幕間 コクリコ
はい。番外ですね。
街でお友だち⑶の、燃えてるお屋敷の時、その時、ゼロちゃんの姉のコクリコちゃん側から見たお話です。
きっと真っ赤に燃え上がる炎を見ると思い出すのは古い記憶。まだコクリコが姉だった頃。人にもそれ以外にもなれなかった、そんな頃。
今も、人でも人でないものでも、どちらであるわけでもないけれど。けれどあの頃とは変わった。変わってしまった。
見たくないな、なんて思いながらゆっくりと目を閉じて、セロとよく似た動きで頭を振った。
そして、目を開く。澄み切った青空のような色の目がのぞいた。
コクリコはその手に、小さく最後の種火を灯した。それをゆっくりと持ち上げて、そっと下に落とす。
油でもひいてあったのか勢い良くコクリコの落とした小さな種火は燃え上がる。
ーーー全て、燃えて、灰になってしまえばいいのにね。
コクリコはその口元に笑みを刷いた。
全て灰になって何が何だか分からなくなってしまえばきっとあの子は傷付かない。そう、思った。
コクリコの故郷と呼べるような場所はもう灰になって無くなってしまったけれど。きっとそれで良かったから。きっと、そうあるべくして灰になったのだろうから。
「もう直ぐだよ。直ぐに会いに行くからね」
まるで愛を囁くように。コクリコはそう言った。
「ここまでやる必要はあったのか、リコ。少し小火程度、と言っていたではないか。まさか全焼させるなんて思っても見なかったぞ」
少し呆れたような声がコクリコにかかる。
ひょい、と高く高く燃え上がる炎を飛び越えて、淡い金の髪を炎の色に染めてコクリコの横に現れたのはサツキ。
コクリコもセロのものとよく似た白い髪を炎の色で彩って彼女を振り返る。
「なんだかね、気に入らなかったの。本当はちょっとした小火程度にするつもりだったんだよ?でもね、あんまりにもあの子のことを馬鹿にするもんだからさ」
コクリコはにこやかに笑った。悪意に溢れた無邪気な笑顔。
サツキは溜息を吐いた。
「それで、全焼、か?」
「そうだよ。だってあの子は私のだから。他の人にどうこう言われるなんて、そんなの可笑しいでしょう?」
当たり前のように真顔に戻って首を傾げた。
「……誰も殺しておらぬだろうな」
サツキは諦めたようにコクリコから視線をそらした。
「勿論。当たり前でしょ?殺す価値なんてないもの」
コクリコはやはり当たり前のように言う。殺す価値がないと、当たり前のようにそう言う。
「なら良い。……そろそろ行くぞ。さっきあいつを見かけた。見つかると厄介だ」
サツキはもう一度溜息を吐いてそう言った。
「……ねぇ、やっとだよ。やっと、殺してあげるからね」
コクリコは未だ赤く燃えている屋敷を見上げて笑った。
「これでもう、辛くないからね。泣かなくていいからね」
一欠片の邪気も悪意も何もない、純粋に慈しむようなそれでいて何故か泣き出しそうな、そんな笑み。
「だから待ってて、ね?セロ」
なんだが出てくる人がだんだんみんな病んで行く気がします……なんでだろう?
ところで次かその次くらいで多分、この街でのお話はお終いです。お終いにしたいです。
頑張ります。
ていうか誤字というかなんというかが酷すぎます。泣きたい……。見つけ次第教えてください……。