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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
3 魔王軍結成!?
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40 『始まりの地』のラーメン騒動

 食べ物系の露店が多い、通称『屋台通り』へとやって来たオレたちは、情報収集を兼ねて食べ歩きをしていた。

 そしてそんな屋台の一つで、気になる話題を耳にすることになった。


「ラーメン再現プロジェクト?」

「おう!元々はあるプレイヤー(冒険者)イベント(試練)だったんだけどな。今じゃあ『料理研究会』と『美味倶楽部』の二大美食ギルドが主導する、一大プロジェクトになっているぜ!」


 他にも料理系の中小ギルドがいくつも協力しているそうだ。


「大将や(あね)さんも参加しているのか?」


 焼鳥屋のおっちゃんと、その隣のシチュー屋のお姉さんに尋ねてみる。


「私らはギルドに入っていないから、使えそうなネタがあったら使用料を払って、という形になりそうかな」

「そうなると、もしもミソやショウユのネタが上がってきたら、二大ギルドは大儲けだな」

「それなら大丈夫よ。有用な情報は公開する決まりになっているから」


 おや?それは予想外。


「その元々のプレイヤー(冒険者)の意向でそうなったんだ」

「そうそう。「どうせなら皆で美味しいものが食べられるようになりましょう」ってリュカリュカちゃんらしいわよね」


 聞けばそのプレイヤーはお姉さんの店の常連だったのだそうだ。そうした繋がりがあるからこその余裕なのかもしれない。

 それに、情報は決まり通り公開しても、原材料を買い占めることが起こるかもしれない。

 その辺りはギルドの倫理観次第だし、オレがどうこう言える問題でもないか。

 多少の罪悪感は残るが、ミソとショウユの情報は予定通り、できる限り高値で売りさばくことにしよう。


 そうと決まれば早速、二大美食ギルドの所へ行くとしよう。


「その二大美食ギルドってどこにあるんだ?」

「なんだ兄ちゃん、材料集めに参加するつもりなのか?」


 正確には違うのだけれど、訂正したとしてもその後の説明が面倒だし、それでいいか。


「まあ、そんなところかな。せっかくのお祭り騒ぎだし、参加するのも悪くはないかなと思ってさ」

「がっはっは!そういう考え方は嫌いじゃないぜ!」

「それなら冒険者協会に行くといいわよ。参加申し込みの受け付け窓口になっているから」


 二人と別れて冒険者協会へと向かう。


「マスター、お聞きしたいことがあるのですが?」

「なんだ?」

「ラーメン、とは何なのでしょうか?話の流れから食べ物だということは理解できたのですが……?」


 いけね、そういえばアリィはNPCだった。

 ずっと一緒に行動していたから、すっかり忘れてしまっていた。


「えっと、ラーメンというのは地上での料理の一種で……」


 冒険者協会に到着するまでの間、オレはしどろもどろになりながらラーメンの説明をしたのだった。

 そのお陰で、かんすいも作ることができると分かった。売りつける材料が増えました。




 やってきました、冒険者協会。


 で、また絡まれた。


「よう、兄ちゃん(以下略)」

「姉ちゃん美人じゃねえか(以下略)」


 ああ、頭痛が痛い……。


 ここには酒場が併設されていて、ある意味酔っぱらい製造所だったのをすっかり忘れていた。

 うーん、最近物忘れがひどいな。若年健忘症かしら?


 先ほどの一件でタクローに釘を刺されてしまったので、例え後からやり返すという形であっても、高確率で犯罪歴が付いてしまうだろう。

 かといって好き勝手言われるがまま、されるがままになるのは性に合わない。

 さてどうするかと対処に困っていると、思わぬ助けがやって来た。


「警護隊だ!先ほど広場近くで酔っぱらいが喧嘩をしていたので、見回りを行っている!」


 突然現れた警護隊に、冒険者協会内は騒然となったが、その理由を聞いてほとんどの者たちはすぐに落ち着きを取り戻していた。

 そしてオレたちに絡んできていた酔っぱらいたちも、すごすごと自分たちの席へと引き上げていったのだった。


 警護隊は協会の職員にあいさつした後、ぐるりと見回すとすぐに出て行ってしまった。本当にただの見回りだったようだ。

 再び絡んでくるものが現れる前に、素早く窓口に近づいた。


「冒険者協会へようこそ。どんな御用でしょうか?」


 絡まれていた様子を見ていたはずなのに、その事には一切触れずに定型文を口にする職員に若干苛立ちを感じる。


「マスター」

「ん……」


 そんなオレを落ち着かせるようにアリィが静かに声をかけてきた。

 彼女にとっては慣れない古都だ。オレがしっかりしないとな。そう思うと落ち着いてきた。


 それに『冒険者協会』は冒険者同士の諍いに基本的は不介入だ。この立ち位置は昔からのことであり、公表もしている。

 ここにいる職員たちもそれに則ったに過ぎないのだ。画一的でお役所仕事な感じはするけれど、彼らからしてみれば特定の人物を贔屓(ひいき)する訳にはいかない、というところなのだろう。


「今、街中で話題になっているラーメンのことなんだが」

「申し訳ありません。そちらの材料集めは既に全個所に人が派遣されています」

「いや、二大美食ギルドのある場所が知りたいんだ」

「窓口は冒険者協会に委託されていますから、そちらに行っても材料調達の仕事はないと思いますよ」


 そう言いながらも受け付けの職員はギルドのある場所を教えてくれた。


 余談だけど、これはギルドの位置を公表しているからで、ギルドの申請だけおこなって詳細は一切不明のギルドも多くあるようだ。

 PK集団とか半ば犯罪団体と化している連中は元より、最前線の攻略チームにも、そうした秘密主義のギルドは多い。


 必要なことも聞くことができたし、今度は二大美食ギルドの所に行くか。


「どちらのギルドから先に訪ねようか?」

「マスターにお任せします」

「そうか?それな――」

「お話し中、失礼します。緊急の依頼が入って来たので、できれば受けてもらえないでしょうか?」


 会話を遮って職員が唐突に申し出てきた。

 何事かとアリィと顔を見合わせる。とりあえず、事情を聞いてみることにした。


「ここ、ナウキから馬車で一日ほどの所に魔獣の森という強力な魔物が多く潜む森があるのですが、そこで猪型の魔物、デスファングの異常に巨大な個体が目撃されたという話なのです」

「依頼というのは、その調査と、可能であれば討伐、ということか?」

「その通りです。話が早くて助かります」

「どうしてオレたちに?冒険者ならいくらでもいるだろう?」


 酒場の方を指差すと、職員はフルフルと頭を振った。


「魔獣の森は古都近辺では考えられないような強力な魔獣が住み着いています。その上対象は異常な大きさということですから、並みの力量の者では相手にならないでしょう」


 職員が指示した俺の冒険者カードには二十六レベル――隠密系の技能たちが仕事してます――と記載されていた。もしかすると、これはレベルが一定以上の者限定のクエストということかもしれないな。


「マスター、受けましょう。巨大な猪型の魔物ということですから、上手くいけば……」

「!!大量の肉が手に入るな!」

「はい!」


〈レベル限定クエスト、魔獣の森の調査を受諾しました〉


 こうしてオレたちは、大量のお肉を確保するため、もとい、巨大化したデスファングの調査をするために魔獣の森へと向かうのだった。


こういう流れで、グドラク君たちは魔獣の森にいたのでした。

うん、おかしくないよね(笑)!

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