宣戦布告
「クリル殿…ここは?」
「今我々が皆様をお連れしている場所は墓所…竜域の祖霊が眠る場所」
「ふむ…我々をこの広大な墓所に呼び出して何を?まさか墓参りか?」
「そんなことはない、この8000の墓標、ここにあるのは竜域の墓のごく一部」
「それが何になると?」
「そうですね…では分かりやすく参りましょう、ウィエウス!!」
「ここに…我が君」
「君の魔術を見せて差しあげろ」
「御意」
「皆様には少し刺激が強いかもしれませんが…少々見せたい物が」
「では、始めさせて頂きます」
そういうとウィエウスは最も近い墓標に近付き座り込む
「地ニ封ジラレシ竜域ノ祖霊ヨ、御霊ヲ呼ビ、再ビ地ヲアユメ」
「この詠唱…まさか…」
「レシアはこの魔術がわかるのか?」
「恐れながら申し上げます、この魔術は…」
「リボーンアンデット!!」
「反魂の魔術…それもとびきり高位の…」
レシアがそう言うと同時に目の前にある墓所が次々と盛り上がる
息を呑む一同を横目にクリルは
「おー、凄いなー、私が死んだらウィエウスに頼もうかな〜」
などと呑気に話している
墓所からは肉付きの無い骨だけの手が突き出したと思うと続いて頭、胴体、足、と竜の骨が立ち上がる
立ち上がった骨はそれぞれがクリルの前に歩み寄りその前に来ると跪く
「楽にしていいぞ、復活おめでとう、君達には仕事を与えるつもりだ」
声帯が無いのか声は出ないが骨をカラカラと鳴らし呼応する
「さて…皆様が気になってらっしゃるであろう同盟への対応はこうです」
「戦か……だが8000の軍では…」
「これより5倍大きい墓地が1000以上ある」
「な!?」
「今までこの国で死んだ総数だからな、高位竜を含めるともっと上がるぞ」
「か、数があるのはわかった、だが実力はどうだ?最底辺の魔物のスケルトンと同じ程度では数を揃えても難しいぞ」
「ではこうしましょう、続いて闘技場にお連れしましょう、ドラゴンゾンビ、3体ほど付いて来い」
〜〜〜
「ここは…確かに闘技場ではあるな」
「エンリコ様…私こう言う場所は些か初めてなのですが…」
「我々の都市にもないからな…そちらのヘンゼルの国王陛下は慣れているのかもしれないが…」
「竜域が人種と交流するようになれば大きな目玉になるであろう場所です」
「で、先程のドラゴンゾンビ3体で何を倒させるのだ?」
「ふふ…では呼びましょうか、ヴェンデル!」
「は、」
檻が開き剣を持ったドラゴンゾンビ3体が歩み出てくる、対して反対側の檻からは獰猛な鳴き声が響く
「グゥゥゥゥウオォォォオォオオオオ!!」
漆黒の鱗を持つ巨大な黒竜、クリル4体分の身長を持つ三つ首の竜は闇の瘴気を漂わせながらドラゴンゾンビを一瞥する
「ヒュドラ!?国一つの軍隊を滅ぼしかねない存在…よく捕獲できましたな」
「有能な部下がいるお陰です」
有能な部下…!?ヒュドラを生捕りに出来るレベルの猛者がいるのか!?
「私が手を出すと一瞬でミンチですので」
な…!?ヒュドラをミンチだと!?炎エンチャットを付与した武器で受けた傷意外どんな傷も瞬時に再生するヒュドラをミンチ!?
「さて、では始めさせましょう、ヴェンデル!」
「御意…では僭越ながら私が開始の合図を取らせて頂きます」
このウラニシス…一人の人間として…いや、一塊の武人として…ドラゴンゾンビとやらの戦いが気になる…血が…騒ぐ!
ヴェルデルが右手を高く挙げ、息を大きく吸い込む
その手を下げる動作とともに
「始め!!」
ヴェンデルの一喝と共に武器を手にしたドラゴンゾンビがヒュドラに襲いかかる
剣を持った一体が真ん中の首に斬りかかる、左の首がその顎を大きく開け食らいつこうとするが
「グゥゥゥゥウ……」
噛み付いた瞬間に霧散し、右の首の前に再び姿を現した、霧散する前と違う点は色が暗くなっている点だ
その背後から槍を携えた2体のドラゴンゾンビが襲いかかるが左右の首に阻まれて霧散し、やはり再び色を暗くして再発生する
今度は3体が息を合わせたように連携を取り右の首を攻撃する、鱗を剥ぎ取るがすぐに再生し、今度は猛毒のブレスで攻撃される…が
「ブレスが効いていない!?」
「そりゃあそうでしょう、死んだ体に効く毒なんてあってたまりますか」
まるで効いていない様子で攻撃を続行する
そうすると今度は大きくからのを回転させ尻尾でドラゴンゾンビを払い除ける
すると又霧散し、やはり今度も色を暗くして復活する、そのように死んで復活を6度繰り返す頃にはすでに骨の色は白から黒曜石のような漆黒に変わっていた
「………」
剣を持った1体が立ち止まり、声の出せない体で詠唱を開始する
体を濃い瘴気で包みながら紡がれる詠唱、体を包むその瘴気は次第に濃くなりやがて1つの形を持つ、それは
「ヒュドラ!?ドラゴンゾンビがヒュドラを真似ただと!!」
「ほかの2体もすぐ変身しますよ、ほら、詠唱を開始しました」
「なんと…3体のヒュドラが…」
「ええ、しかしドラゴンゾンビのヒュドラは骨ですけどね、でも実力は…」
3体のヒュドラゾンビがヒュドラに襲いかかる、ヒュドラは必死に猛毒を吐き、食らいついて抵抗するが3対1の構図は長く続かず1体のヒュドラゾンビに真ん中の首が粉砕されると同時にヒュドラが事尽きる
「な、何故」
「なんでヒュドラが噛みつきで死んだか、それは簡単、ヒュドラゾンビはその牙から対象の生命力そのものを吸い取る…その量は膨大、人間なら1秒と持たないでしょう、もちろんそれだけでなくヒュドラゾンビも毒を吐くことが出来ます」
「陛下…これは…」
同盟を結んでおいて正解だったな…こんな軍勢が10万以上、我が国は一晩と持つまい
「エンリコ様…私は一体何を見たのでしょうか…」
「報復戦の…絶対的勝利だ」
「さて皆様、我々の方針をご確認頂けたでしょうか、では皆様のご意見をお聞きしたい」
「意見…?」
「これを用いて敵軍を壊滅させる、我々の考えです、皆様と竜域は同盟関係にある、進軍によって不利益が生じることは避けたい、肯定か…否定か」
「ふむ……私は肯定ですな、この戦に勝利できれば堂々と我が商業都市を拡大する事も可能、是非協力させてください」
「私は…構わないと思う、このまま戦線を膠着状態に留めておけば遅かれ早かれ戦は動くだろう、幸いにしてこちらには報復という大義名分がある、勝ちを収めるには精鋭の聖騎士が壊滅し、動揺している今が一番だ」
「お二方共、よく決心頂けました、では…明くる日、宣戦布告と参りましょう」
「今日は記念すべき日ですな、」
「いやはや、全くだ…これもクリル殿あっての事」
「ははは、お二方の決心のお陰ですよ」
「はははは」
「ははっはははは」
「はっはっはっはっはっは!!」
ーーーーーーーーーーーー宣戦布告ーーーーーーーーーーーーー
親愛なる同盟軍総司令部殿
同盟軍側の卑劣且つ姑息な手段にて汚されし竜域が領土、民、これらの意を汲み、本来行使を躊躇われる武力により報復戦争を発動する事をここに宣言する、すでに貴国等が認知しているように貴国等同盟軍総司令部旗下主力聖騎士侵攻大隊は壊滅している事を踏まえ、慎重に判断し、争い塵芥と帰す道を選ぶか、隷属し繁栄する道を選ぶかを慎重に判断されたし、我々は歯向かい、刃を向ける者の首を刈る事に躊躇いは無い
第13287代目竜域国王 竜王 アジ・ダ・ハーカ
親愛なる友好国竜域が受けた侵攻、御霊を鎮め、荒らされた領土、友好国国民の安寧を得るが為に、竜域の未来、尊厳、引いては竜種と言う種の尊厳を保持するが為に竜域国王、アジ・ダ・ハーカ殿の発動せし報復戦の支援を行う事をここに宣言する、
ヘンゼル王国 国王 ウラニシス・エーゼリス・ヘンゼル
上記ヘンゼル国国王 ウラニシス・エーゼリス・ヘンゼル殿と共に、竜域が発動せし報復戦を認め、物資により行い得る最大限の支援を惜しまない事を宣言する
クリフシェリ自治商業都市 総長 エンリコ・ブーゲンリヒト
侵攻を北方隣国レーベリス王国首都、西方隣国クルシア聖侯国首都、東方隣国オリシアス王国首都から始め、明後日より聖戦を開始する、返答のない場合日程に則り圧倒的蹂躙を開始する




