第2話「入部からいきなりデビュー」
入学式が終わり、部活見学が始まる。
夏空のいたあの頃とは違うきれいになった工場に向かう。
そして鉄のドアを開く。
「すみませーん!」
中に入るとタイヤのゴムの匂いや、エンジンオイル、ケミカルオイルの匂いが充満していた。
「あ、いらっしゃーい!見学の子?」
「あ、はい。ここの見学に来ました」
「じゃあ案内するよ。あ、私秋原真紀。部長やってるよ」
部長と一緒に工場内を回る。
「この自動車競技部はね、タイムアタック部門とラリー部門の2つに今参戦してるの」
ラリー。その言葉を聞いた時、ピンと来た。
「まず、このトヨタ86のレースカーみたいなやつがうちのタイムアタック部門で使ってるマシン。SUPERGTのマザーシャシーの86のものと同じなんだけど…知ってるかな?」
「あ、はい、わかります」
「もしかしてレース好き?」
「あ、自分カートレースやってて。」
「え、名前なんていうの?」
「奏汰、萩原奏汰です」
「え!あの夏空の息子さん!?」
まただ。夏空の息子って。
「じゃあここ入るのは必然か〜。あ、ラリー部門の方も見る?」
「見させてください」
そうして向かった先には赤いGRヴィッツがリフトアップされていた。
「このヴィッツが私達のラリー部門で使ってるマシン。私が乗ってるの」
「そうなんですか?」
「私、このヴィッツでラリーの時は峠飛ばしてるよ」
「なんか想像できないです。部長さん優しそう」
「そうかなぁ〜。」
「もし入部するならどっちの車乗りたい?」
「自分、ラリーの方乗ってみたいです」
「そっか。じゃあ入部するなら今週中に入部届持っておいで」
「わかりました」
翌日、奏汰が持ってきた入部届を真紀が受け取る。
「じゃあ、入部届を受理します。福原先生のところにいこうか」
「あ、はい」
「あ、その前に他の人紹介するよ」
最初に向かった先には数枚のモニターの前で計算や設計をする女性。
「この子は日野森穂乃果。うちのエンジニアやってくれてる」
「日野森穂乃果だよー。よろしくねー。これから車のこと色々極めていこう!」
「あ、はい、お願いします」
そうして次のエリアに行く。
そこにはボディを溶接する筋骨隆々な高校生がいた。
「琉くん、新しい子が来たよ」
「お、1年生が来てくれた!俺は中村琉、メカニックやってる。お前と同じ1年生だ。よろしくな」
そうして右手を差し出してくる。
その手はゴツゴツしていた。
1年生だけどすでに多くの修理をこなしてきたのだろう。
「その辺に太一先輩もいると思いますよ?」
「わかった、探してみる」
そういって真紀と奏汰は太一を探す。
すると、リフトアップされたシビックEK9の下に人の足が見えた。
真紀がその足を叩く。
すると車の下から出てくる。
「なんすか?真紀さん」
「新しい子が来たから紹介したくて」
「萩原奏汰です」
「あ、俺、神野太一。よろしくね〜。萩原…?」
「もしかして、夏空選手の息子さん?」
「あ、はい」
「そうなのか。まぁ、よろしくね」
その時、もう1人が段ボールを抱えてきた。
「あれ、真紀さん、その子は?」
「あ、新しい子だよ。」
「萩原奏汰です」
「湊幸介、よろしくな。」
その一言だけでそのまま太一のもとに行ってしまった。
「とまぁ、今紹介したのがうちのラリーチームだね。」
「人はそんなに多くないんですね」
「そうだね。うちは少数精鋭の形でやらせてもらってる」
「じゃあ、あとは先生のところ行こうか」
「せんせー、いますかー?」
86のエンジンルームを部員たちと覗き込んでいる女性がいた。
「あら、真紀さん、どうしたの?」
「あの、新入部員なんですけど」
「あら、もう入ったの、名前は?」
「萩原奏汰です」
「あれ、萩原ってことは夏空くんの息子さん!?」
「はい。」
「夏空くんは元気にしてる?」
「あ、はい。」
「それで、どっちのマシンに乗りたいの?」
「えっと、ラリーカーに乗りたいです。」
「あら、ラリーカーなの?てっきりタイムアタックの方に行くと思ってたよ」
「ちょっと、最近興味があって」
「じゃあ、早速乗ってみる?」
「いいんですか?マシンまだ整備中じゃないですか」
「いいのいいの、もうほぼ終わってるでしょ?あのヴィッツ」
「はい!ばっちし整備済みです!」
「じゃあ、コースにマシン持っていって」




