再建
「えーっとですね、今日はね、えー、竜域が新たな出発点を迎えた、えー、非常に、えー、記念すべき日でして、えー」
(我が君!緊張し過ぎです!!)
「このような、えー、記念すべき日に、えー、国賓の皆様をお招きする事が出来、えー、非常に、えー、感無量で、えー、あります、」
(深呼吸深呼吸!!)
「誠にささやかでは、えー、ありますが、お食事を、えー、御用意いたしました、是非、竜域の味を、えー、ご賞味、下さればと、えー、思います」
晴れた春の日、竜域復興を記念して同盟国であるヘンゼルやクリフシェルから国賓が招かれた、新しく生まれ変わった竜域の市街は上下水道を完備し、クリルの人間時代の知識を元に作られた水道まで作られていた、そこ彼処から清水が湧き出るその様はさながら楽園のようにも見える
「なんと…!このジャグチとか言う部分をひねれば水が…!!」
「エンリコ様、これは…!!」
「ああ、この技術は金になるぞ!!」
「見よレシア!!水のアーチだ!!」
「はい!竜域の技術力の高さが現れてますね…!」
各々自分たちの世界に篭り思索を巡らせる
見た目だけじゃなくて衛生面にも拘ってるんだけど…ぱっと見でわかる奴は居ないか
「皆様、昼食の御用意が整ったみたいです、どうぞ大宴会場へ」
クリルの側に控えたヴェンデルがそう告げると大宴会場へと続くドアが開く、豪奢に飾り付けられた門は重々しい雰囲気を醸し出しながら開く
「「おぉお……」」
一同が声を失った、そこに並べられていたのはクリルの人間時代の記憶を頼りに作られた料理たちである
「席は人数分用意して御座います、お名前の書かれた札のある場所へ着席下さい」
「エンリコ様…これは…」
「魚の生の切り身であるな…これを調理すると言うことか…?」
「こっちのは卵を溶いたものを小振りの容器に入れ蒸しあげた物でしょうか…プディングの様ですね」」
「ふむ…気になるな」
そこへ主催のクリルが到着する
「遠路遥々お越し頂いたという事で先ずは腹拵えから参りたいと思います、そちらにご用意した物は竜域の料理です、手元の紙にお品書きが書かれてあります、」
竜域の料理というのは真っ赤な嘘だけど…まぁいいか、
「これは…サシミと言うのか…このショウユ?とやらに付けて食すのか」
「ど、どうぞエンリコ様、お早いうちに」
「い、いやポールこそどうだ?ご厚意に与ろうじゃないか」
「いえいえ、主人を置いては無理でございますよ」
「そんなこと言うな、私と其方の間では無いか!、というわけで…な、」
「ん?どうかしたか?」
「い、いえクリル殿、なんでも…」
「あー…刺身初めてかー、まぁそうだろうな、安心しろー食える物しか出してない」
「ほ…」
「エンリコ様?」
「これポール…これは減俸ですかな…?」
「そんなぁ!」
〜〜〜
「ふむ…このサシミとやらも中々イケる物だな」
「ほむ、ほむほむ!へいふぁ!ほいひいれふよ!」
「レシア…そのチャワンムシ?が美味な事は分かったがもう少し慎みをだな…」
「失礼しましたー!」
〜〜〜厨房にて〜〜〜
「うん、みんなそれなりに楽しんでくれてるようで良かったよ」
「はい、陛下の仰せの料理をお出しして正解でしたね」
「だって…なぁ、アレは出せないだろ?」
そういうとクリルは厨房に置いてある大皿を指さした
「はい…流石に無いです」
大皿に乗っけられた大量の鶏肉や白身魚のフリットがある、こんもりと積まれたソレはクリルの背丈を超える
「こんな物出したら笑い者ですからね」
「ウルズに任せようとした私がバカだった」
「ウルズったら「酒の摘まみに丁度いいのよー!」なんて」
「みんながみんなあいつみたいに酒呑みじゃないんだっての」
「しかし…これどうしますか?」
「王宮の中で消費するしか無いだろ、無駄にも出来ないし」
「しかし全員でかかっても余りそうですね」
「無駄に量作らせやがって…」
〜〜〜
「さて皆様、御昼食はお気に召されましたでしょうか?」
「クリル殿…クリル殿の後ろですまきで吊るされている女性は…?」
「ああ…気にしないでください、彼女にとってはご褒美みたいなものですから」