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シルフの舞~精霊と人の輪舞(ロンド)~  作者: 風間 義介
一章「精霊を操るもの」
2/40

一、

 陰陽寮に代わり、日本の霊的な守護を行う公的機関「宮」は、陰陽師や巫女、仏教僧や修験者などの日本古来の霊能力者だけではなく、エクソシストや魔女、シャーマンなどの世界各地に伝わる霊能者を集め、育成している機関だ。

 そのなかで、勇樹と桜は少々特殊な部類に入る。

 通常、霊能者は己の霊力を使い、自然そのものや相手に干渉を行う。勇樹と桜もそれは同様だが、干渉を行うことのできる対象が限られている。彼らは自然界に存在する霊的な意識集合体、精霊にのみ干渉を行うことができる、少しばかり稀有な術者なのだ。

 特に、勇樹の場合、精霊の力を自分の体に憑依させ、精霊の持っている属性をその肉体に宿し、術として使用することができる、あまり例を見ない特性を持っている。彼のような術者を「精霊拳士」と呼ぶ。

 そして稀に、精霊を感知し、彼らと語らうことのできる術者もまた存在している。それが、桜のような術者だ。そして、彼女のような術者を「召喚士」と呼ぶ。


 実習前に集合するよう指示された教室にはすでに、多くのクラスメイトが席について、それぞれの班で談笑していた。

 勇樹もまた席に着くが、班員と特に話をすることなく、のんびりと授業の開始を待っていた。

 「月影、お前また皇と一緒にいたのか?」

 「一緒て……まぁ、あいつに連れてこられたようなものだから、そういうことになるんだろうが……」

 ふいに話しかけてきた男子に対し、勇樹は複雑そうな表情で受け答える。

 男子はにやにやとしながら、続ける。

 「お前、皇と付き合ってるって噂が立ってるぜ?」

 「……勘弁してくれ……」

 勇樹は大きくため息をついて、ふたたび机に突っ伏した。勇樹自身、桜が嫌いというわけではない。奇妙な噂のせいで面倒事に巻き込まれることが嫌いなのだ。たとえば、今回のような交際疑惑がその一つだ。ただでさえ、精霊拳士と召喚士は二人一組で行動することが多い。さらに、勇樹は精霊拳士、桜は召喚士だ。実習だけでなく、そのほかの授業でも組んで行動することが多い。

 実のところ、桜はこの教育機関の中では美少女の部類に入る。さらに、明るい性格と底抜けの優しさの影響があり、同性にも人気がある。

 一方で勇樹は顔は普通なのだが、近寄りがたい雰囲気と生来の寡黙さが災いして、あまり親しい友人がいない。そんな対極にあるような二人が恋仲になることができるはずがない。いや、むしろそうであったら面白いという理由で無意味な噂が立っているのだろう。

 勇樹としては、迷惑この上ないことだ。

 ――……桜と付き合えるなんてこと、あるわけないだろ……

 心のうちで、勇樹がそう呟くと、実習の教師が教室に入ってきて、授業のための移動を指示してきた。

 勇樹はその指示を受け、立ち上がり、移動を始めた。

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