「喋んな喋んな、今血を止めてんだから」


「助かった…のか?」


「いやー、驚いちまったよ、内臓破裂に複雑骨折!私が回復魔術使えなかったら確実に死んでたね」


「感謝しか無いが…見るに其方は獣人、それもかなり高い身分…何故我を助けた…?」


「ここは戦場じゃない、助けたかったから助けた、それだけさ」


「…かたじけない」


「よし、血は止まったな、ここは私の家、体楽になるまで休んでけ」


「其方…名は?我が名はウィエウス」


「あ?私はガルニエってんだ」


「ガルニエ殿、傷が癒えたら礼を言いに来てよろしいか?」


「ん?いいって、気にすんな」


それから我は数日間をガルニエの家で過ごし1月後、感謝を伝えに再び彼女の家を訪ねた


「お、ウィエウスじゃん、すっかり元気そうで何より」


「ガルニエ殿には感謝しかない、我に出来る事があればなんでも言ってくれ」


「いやー…私は良いかな、気にしないで」


「しかし…ぬぅ…?あちらの大剣は?」


「ああ、仕事で使うんだ今はまだ使いこなせないけどいつか役立てたいなって、あまり深くは言えないけど一家の秘宝みたいなもんさ」


「仕事…傭兵であったか」


「ん〜…ちょっと違うな、でも似たようなものさ」


「剣であればある程度教えられる、どうか礼の代わりに其方の指南をさせて頂けぬだろうか…!」


今思えばその頃からガルニエの事を考える時間が多くなったのだろうな


「そう、手首を返して第2の動きへと繋げる、この時重心の移動を忘れるな」


王城で兵を鍛えている時も


「王城警備の騎士…あれよりはガルニエの方がうまいな」


などと考えていたのが懐かしい


その年の夏、ある事件が起きた


古竜の大群が一挙に王城に押し寄せたのだ


王竜陛下不在の際のの襲撃、これに竜域内は大いに乱れた、多くの者が死に、墓標を増やした


その古竜の親玉を倒したのが…そう、ガルニエ


夜の暗い夕闇の中に古竜の血を浴びて佇むガルニエ、我は思った


   

     あぁ、なんと美しいのだろう



その後ガルニエは敵性種族たる獣人ではとして初めて役職が与えられた


王直属で暗部の仕事を請け負う部隊、通称「竜の牙」その隊長としての抜擢


「ガルニエ…まさか其方が竜の牙に入るとは…」


「暗殺とかそう言う仕事だろ?やることは、そう言う仕事なら慣れてるさ」


「ぬぅ…あまり心配をだな」


「ん?心配?なんのこっちゃ」


「…なんでも無い、気にするな」


この頃から我は惚れていたのだろう、自らが得るはじめての感情を理解できずにただ迷走していた


暫くはそのような日々が続いたが迷走する時間は意外にも早く終わった


「ガルニエ、その…我はどうやら貴様の事が、好きらしい」


「…へ?」


「いや…その…告白するにも…良い言葉が見つからぬ故ありのままを伝えてみたのだが…」


「ドストレードすぎだ!もうちょっとこう…ロマンチックに出来ないもんかね」


「ぬぅ…すまぬ」


「まぁ…その…私も…アンタの事がだな、」


「…ぬ?」


「だぁああああ!!察しの悪い奴だな!アンタの告白に応えてやろうっつってんだよ!!」


「あ…………その…」


「よ、よろしくな」


「こ、こちらこそ、よろしく頼む」


ぎこちない形であるが一歩を踏み出す事が出来た、


それから互いにぎこちないながらも愛を伝え合い、育み合い、結晶を生み出した


「ガルニエ、元気な双子だ、ぬぅ…見た目は完全に獣人であるな」


「そんな不安がるなって、見た目は獣人でもちゃんと竜の血も入ってるって」


「あまり喋るな、今はまだ体調が安定し切っていない」


「だな……あ、と、名前付けなきゃな…」


「名前…ぬぅ…我とした事が失念していた」


「お前らしい…な、私が考えてたのは、丁度、2つ」


「ふむ…教えてくれぬか?」


「男の子が、リーデル、女の子が…セレ、ス……」


「ガルニエ!おい、おい!!」


「スピー」


「疲れ果てて寝落ち…大丈夫無くて良かった……」


古竜の襲撃から幾年、ガルニエの暗殺の仕事も、戦も無く、我々は久方ぶりに享受する平和に溺れていた


「パーパー!」


「こ、こらリーデル!角を掴むんじゃない!」


「パーパー!!」


「はっははははは!!!あんた本当にリーデルに好かれてるね」


「ぬぅ…セレスもこっちへ来ぬか」


「ま…ま…」


「だーめ!!セレスは私の所にいるのー。ね、セレス」


「きゃっきゃ♪」


「ぬぅ…」


「ん…?玄関の前に誰か居るみたい、セレスー、お父さんに遊んでもらってすぐ戻るから」


「ふえ……」


「セ、セレス、いないいない〜、ばぁー!」


「びええええええええ!!」


「!?」


〜〜〜


「………」


「なるほどね、分かった、陛下に宜しく伝えて置いてくれ」


「はい、ガルニエ様…」


「ん?なんだい?」


「いえ…すみません、お気をつけて」


「あぁ、ありがとうね」


「ガルニエ、どうした?」


「…数年ぶりにね、仕事」


「我の手下の選りすぐりを貸そう、それとも我がー」


「こら!」


「ぬぅ…?」


「あんたが居なくなったらこの子達の世話は誰がやる気だ?それに、数年経つとはいえ一日たりとも修行を欠かせた事はない」


「…ガルニエがそこまで言うならそれで良いだろう……無事に、帰ってこい」


「…おう!」


ガルニエは自分の運命を察していたのか敢えて敵の名前を会話に出さなかった、又それを感じ取った我もそれを聞かなかった


次の日、ガルニエは子供達を我に託し旅に出てしまった、先代王竜陛下から発せられた命令、それを聞いて我は目の前は暗くなった


「我が君……今の話は…!!」


「本当だよ?ブラットスフィアのネクトを暗殺に向かわせた」


「何故…何故ですか!!ネクトは稀に見る使い手!その実力はわかっておいででしょう…!!」


「ガルニエならば出来ると信じているんだよ」


「なれば私も向かいます、宜しいですか!?」


「もう遅いよ、既に王都に入ったと報告があった、それに他の「竜の牙」のメンバーも居る、心配事は無いさ」


「ぬ…ぅ………」


それから一週間後、王城に知らせが入った


ボロボロの身なりで「竜の牙」の一人が謁見の間に入ってきた、ガルニエと共に暗殺に向かった者だ


「陛下、陛下!!」


「あぁ…君か、で、ネクトの首は持ってこれたかい?」


「そ、それが……」


「ん?」


「「竜の牙」総勢59名、私を除き全滅、ガルニエ様も他の者と共に…敵地王城「魔導書書館」にて壮絶なる最後を…ガルニエ様の所持していた天磐船も奪われ遁走、完全なる敗北です……」


謁見の間から出た生き残りを捕まえてひどく問い詰めた


「どう言う事だ!!ガルニエが戦死だと!?」


「……」


「何か言ったらどうなんだ!!」


「……」


「ウィエウス様に…ガルニエ様からの言伝があります」


「…?」


「すまない、と」


その言葉、それだけで感じ取れた、死に征く獣の思う様を、


「最後は…ガルニエの最後は…どうだった…?」


「ネクトの放った魔法を相殺する為に…許容限界を超えてスキルを使用、魔素が尽きてからは猛烈なる剣技で闘われましたが…最後は体力の尽きた所をネクトの召喚した魔獣、ケルベロスに…」


「なんと…あぁあぁあ…ぁあぁぁぁぁぁぁああぁあぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


とてつもない虚無と絶望が我を襲う


「シリウス、この子達を預かってくれ」


「いいけど…お前はどうするんだよ」


「剣技を…弱さを捨てる…」


何かないか、ガルニエを取り戻す手立ては無いものか日がな1日探し回った


「時を逆巻く魔術…ガルニエを…あの時から呼び寄せる…事が出来れば…」


「ホムンクルスの応用…家に残ったガルニエの魂の残滓を封じ込めガルニエを…」


何回も失敗し、辿り着いた答えが


「反魂の魔術、直球的だが…魔導を極めれば……或いは」


そうして何年も反魂の魔術を研究し、剣技を捨てた、いつしかそれはある一つの目標へと変わる



           ネクトを………殺す


反魂の魔術でのガルニエの復活も失敗し、万策を尽かせ目標を捨てた我はそれだけを目標に魔導を求めた


だがそれも圧倒的な力を前に挫折…なんとも情けない


朦朧とする眼に映るのは戦う我が子、その面影はどこかガルニエを感じさせる物がある


すまない、息子よ…ガルニエよ…セレスは魔獣に襲われ早いうちに亡くし、お前までも……


寒い…もう、眠、い、ガルニエよ…死ねば…お前に、逢える、のか…?


         何寝てるんだい?息子を殺す気?


…幻覚か………ガルニエよ…我はもう疲れた…其方の元に、行きたい


         ふん!息子を見殺しにして来た旦那は御免だね、


…あんまりだ、ガルニエ


         なら、彼処のコウモリ張り倒して、寿命で来な


だが…見よ、我が胸には穴が空いている、もう長く無い


         何言ってるんだい、穴なんて…空いてないだろう


「どうした獣人!!反撃はしてくれぬのか?貴様と同じ獣人でも…何と言ったか、そう、ガルニエとか言う犬は強かった、持っていた大剣も大した者だが実力もあった、実に残念極まりない、我が配下とする価値もない、王都内にいた我が配下は卑劣なる銀の霧で死滅したが又増やせばいい  ガハ!?」


「ガルニエが犬…?何をほざくかコウモリが…」


「貴様ぁ…!!瀕死と見せかけ我が隙を突くとは…!!だが…、反魂の魔術では私に勝つ事は出来ぬぞ!!」


「そう、反魂の魔術では無理だ…だが…剣技で殺す…!!」


ウィエウスが立ち上がる、だが剣をその手には持っていない


「馬鹿も休み休み言え!貴様の手に剣は無い!!痛みで気が狂ったか…!!」


ウィエウスが右腕を突き出す、目を瞑り何かを求めるそれは


             遅いよ、今頃来たのかよ


「あぁ…随分と遅れてしまった…ガルニエよ」


ウィエウスが光に包まれる、光の奔流が流れ込み、ウィエウスの右手に何かを形作る


剣、光は大剣の形を表し、具現化する


「その剣…あの犬の持っていた物…!憎憎しい…、我が相棒たるケルベロスを内から葬り去り我が魔素を半分消費してやっと粉砕した大剣…!!」


大剣を構えると虚空に向けて素早く突きの一撃を繰り出す


「断光!!」


「貴様の剣技など…!ステラミストフォール!!!」


「この大剣の特性まで忘れたか、愚かな」


「がぁぁあ!?」


「距離無効の斬撃を直接魂へと叩き込む…実態を持たない貴様には天敵だ」


「まだだぁ…まだだまだだ!!グリモワール!!!ロードオブネクロノミコン!!!亡者よ、我が前に立ち敵を葬り去ー」


「ガイアビースト!!!」


「あぁ!?」


「死霊は俺の敵じゃねぇ、亡者使って俺を殺そうとするなら、最低ドラゴンゾンビ持ってこいよ…!


「ならば先に貴様を…!?」


「鱗光!!」


薙ぎ払いの一撃によって魔導書を掴むネクトの手が捥ぎ取られる


「ひぃいぁぁああああぁっぁぁあああ!?!?」


「その生に、終わりを…!!」


「おい、やめろ…!!待て、そうだ、竜域と同盟をー」


「この一太刀、ガルニエに捧ぐ…」


大剣が振り下ろされるとネクトの首が宙を舞う、数俊、何かを探すようにその目が泳ぐがすぐに濁る


「ガルニエ………ガルニエ!!勝ったぞ、其方の仇、このウィエウスが…取ったぞ…!!!!、我は…其方を……」



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