いつまでも
さて、いつものサボリのせいか、今日は残業になってしまった冬馬。
遅めの夕食をとるかといつものファミレスに向かっているところに携帯のバイブ音が響く。
見れば、画面には沙耶の文字。
面倒に思いながらも電話を取った。
「何だ?」
「いつものファミレスで待ってるから、すぐ来て!」
沙耶は言うだけ言うと電話を切ってしまった。
「って、おい!?」
冬馬は電話に叫ぶものの帰ってくる返事はない。
仕方なく、予定通りファミレスに向かう。
店に着くと沙耶はすぐに冬馬に気づき手を振った。
冬馬は仏頂面をぶら下げて席に着く。
「で、沙耶何なんだよ?三山さんと何かあったのか?」
面倒くさそうに冬馬は言った。
沙耶は何が楽しいのか思い切り笑顔を浮かべている。
「うん、お付き合いを断ってきた。」
「へぇ、よかったな…」
沙耶がニコニコと報告すれば、冬馬は友人として祝いつつも落ち込んだ口調で返した。
しかし、数秒後、沙耶の言葉の意味を理解して驚きの声をあげる。
「って、えぇ!!?」
「そんなに驚くことかなぁ?」
沙耶は何でもないことのように返した。
「何でだよ!お前にはもったいない相手だろ!?」
冬馬は自分にとって都合のよすぎる報告に慌て、何故か怒るように沙耶に言った。
「ん〜、私はまだ冬馬に愚痴を聞いてもらい足りないってこと!」
沙耶はニコニコと笑顔を浮かべながら、冬馬の顔の目の前に指を突きつけた。
沙耶の言葉は、つまりこれまで通りの関係が続くという意味で、冬馬はそれをうれしく思う。
そのうれしさゆえに照れながら、その照れをごまかすためにいつもの調子で言葉を返す。
「なっ!お前!俺の迷惑とか考えろよ!」
対して沙耶は相変わらず楽しげに笑いながら話す。
「ふふっ、これからもよろしくね。」
「まったく〜!これで、お守りから開放されると思ってたのに!さっさと結婚相手見つけろよ!」
冬馬は言葉とは裏腹に楽しげに笑っている。
沙耶はそれを受けて、自分自身に語りかけるように、こっそりとつぶやく。
「もう、見つけてたりして。」
しかし、冬馬は気づかない。
「ん?何か言ったか?」
「何も。」
沙耶は楽しげに笑いながら言った。
「なら、いいけどよ。さてと、お前の失恋記念に今日はごちそうしてやる!」
冬馬は最後にニヤリと笑い、沙耶をからかうように言った。
当然、沙耶はそれに反論する。
「なっ!別に失恋してないもん!こっちから断ったんだから!」
だが、冬馬はそれを請合わない。
「どっちだって一緒だろ!?後で後悔してもしらねぇからな!」
「もう!!じゃあ、一杯頼んじゃうんだから!!すみませ〜ん!!」
沙耶が手を上げて、店員を呼ぶと営業スマイルの店員がやってきた。
「はい、ご注文でしょうか?」
「はい、これとこれとこれと…」
店員に聞かれると、沙耶はメニューを指差しながら次々と注文していく。
それを楽しげに見つめながら冬馬はつぶやく。
「早く、俺に気づけよ?」
そのまま、しばらく沙耶を見つめ続けている。
しばらくして、注文をようやく終えた沙耶が冬馬に聞く。
「ん?何か言った?」
「いや、何も。というより、お前頼みすぎだろ!!」
冬馬はしがないサラリーマンだ。
それも役職もない平社員。
そんな贅沢は許されない。
よって、勢いよく、沙耶につっこんだ。
しかし、沙耶はまったく悪びれない。
「だって、ご馳走するって言ったじゃん!!」
最後には首をかしげる仕種までつける。
本来なら可愛いと思う仕種も、相手の経済事情を考えない沙耶相手ではそれも思えない。
なので、冬馬は沙耶に叫ぶようにつっこむ。
「だ〜!!お前は調子に乗るな〜!!」
そして、二人の間に笑い声が響き始める。
そう、この二人の関係はまだ変わらない。
しかし、お互いの気持ちはそれぞれに変化していて、それは遠くない未来、同じ人生を歩き始める未来を示していた。
それはきっと、二人にとっての幸せな未来。
『恋がしたい』
これにて完結です。
さて、この話は実は元々台本でした。
演劇にも興味のある筆者が親しい劇団で公演用の台本を用意する時期だったのでそれに釣られて書いたものです。
でも、実際に書くと小説と台本だと勝手が違いすぎて大変でした。
結局、見せるだけ見せたものの、小説に直してどこかでUPしようと決めてこちらでUPしたものです。
ちなみに、台本verも手元にありますので興味のある方はご連絡ください。
では、後書きまで読んでいただき本当にありがとうございました。




