エピローグその2 冒険者の食卓
作者_(:3 」∠)_「昨日はなんか頭が痛かったけど今日はスッキリ!原稿も書けた!」
ヘルニーヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「初めて花粉症の薬を飲んだから……か?」
ヘイフィー└(┐Lε:)┘「あっ、二度転生13巻発売まであと4日ですよー」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「不味いんだよなぁコレ」
と、冒険前の準備をしていたジャイロ君が携帯食の入った袋をつついて溜息を吐いていた。
「携帯食なんだから不味いのは当然でしょ。バカ言ってないでさっさと準備しなさい」
「へーい」
ミナさんにせっ突かれて魔法の袋に携帯食を放り込むジャイロ君。
「確か今の携帯食って腹持ちの良さと日持ちだけを重視して安くしてあるんだっけ」
一度食べたことあるけど、今の携帯食って前世のものと比べても味を切り捨ててるんだよね。
その分値段はかなり安くなってるんだけど。
確か銅貨5枚で3日分の量なんだけど、一度の冒険で全部食べ切る人は少ないらしいんだよね。
「そうですね。一応乾燥した果物を混ぜた品もありますけど焼け石に水ですし、その割には値段が高いです。新人冒険者は味にこだわる余裕もありませんし、それなら狩った魔物の肉を焼いて食べた方が遥かにマシですね」
と、ノルブさんが携帯食よりも塩を持ち込んで魔物を食べた方が美味しいと言って肩を竦める。質素を良しとする司祭のノルブさんでもそう言うくらいなんだから相当だよね。
でも分かる。下手な携帯食よりも新鮮な魔物肉の方が美味しいよね。ただし、都合よく食用の魔物が狩れればだけど。
「そういえば前世で知り合いの料理人が美味しくて栄養のある携帯食を作るって張り切ってたなぁ」
ふと、携帯食の話題で前世の事を思い出す。
ふふ、こういう悩みっていつの時代も同じなんだよね。
「あの件は僕もポーション開発の観点から協力してたっけ」
あれの試作品結構おいしかったんだよね。
「ただ、何でか売り物にならないって頓挫したんだよね。材料も厳選して価格も大分抑えられてたのになぁ」
何がいけなかったんだろう?
「久しぶりに作ってみるかな」
開発に協力していた事もあって、ざっくりとしたレシピは僕も教わっていた。
微調整は必要だけどそれっぽいものを作るならそう難しい事もないだろう。
「よし、ちょっと材料を集めてこようかな」
◆
「という訳でちょっと試食に協力してくれませんか?」
「「「「携帯食のぉーーーーー?」」」」
さっそく作った携帯食を冒険者ギルドに持って行ったら皆からうんざりした顔をされてしまった。
「携帯食を美味くねぇ」
胡散臭そうな目で携帯食をつつく先輩冒険者さん。
「こういうのちょくちょく出るんだよな。美味いのを出せば売上げを独占できるってよ」
「けど大抵は高くなりすぎたり、味をクリアしても日持ちを考えて調整したら結局台無しになったりするんだよな」
「そうそう、こんなに高いならもう普通の飯でいいだろってな」
「携帯食にそんな金かけるなら我慢して金貯めてもっと良い装備買うって―の」
大体予想通りのセリフが冒険者達から漏れ出る。
うんうん、前世でも同じ意見だったから分かるよ。
「まぁ試しに食べてみてください。味は保証しますから」
「まぁ大物喰らいが言うんだから不味くは無いんだろうが、って美味ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
渋々携帯食を受け取った先輩冒険者さんだったけど、口にした途端興奮気味に声を上げた。
「マジかよ」
「美味いぞコレマジで!」
「へぇ、俺にも一つくれ」
味の保証がされた事で冒険者さん達が自分も食べたいと集まってくる。
「どうぞ、沢山ありますから」
「うぉぉぉぉっ! 美味ぇ!! 何だこりゃ!」
「スゲェ! 下手な店の料理よりも美味ぇぞ!」
うん、味は好評みたいだね。
「うぉぉぉぉっ!? 何だ!? 依頼で魔物から受けた傷が治った!? かすり傷だからって回復せずにいたのに!?」
と、試食に参加していた冒険者さんの一人が傷を負っていた箇所を見て驚きの声をあげる。
「ポーションの回復効果もあるので多少の傷なら治りますよ」
「マジで!? 他にも何か効果があるのか!?」
「冒険に必要な各種栄養とポーションの効能として傷、魔力、体力の回復効果も付与してあります。保存食なのでそこまで大した回復効果はありませんが」
「どのくらい日持ちするんだ!?」
「おおよそ10日ですね。専用の保存容器に入れたポーションと違うので回復効果が日持ちしないんですよ」
「10日なら携帯食としちゃ十分過ぎるな」
「あっ、回復効果が切れても食料としては一ヶ月は持ちます。栄養も同様に」
「この味で一ヶ月!? 破格過ぎだろ!!」
うん、コストを考えるとその程度しか持たせられなかったんだよね。破格の短さと言われるのもしかたない。
「とはいえ、流石にこれだけの品だと値段がなぁ。幾らなんだ?」
ああ、やっぱり皆そこが一番不安になるよね。
「そうですね、頑張ったんですが銀貨1枚はかかります」
「「「「銀貨一枚!?」」」」
あまりの高さに皆が驚きの声をあげる。
だよね。でも仕方ないんだ。この辺りは前世の様に生産工場が無いから衛生面を確保しながら大量生産が出来ないんだよ。だからどうしても手作りで高くなっちゃうんだよね。
ドラゴニアにあった要塞の遺跡を改築すればもうちょっと安くできそうだけど……
「レクスさん、その携帯食是非売ってください!!」
やっぱりダメかなと思っていたらギルドの職員さんが割って入ってきた。
「ええ!? これを!?」
「はい! この携帯食は売れます! 味と栄養が良い事も大変よいですが、なにより回復効果があるのが素晴らしい!」」
ああ、回復効果を見込んで売れると思ったのか。
「でも大して売れないと思いますよ。それなら同じ値段でポーションを買った方が……」
「いや是非売ってくれ! 買うから!」
回復量が段違いと言おうとしたんだけど、冒険者さん達がそれでも買いたいと言い出した。
「ああ、美味い上に回復効果があるのが最高だ!」
「だよな! 美味いし回復できるなんて言う事なしだぜ!」
「俺も買うぞ!」
「俺も!」
「聞きましたか? ポーションや回復魔法が切れた時の事を考えればいざという時の備えになります! 是非販売をお願いします!」
「「「「そうだそうだ!!」」」」
思った以上に購入希望が多くてびっくりする。
「ええ!? でも髙いですよ!? 一食で携帯六食分ですよ!?」
「「「「構わん!」」」」
そうか、皆そんなに回復効果を重視しているんだね。
ほんのわずかでもいざという時の備えをしておく。それが冒険者として生き抜く為の秘訣って訳だ。
流石熟練の冒険者達だね。
もしかしたらだけど、前世の知り合いは売り出す為のプレゼンテーションをミスっちゃったのかも。
冒険者達の需要を読み違えて一番重要な部分の宣伝をあっさり終わらせて味ばかりを宣伝しちゃったんじゃないかな。
「あーでも一つ問題が」
「「「「何が問題なんだ!?」」」」
「その、僕だけで作るには手が足りないので……」
「ならレシピを公開して町に工房を作ってはどうですか? それを冒険者ギルドが買い取り代理で販売しますので!」
「工房!? 僕が!?」
ええ!? 僕が自分の店を持つって事!?
「レクスさんはギルドの口座にもかなりのお金を貯めていますし、今のうちに予算を投入していずれ冒険者を引退した時の事を考えて収入源を作っておくのをお勧めしますよ。成功された冒険者の方は引退後の商売でもうまくやっています。レクスさんの携帯食は味も効能も素晴らしいです。これなら間違いなくロングセラーになります!」
ああ成る程、経済の流通を考えて僕にお金を使わせたいんだな。
これは前世や前々世でも結構言われたなぁ。もっとお金を使わないと経済が停滞するって。
冒険者ギルドの職員もちゃっかりしているなぁ。
「でも工房を作るにしても伝手がありませんし」
「それはギルドが集めます! 怪我が原因で引退した元冒険者や旦那さんが亡くなった冒険者の奥さん、それに魔物や盗賊に家族を殺された孤児院の子供達に仕事を提供できますので! レシピ次第ですが引退した料理人を指導役にすればいけます。」
あー、そう言われると弱いな。同じ冒険者として、将来僕も家族を残してそうなる可能性があるもんね。
でもまぁ、お金とレシピを出せばギルドが一から十までやってくれるのなら任せちゃってもいいかな。たかが失敗携帯食のレシピだし。
「分かりました。そう言うことなら工房を建てての携帯食の販売をお任せします。ただポーションの効果もあるのでポーション職人も雇った方が良いと思います」
「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」
冒険者さん達が物凄く喜んでるなぁ。
彼等も明日は我が身と思っているのか、引退した先輩達の就職先が出来たことに喜んでいるみたいだ。
携帯食から思わぬ雇用が生まれちゃったなぁ。
「これであのクソ不味い携帯食から解放されるぜ!」
「新人の俺達の収入でも銀貨一枚ならたまの贅沢にこれを買えるな!」
「へへ、長期間かかる探索でこれが食えればやる気が増すってもんだ!」
こうして、冒険者ギルド主導で携帯食の販売が始まったんだけど……
「すいません、新型携帯食は売切れてしまいました」
「なんだってーーーー!!」
何故か新型携帯食は驚く程売れすぎて買えない人が続出してしまったんだ。
「何でこんなことになってるんだろう?」
幾らなんでも売れ過ぎじゃない?
「すみませんレクスさん、携帯食について相談させて頂いてもよろしいですか?」
「なんだか売り切れで買えないみたいですね。でも携帯食を何でそこまで?」
「それが、美味しいのが問題で……」
「は?」
携帯食が美味しいのが問題? どういうこと?
「レクスさんの携帯食は非常に美味しいので冒険者が町に入る時でも食べてしまうんです。冒険から返って来た時に治療する程でもない傷を治療するという名目でおやつ代わりに食べてしまうんですよ」
「それ、普通に回復して貰った方が安いんじゃ……」
「そうなんですが、儲けが出て気分が良い所に酒で浮かれて手軽に美味しく食べれる物があると……」
「ついつい食べちゃうと……」
それは皆の自業自得じゃ……
「あと値段がそこまで高くないので味の噂を聞いた一般の人達が弾の贅沢に買いに来るようになったんです」
「一般の人達まで!?」
確かに一般人が冒険者に憧れて冒険者の道具を買いに来ることは前世でもあったけど、まさか携帯食を買いに来る人が出るなんて……
「更にうわさを聞きつけて近隣の町の冒険者や商人までやって来てとても生産が足りない状況です」
「うわぁ……」
完全に需要と供給のバランスが崩れているよ。
「という訳で他の冒険者ギルド支部のある町でも工房を建設しませんか?」
「え?」
「この町にしか工房が無いので、各地に工房を作れば生産量を増やせます」
「でもそんなに一気に工房を作ったら需要が落ち着いた時に工房建設の費用が回収できなくて大損になるんじゃ」
「大丈夫です。すでに既存の携帯食は全く売れなくなったので、既存の携帯食工房を買い取って従業員を丸ごと雇う事で安く済ませられます」
「それ本当に実行できるんですか!?」
普通に考えて既得権益が奪われると抵抗しない!?
「既に各町の携帯食工房主にこの町で作った携帯食を実食させてから値段と売り上げ表を見せて心を折っておきました。一応既存の携帯食も金のない新人用に少量生産は続けますが、一度でも食べれば間違いなく元の携帯食には戻れないので問題ありません」
「変なもの混ぜてませんよね!?」
「混ぜる余地がないので安心してください」
などという騒動が起きたりした結果、僕の携帯食工房は王国中に広がっていった。
「うわぁ、ギルド通帳の売り上げが凄いことになってる。携帯食ってこんなに売れるんだ……」
そして以前オークション用に作った冒険者ギルドの通帳にはビックリするくらいのお金が入っていた。
「最近は貴族の間でもお茶請けとして人気なんですよ」
「携帯食なのになぁ」
「あと携帯食の売り上げはこれだけで、こちらは以前お話しした民間用の効能をカットして味だけを維持した廉価版の売り上げですね」
「値下げしたお菓子の方が売れてるんですか!?」
「長持ちするのでお土産としても最適なしっとり冒険者クッキーとして国外の人達にも人気なんですよ」
「なんか変な方向に転がってるなぁ」
そう言えば、前世で美味しい携帯食を売ろうとして失敗した料理人の彼、あの後新作のお菓子が大人気だったけどまさかね……
「という訳で国外の冒険者ギルド支部にも工房を作りましょう!」
「ええーっ!?」
まさかこれが後の世に『大物喰らいのしっとり冒険者クッキー』として時代を越えたロングセラーになるなんて思いもしなかった……んだよね。
携帯食_(:3 」∠)_「つまりM&Aって事?」
美味しい携帯食└(┐Lε:)┘「まぁ合意の合併ならええんでない? 意味も時代によってニュアンスが変わるし」
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