第50話:アドバイスを、君に。
怠惰は表情を歪ませ俯く、物思いにふけるその顔にどこか懐かしさを覚えてやまないがその元を思い出せない。
「リンク、シュンも同じことをしてたの」
「バルトの事か?」
「えぇ」
顎に当たった手を擦らせ更に深刻そうな表情になった怠惰は、ハッとしてこちらをみた。
「ロクーラ・ネットワーク....マズイわね。全く気付かなかった」
「なんだそれ?」
「狂気の接続回路、同じ波長を持った遺品を持った人に自分の思想を無理やりねじ込む禁忌術の一種よ」
「そもそも生命体が使えるような技術じゃないから予想もつかなかった....でもシュンがどうしてそれを....」
怠惰は更に深いもの思いにふけていった。
そんな彼女を眺めて居ると次第に意識が薄れていく。
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「じ....勝治!生きてる?」
目が明くと一番最初に入った特徴的な赤に近い茶髪。
ナエラさんだ。
特徴的なコルクの匂い、恐らくバリッシュさんの店だろう。
視界がハッキリしていくにつれ、痛みが鮮明に蘇ってきた。
「イダダダダ」
痛みの方を見ると脇腹が抉れている。
「ごめんなさい、マナ切れで完治まで出来なかったの。でも生きてて良かった....!」
反射的に自己改竄して痛みを和らげた。
動けない激痛と言う事は無くなったが異様な違和感が襲う。
店の隅に目をやると、横たわってるヴィクセンとマヨイ、そしてグリシアが居た。
そしてその隣に居るしなったゴムの様な....俊介、先生。
「彼女等は...間に合わなかった」
奈恵先生の下唇から血が流れている。
悔しさとこれからの不安に板挟みにされた表情、とても直視できるものでは無かった。
ミレイ・ノルヴァは消滅したまま復活することは無かった様だ。
大損害....いや、もうそんな次元じゃ収まらない。
神はみんな死んでしまった。
退路は....もう。
いや待て、一つある。
一つだけ。
ライリーだ。
ライリー・ノルヴァ。
負傷を追ってたから今回の作戦には参加していない。
彼女さえいれば天界に行ける、そしたらスパシブにも会える。
頭の中に一本の道が構成されていく。
右へ左へグルグルと迷路のように開拓される道。
そんな未知の道が導き出した答え。
「ライリーに会いに行こう」
俯いていたみんなが一斉にこちらを見た。
「全員を復活させる方法が一つだけある、天界にいってスパシブの【リプレイ】を貰っ」
「....復活させてどうするつもりだ?また無駄死にする皆を見るのはゴメンだぞ」
ボソッと吐き捨てるように言ったのはバリッシュさんだった。
彼ももう相当キている様だ。
「怠惰に出会ったんだ、赤髪の少女....だった彼女に」
「彼女の力を借りてシュンの復活を一時的とは言え封じた」
「先生なら彼女を具現化出来る、それなら」
どこか半信半疑な表情こそ浮かべているが、特に食い気味で反論してくる様な事は無かった。
もうみんな藁にもすがる思いなのだ。
決まってからの行動はとても早い。
神々の遺体は一旦店に放置することになった。
皆を一箇所に集めて手を合わせる。
「待っててください、今行きます」
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教会に着くと、庭でライリーが花の手入れをしていた。
その服装から修道士にしか見えないが、これでもれっきとした【暴食を司る女神】だ。
こちらに気付くと嬉しそうな笑顔を見せたが数秒もしないうちに引きつった。
全員揃っていない事に気付いたのだろう。
「お帰りなさい、大丈夫....とは言えなさそうね」
「あぁ、致命的だよ。神は全滅した」
明らかに動揺するライリー。
口元がマヨと動いているが声が出ていない。
「全員」
そう言うと、ライリーは涙を堪えようと必死になった。
「天界には行ける?俊介たちを救ってシュンを倒せる方法があるかもしれないの」
話を切り出したナエラさん。
ライリーは一つ鼻をすすり頷いた。
「スパシブに会いたいんだ、彼の能力なら過去に戻れる」
ライリーの目がパッチリと開いた。
「....それは無理よ」
「いい?彼の能力でリプレイするにはその時に【記録】しなきゃいけないの」
「マヨイ・ヴァレンは【大罪を司る女神】、スパシブの能力も模倣して使ったもの」
ライリーは露骨に動揺し、溢れんばかりの感情を抑えようと必死になっている。
「じゃぁ...その記録が無いと過去には戻れないのか...?」
遂にライリーが泣き出した。
膝を崩し右膝が花を潰した。
「どうして...どうして....」
両手を顔に当てて泣くライリー、目からハイライトが消えた一同。
....これが、地獄だ。
「あらあら....まだ泣くのは早いんじゃないのぉ~?」
知っている男の声、特徴的なオカマ口調。
「あらやだ、ライリーちゃん花踏みつけちゃだめじゃない」
スパシブだ。
「はぁ~い♡元気してた?」
「記録ならほら、あるわよ」
突然の来訪に不意を疲れたが、気づいた頃には口から疑問が漏れていた。
「どうして....?」
「全部見てたのよ、何せ私」
「【記録を司る神】だからね」




