表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
16 新米冒険者たちの話し
253/574

245 依頼達成

あちらが「さあ、これから!」というところで何ですが新章です。新キャラです。


 古都ナウキの城壁の外につくられている開発地では多くの人が森を切り開いていた。

 木を切り倒し、切り株を引っこ抜く。言うだけなら簡単だけど、重機もないこの世界ではとんでもない大仕事だ。

 筋骨隆々のおじさんやお兄さん――少数ながらお姉さんも混じっているようだけど――たちが大勢で作業していても、開発地の面積は少しずつしか広くなることはなかった。


「ただいま戻りました」

「お?兄ちゃんたちに嬢ちゃんたちか。早かったな」


 筋肉の見本市のような作業現場を通り抜けて開発地の中心へ向かう。といっても東屋のような屋根があるだけの建物の下に大き目の机と数脚の椅子が置かれているだけの場所だ。

 挨拶をして戻ってきたことを伝えると、責任者である『親方』さん――人間だけど、周りにいるドワーフたちにも劣らない筋肉の人だった――は意外そうな顔をしていた。


「心配しなくても、依頼されたファングウルフにクローウルフ、ファンクローウルフは狩ってきているぜ」


 仲間の一人がそう言って目配せをすると、別の一人が進み出る。


「証拠となる品も持って帰ってきている」


 そしてアイテムボックスからそれぞれのドロップアイテムを取り出して地面に並べていった。


「おお!これだけ並ぶと壮観だな」

「ファングにクローがそれぞれ七匹ずつ、ファンクローは五匹だ」

「んん?ファンクローは三匹しか依頼していなかったはずだが?」


 確かに依頼されていた討伐数は三匹だ。


「それが……、群れていたのかメスを取り合っていたのかは分からないけど、ちょうど三匹が固まっているところに出くわしちゃって」


 しかも運の悪いことに既に二匹狩った後のことだった。


「そいつは災難だったな。しかし、繁殖期まではまだ期間があるはずなんだが……。まあ、いい。予定時間よりも大幅に早かったし、そういうことなら評価を上げておくだけだ。ありがとさん。助かったよ」


 懐から取り出した紙に親方さんはさらさらと何かを書いていく。


「悪いが、冒険者協会への報告は兄ちゃんたちに任せても構わないか?ちょっと工事の進みが遅くなっていて、ここから離れられないんだわ」

「了解。どうせ冒険者協会へは向かうつもりだったから問題ないぜ」


 どうやら書いていたのは依頼完了の証明書だったようだ。


〈ウルフ討伐依頼を完了しました。冒険者協会へ戻って報酬をもらいましょう〉


 そのうちの一枚を預かったところでインフォメーションが流れたのだった。


「ところで兄ちゃんたち、まだしばらくはこの街にいるのか?」

「うーん、拠点を移すことは考えていないけど、そろそろ他の町へも行ってみたいかなとも思ってるよ」

「他の町となると、やっぱり北東の大塩湖方面か?」

「ううん、違うよ。東にあるグレイト大地柱を見に行ってみたいの」


 リアルで私たちが住んでいるのは海沿いの町だ。だからはっきり言って大量の水があるような景色は見飽きてしまっている。

 そこである程度の力をつけたなら、リアルではまずありえない巨大な柱、グレイト大地柱を目指してみようということに決めていた。


「なんだ、兄ちゃんたちは大地柱に行くつもりなのか。それなら早く言ってくれれば良かったのによ」

「どういうことだ?」

「何を隠そう、俺の故郷は大地柱のすぐ近くだったのよ。地元民ならではの店や名物など、色々知っているぞ!」


 予想外のところで情報を持っている人と出会えたみたいだ。NPCと仲良くしていると良いことがあるっていうのは、こういうことなのか。


「マジか!親方、教えてくれよ!」

「おうよ!何でも聞いてくれ!……と、言いたいところだが、すまんな、今は仕事中だった」


 いくら親方さんが責任者でここでは一番偉い人であっても、仕事を放り出していいということにはならないらしい。


「昼時間なら多少は都合が付けられるんだが……」

「そっちは私たちが無理ですね」


 残念ながら昼時間には学校に仕事とリアルの都合というものがある。さすがにそちらを放り投げてまでゲームに没頭する気はない。

 まあ、そういう生活を夢見たことはあるけれど。


「弱ったな。同郷のやつらは皆同じように夜時間に働きに出ているからな……。手が空いているとなると、うちの母ちゃんくらいか」


 ちょっとちょっと!?いきなり家を訪ねてくれなんて言わないでよ!?いくら故郷の話ができるからって見ず知らずの相手に自宅の場所を教えるなんて正気の沙汰じゃない。


「今日仕事が終わったら母ちゃんに話してみるから、また明日にでも顔を出してくれるか?」


 あ、良かった。この人はまともだったみたいだ。

 しかし、NPCの中には時々あり得なようなことを言い出したり、しでかしたりする人がいるのだ。リアルに準拠していたり、リアルさにこだわったりしている部分が多いためか、そういうゲーム的とでもいえばいいのか、アバウトな部分がやけに適当に感じられてしまうのだった。


「明日来ればいいのか?細かい時間があれば合わせるが?」

「できるなら今よりも少し早い時間に来てくれ。大体いつもそのくらいの時間に休憩を入れているからよ」


 今日は私たちも仕事だったが、明日の件は私用となる。開発地整備の邪魔になってもいけないので、休憩時間に合わせるべきだろう。

 私たちは明日再度来訪することを約束し、街へと戻ることにしたのだった。


「ふう、今日の稼ぎでようやく目標の物が手に入るな」

「そうね。本当に長い道のりだったわ」


 疲れの色を一番に滲ませている仲間に比べて、そう答えた私の声には喜色が満ちていた。

 なぜなら長い間心待ちにしていた物を買えるだけの資金をやっとのことで集めることができたのだから。


「S評価をくれるって言っていたし、あれ買ってもまだお釣りが出るよね?残ったお金でパーッとやらない!?」

「それは報酬を受け取ってから考えることだ。俺が聞いた話だと、S評価でも雀の涙程度の増額だったこともあるそうだ」

「んもー、せっかくの良い気分に水を差さないでよー!」

「だが、捕らぬ狸の皮算用をしても――」

「いーやーだー!そんな正論は聞きたくありませんー!」

「はいはい、二人ともそのくらいにして。どちらにしても冒険者協会で清算を済ませれば分かるわよ」


 じゃれ合うように言いあう仲間たちを(たしな)めながら、街へと繋がる城門へと向かう。

 気分が高揚している私の目には、そんな物言わぬ城門でさえ祝福をしてくれているように見えたのだった。


あ、新キャラたちの名前を出すの忘れた……。

ちゃんと考えてますから!次回には出せる、はず!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ