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男女の友情

それから、沙耶と三山は何度か二人でデートを重ねていった。

そして、今日は久しぶりに沙耶と冬馬が二人でいつものファミレスにいた。

沙耶は久しぶりとはいえ、前と変わらずリラックスした様子だが、冬馬はどこかイライラした様子だ。

冬馬はそのイライラした表情を隠そうともせず、イライラした口調で沙耶に問いかける。


「で、どうなんだよ?」


冬馬の主語の欠落した言葉では沙耶は意味が分からなかったようだ。

きょとんとした表情で冬馬に聞き返す。


「どうって、何が?」


沙耶のそんな様子にますますイライラを募らせた冬馬は、半ば投げやりに沙耶に言葉を投げ捨てる。


「だから、三山さんとのことだよ!そろそろプロポーズくらいされているんじゃないのか?」

「えっ!?」


沙耶は冬馬が何故イライラと怒り口調で話すのか分からないために、圧倒されていた。

そのため、驚きの声だけが口から漏れた。

それは思いのほか大きな声だ。

さらに沙耶は続ける。


「そんなのあるわけないじゃん!」


その声は驚きの声に続いて大きな声で、かなり大げさな否定だった。

冬馬はそんな沙耶を見て不信なものを見るような視線を返す。

沙耶はその視線に戸惑い、今度は顔を俄かに赤くし、小声でボソボソと反論する。


「それに単なるお友達だし…。」


今度は、冬馬は呆れる番だった。


「お前…本当のバカだったんだな…。」


照れながらも反論した沙耶は、そのため息交じりの言葉にいつも調子を取り戻す。


「はぁ〜?そんなこと分かってるわよ!」


勢いよく言った後に突然、沙耶は下を向く。

そして、自分に問いかけるように、自信なさ気につぶやく。


「やっぱり、三山さんはそういうつもりなのかなぁ?」

「あたり前だろ!?大体、男女の友情なんてあるわけねぇじゃんかよ!」


冬馬は畳み掛けるように言い切った。

当然、沙耶は反論する。


「でも、うちらにはあるじゃん!」

「あ〜、それはそれ!これはこれだろ!」


冬馬の男女の友情の根拠は自分自身の沙耶に対する気持ちに拠るものだが、それは言うつもりはない。

なので、冬馬は沙耶の言葉に逆切れするように言った。


「ん〜、でも、そんな急な話じゃないだろうしのんびり考えるよ。」


沙耶は冬馬の逆切れにも動じず、のんびりした口調で落ち着いて返した。

しかし、冬馬はそれで黙っておけるわけがない。


「三山さん、あれでかなりのやり手だからな。そんなこと言ってて、流されんなよ!!」


冬馬は沙耶の顔の前を指差しビシッとポーズを決めて言い捨てた。

沙耶はそれにたじろぎながらも反論を試みる。


「うっ、そんなこと言われてもさ…。」

「とにかく、俺はちゃんと忠告したからな。俺は仕事があるから帰るけど、ちゃんと真剣に考えろよ!」


冬馬は最後まで言いたいことを一方的に言うだけ言って帰っていった。

一人になった沙耶は一人で目の前の紅茶を見つめながらつぶやく。


「はぁ〜、そんなこと言われても、三山さんって何か違うんだよね。冬馬と一緒にいるほうが楽しいし…。」


さらに沙耶は一人で考え、またつぶやく。


「憧れと現実は違うっていうのかな?」


沙耶の問いかけに答える人間はここにはいない。

最も、彼女も答えを人に求めているわけではない。

自分で答えを出さなければいけない問題だと分かっているのだ。

そして、またしばらく無言で考え始める。


「三山さんはとても素敵な人だし、憧れはするんだけど、落ち着かないし、現実味もない…。冬馬のほうがずっと一緒にいても飽きないし、楽しいし、気も使わなくていいから楽!」


三山のことを語るときはどこか自信なさ気な言い方だった沙耶だが、冬馬のことを考え始めると急に元気になってきた。

最後には断言して言い切った。

さらに言葉を続ける。


「つまり、答えは出てるんだ!!」


そう言い切った沙耶は楽しげな笑顔を浮かべていた。

目の前のすでに冷め切った紅茶に手を伸ばす。

一口飲むと、頭が一気に冴えてくる。

そして、やるべきことを思い出した沙耶は慌てて席を立つ。


「三山さんに会わなきゃ!!」


そのまま沙耶は駆け出した。

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