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第15話 再会(1)

大講堂の扉が閉じられる。

ざわめきが、ゆっくりと沈んでいく。


新入生はすでに席についていた。


長椅子の列。

整えられた背中。

揃えられた視線。


リリアナも、その中に座っている。


席は後方。


前列の肩越しに隠れ、

壇上からは目立たない位置。


それでいい。


ふと気づく。


自分の髪に、

いくつか視線が集まっている。


灰色。


珍しい色。


昔から、不吉だと言われてきた色。


あからさまに口にする者はいない。


けれど。


見れば分かる。


ほんの一瞬、

目が止まるあの感じ。


リリアナは何も言わない。


ただ静かに視線を落とす。


左手の手袋を、そっと触れる。


薄手の、生成りの絹。


その下。


中指の指輪。


これだけは、外せなかった。


顔を上げる。


壇上。


上級生と生徒会役員が並ぶ。


その中央に、一人の青年が立っている。


金色の髪。


光を受けて、静かに輝いている。


琥珀色の瞳。


その色を、

リリアナは忘れられなかった。


まっすぐ前を見据えたまま、動かない。


静かな佇まい。


昔から変わらない、

あの人の立ち方。


――あ。


次の瞬間。


声が落ちる。


低く、

落ち着いた響き。


耳に触れた瞬間、


胸の奥が、

揺れた。


胸の奥の、

昔の場所が先に反応する。


知っている声。


忘れられなかった音。


押さえ込んでいたつもりでも、

どこかでずっと、


もう一度聞きたいと

思ってしまっていた声。


壇上を見る。


会いたかった。


そこに、立っている。


それだけで、

胸がいっぱいになる。


離そうとしても、

目が離れない。


あの人だ。


声が続く。


落ち着いた、

優しい声。


昔から変わらない響き。


あの人の声。


あの人の佇まい。


それでも。


変わらない。


あの光。


胸の奥に、あふれてくる。


嬉しい。


声が聞こえる。

同じ空間にいる。


それだけで、胸が熱くなる。


……嬉しい。


壇上を見る。


あそこに立つ姿。


眩しい。


あの場所は――


……違う。


私の立つ場所ではない。


最初から。


そういう場所だった。


あの人の隣には、

ふさわしい人が立つ。


それが、本来の形。


私は、そこに立たない。


それでいい。


そう決めた。


それでも。


壇上の声を聞くたび、

姿を見るたび、


胸の奥が揺れる。


――隣にいたい。


ふいに浮かぶ声。


触れたい。


名前を呼ばれたい。


……一緒に生きたい。


心臓が強く鳴る。


違う。


拳を握る。


爪が掌にきつく食い込む。


私は、何のためにここに来た。


忘れるな。


この人を、生かすためだ。


それだけでいい。


それだけで。


胸の奥からあふれ出したものを、

無理やり押し込める。


それ以上、

考えないことにした。


深く息を吐く。


ゆっくりと顔を上げる。


もう、何も浮かばない。


ただ静かに。


新入生の一人として。


リリアナは、壇上を見上げていた。


やがて式は終わる。


拍手が起きる。


リリアナは静かに立ち上がった。

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