第49話 母さま頑張れ!!ブリュートに負けるな!!
自己紹介の後。母さまはルヴィア達と談笑、俺は下級精霊達と遊んでいた。
ふと気づくと、日はすっかり傾き綺麗な夕焼け空が広がっていた。
「あら、いけない。もう帰らないとね。ブリュートが帰って来たら怒られちゃう」
「ブリュート?だぁれ、その人」
「一緒に住んでいる世話係兼メイドよ。怒ると怖いのよねぇ」
「へぇ、そうなの〜」
「というわけで帰るわよ、セイガ」
「うん。バイバイ、せいれーさんたち」
俺が手を振ると、精霊達が手を振り返してくれた。
可愛い……。
「セイくん。もう帰るの?」
川の方へと行っていたロティアとシアンがそう訪ねてくる。
「うん。じゃないとメイドがこわいからね」
「帰るならアタシが送ろうか?」
「いいの!?」
「ああ、構わない。元からそのつもりだったしな」
やったね!シアンの風に乗るのは、楽だし楽しいし、面白いからね!!
「かかさま、シアンが送ってくれるって!風で!」
「まあ、風で?面白そうね!!頼めるかしら?」
「もちろんだ。じゃあいくぞ」
シアンがそう口に出した途端、体がフワッと浮いて、スーッと俺らを風が運んでくれる。
やっぱりこれ面白い!!
「何これ!!楽しいわね!!」
「でしょ?」
二人でキャイキャイとはしゃぎながらしばらく行くと、木の間から我が家が見えてきた。
「あ、もういえが……」
「……ほんとね」
もう家に着くのかと思うと、一気にテンションが下がってしまった。
「……ブリュートがいないことを願いましょう。……ジェシカはいていいけど…」
「うん」
扉はもう、三歳児の俺でも手を伸ばせば触れられる距離にある。
ゴクリッ
「……いくよ」
「ええ」
カチャッ
ゆっくりと静かに扉を開ける。
……いない。良かった……。
ほっと二人で胸をなでおろすと
「セイガ様、それにナイア様、何をしていらっしゃるのです?」
ビクッ
背後から突然声をかけられたので、反射的にバッと振り向く。
そこには端正な顔に笑顔を浮かばせたブリュートがいた。そしてその笑顔は、今まで見てきたなかで最高の笑顔だった。
それは他の人から見れば、普段冷たい雰囲気をまとっている超美人な人が、それはもうふんわりほわほわと笑っている。どんな身分や罪を背負った何者でも、すべてを包みこむような優しい、聖女が慈愛の女神の微笑みに見えただろう。
だが、ブリュートの性格を知っている人たちにはわかる。このような慈愛の笑顔をとても危ないということを。
何より今回は、今までのなかでも特に完璧、PERFECTな笑顔だった。
この笑顔に、俺と母さまは自然と抱き合い、ガクブルと震えた。
「それで?何をなさっていたのです?」
「え、えっと、えー……きのこ狩りに……」
母さま頑張れ!!俺は怖くて口を開けない!!
「何をなさっていたのですか?」
「だ、だからきのこ……」
頑張れ、押し切るんだ母さま!!
「な に を なさっていたのですか?」
「ごめんなさい!精霊の王さまに会いに行っていました!!」
母さまがブリュートのあまりの怖さにヤケクソになった!?
「……精霊の王様?精霊王に会ったのですか!?」
あれ?何故かブリュートのテンションが上がった。同時に機嫌も良くなったからいいけど……。
「え?ええ。精霊ちゃん達とセイガが案内してくれたの」
母さま、何を口を滑らせちゃってんの!?
「セイガ様が?」
ほら、食いついてきたじゃないか!
「え、えっとね。前に山菜採りしたことがあったでしょ?」
「はい。その時、確かセイガ様がはぐれて……まさかこの時に会ったんですか!?」
俺は曖昧に笑う。
「なるほど、あのときでしたか」
上手い感じに誤解してくれたようだ。
ちなみに、さっきのセリフを細かく細かく言うとしたら「前(=誕生日の夜)に山菜(ときのこ、薬草)採りしたことがあったでしょ?」という文になる。そしてもちろん、その時ブリュートはいなかった。
「あ、あの……」
ブ、ブリュートがモジモジしている!?な、何かあるのか!?
「よかったら精霊王に会わせていただけませんか?」
「え、なぁんだ。そんなことでいいならいつでもいいよ?」
「本当ですか!?」
ガチャッ
「ただいま戻りました、セイガ様、ナイア様。……何をしているの、ブリュート。身を乗り出して」
ジェシカが帰ってきた。
「おかえりジェシカ。あ、そうだ、ジェシカ」
「はい、なんですか?」
「よかったらジェシカもいく?せいれいおうのところ」
と、いう訳で、はい。四人で行くことになりました。




